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第27話 勉強合宿!!!

 

「ふぁぁぁ~…寝む…」


 俺たちの通っている学校は進学校

 そして、夏には合宿がある

 京都の旅館に3日間泊まり、一日中勉強、勉強の勉強三昧

 と言っても、ちゃんと言われたことをすれば遊ぶ時間もあるんだけど…

 そして、今日はその勉強合宿の1日目でもある


「祠堂、終わったのか?」

「終わりましたよ」

「見せてみろ」


 先生は紙をペラペラとめくり、全部見終わると返してくる


「8割あってるな。よし、もう休んでいいぞ」

「はい~」

「いいなぁ…」

「お前もサボらないでやればいいんだよ」


 俺は横で項垂れている千鶴を置いて、部屋を出る

 外はすでに暗く、時間的にはおそらく21時近くだろうか

 でも、まだまだ生徒たちは机に向かって勉強をしていた


 俺はこの旅館にある足湯の方へ向かう

 この足湯はここの旅館の名物でもあり、売りにしている所

 24時間、常に湯が流れており、足湯の適度な温度を保っている

 まぁ夜になるとほとんどの人は来ないんだけど…


「はぁぁぁ~…たまんね…」


 人が全然居ない足湯をいいことに俺は寝転びながら足を湯に付け、空を見上げる

 星は見立町より綺麗ではないが、月が綺麗に出ていて、思わずため息が出てしまう

 気持ちよさのあまり、しばらく意識が飛んでいたのか、足がふやけていて、汗も少しかいていて肌寒い

 そろそろ上がろうかと身体を起き上がらせ、背伸びをすると人の気配を感じた


「智樹」

「ん?あ~清水か。終わったのか?」

「うん。皆もう部屋に帰ったよ。それで…あの話なんだけど…」

「あの話…あ~…佐藤さんのか」

「うん・・・」


 すっかり忘れていた…

 最近は千鶴のことで精一杯だったし、清水自体も全然動かないから


「ん~確か佐藤さんって千鶴と同じ部屋だったよな?」

「うん」

「んじゃ今日千鶴に会いに行くついでにお前も付いて来い。ハイ、作戦会議終わり」

「え?それだけ?」

「それだけ。あと10分したら部屋に帰るから先に戻っといて」

「わかった…」


 清水は心配そうな顔をしながら部屋へと帰って行く

 俺はあと10分だけの足湯を楽しみ、足を洗って部屋へと戻る


「ただいまっと…」

「……」


 清水はどこに行ったんだろう…

 部屋には宗太がTVを見ていて、俺の方をチラッと見て慌てて目線をTVに戻す

 あの話をしてから避けられている

 まぁ宗太も考えがまとまれば向こうから話しかけてくるだろう


「清水どこ行ったか知ってる?」

「いや…」

「ふ~ん。そうだ、今から千鶴のとこ行くけど来る?」

「いや、遠慮しとく…」

「そっ。んじゃ行く前に先に風呂でも入っとこうかな。先入るし」


 俺はカバンの中から服を取り、部屋に着いている風呂に入る

 ちょっと狭いが、大浴場は学生でいっぱいだからゆっくり入れない

 どうせ今頃、大騒ぎで先生に叱られたりしているんだろ

 俺はお世辞でも広いとは言えない風呂場で身体を洗い、シャワーだけで済ませる

 身体を拭き、髪の毛を乾かそうとドライヤーを探すが見当たらない


「あれ?…宗太~、ドライヤー持ってない?」

「持ってないけど」

「そか。ん~まぁいっか…」


 とりあえずタオルで吸い取れるだけ吸い取らせ、ドライヤーは千鶴の所にあると予想しながら風呂場から出る


「あ、智樹」

「どこ行ってたんだよ。行くぞ」

「あ、うん…あ、智樹、これで大丈夫かな?」

「何が?」

「この服装…」

「は?」


 清水は上下ジャージの俺とは違い、その服装で寝るの?っていう感じの服装をしている


「あ~いいんじゃない。それよか、早く髪乾かしたいから行くぞ」

「あ、待ってよ」


 俺と清水は部屋を出て、千鶴の部屋へ向かう

 そして、ドアの前に立って、ドンドンと叩く


「うっさいぞ!あんたは金取り屋か!それとも夜這いか!」

「おぉ~出た出た。ドライヤー無い?」

「ドライヤー?あるよ」

「んじゃ借りるわ。入っていい?」

「あ、ん~ちょい待ち」


 千鶴はそういうとドアを閉じ、しばらくするとまた開く


「入っていいよ~」

「はい、どうも。って清水は入らないのか?」

「い、いいのかな?」

「何が?」

「何が?」

「だって、女の子の部屋に入るなんて…」


 清水は心配そうな顔をしながら俺の方を見てくる。

 俺と千鶴は顔を見合わせ、アイコンタクトで「清水君って超初心うぶな子?」「気持ち悪いけど気にするな」という会話をして、さっさと部屋の中に入って行く

 部屋の中は俺たちの男部屋とは違い、なぜか部屋の匂いも違う


「はい、ドライヤー」

「どうも」


 俺は千鶴からドライヤーを受け取るとその場で乾かす

 部屋の中には千鶴と俺と清水と女の子2人がいて、女の子2人は俺たちのことなんて気にしないのか2人だけの世界に入っている


「なぁ、千鶴。佐藤さんって同じ部屋じゃなかったのか?」

「今はお風呂タイム。……変な妄想した?」

「してない」

「ふ~ん。前髪、鬱陶しくない?」

「切ろうと思ってたんだけど行くの忘れてたんだよ」

「ふ~ん。切ったげよっか?」

「いらん」

「んじゃ髪留め貸そうか?」

「いらん。…てか、さっきからなんだよ。何か聞きたいことあんなら聞けよ。めんどくさい」


 さっきから纏わりついて髪も乾かない

 千鶴は他の女の子から見えないように身体を向け、急に目つきと声が変わった


「神門君にどのぐらい言った?」

「簡単にな」

「………どうだった?」

「はぁ…あいつも悩んでんだろ。俺とお前が元犯罪者なんて聞いたら大抵の奴は逃げるよ。でも、あいつは1人で悩んでんだ、少しぐらい答え出す時間ぐらい待っててやれよ」

「智が犯罪者?」

「まぁな。元だけど」

「そっか。…うん。待つよ、神門くんが答え出すまで」


 千鶴はそう言って学校での顔に戻り、2人の女の子の世界へと入って行く

 俺はドライヤーの電源をOFFにして、部屋の端っこにいる清水の近くに歩いていき、腕を掴む


「ほら、帰るぞ」

「え?」

「清水が残りたいなら残っててもいいけど、俺の用はもう済んだし」

「あ…うん…」

「はぁ…残っておけば佐藤さんのお風呂上がり姿見れるのに…」


 俺はため息を吐きながら言うと、清水は顔を真っ赤にし、鼻を押さえる

 さすがむっつり大王だ、妄想して鼻血を出せるなんて…

 俺は笑うのをこらえながら千鶴に礼を言って、部屋の外に出る

 すると、ちょうど通路の向こうの方からお風呂上がりの佐藤さんが女の子と一緒にこっちに向かってきた


「ほら、清水見てみろよ。佐藤さん」

「!!?」


 やっぱり面白い

 清水は佐藤さんを見ると更に顔赤くし、鼻を押さえながら自分たちの部屋へ走って行った

 鼻を押さえた手の間から赤いのが出てたのは秘密だ

 俺は笑いを押さえながら、歩こうとすると佐藤さんと話していた女の子がニコニコしながら話かけてきた


「あれ~?祠堂君なんでうちの部屋から?もしかして千鶴ちゃんを夜這い?あはははは」

「違うよ。ドライヤー借りに来たんだ。ここってドライヤー置いてないでしょ?」

「な~んだ、面白くないなぁ」

「あはは、んじゃ帰るよ。おやすみ」

「おやすみ~」

「佐藤さんもおやすみ」

「あ、うん。おやすみなさい」


 俺は手を上げながら自分の部屋へと向かう

 そして、自分たちの部屋に入ると清水は鼻にティッシュを詰めながら部屋の端っこにいて、それで今まで我慢していた笑いが一気に込み上げてきた



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