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第13話 最前列の右側が濡れやすいです。

 

 何度乗ってもやっぱりいいなぁ…ジュラパは…

 最前列にカッパ無しで乗るジュラパは全身、特に下半身がずぶぬれになる

 だけど、それがなんか好きだったりするんだけど…今日はちょっと自重して濡れないようにビニールを付けた

 俺はジュラシック・パーク・ライドから次のバックドラフトの位置に向かう

 少し服を乾かせてもらうために


 バックドラフトの位置に行くと数十人並んでいて、一番後ろに並び、上に置いてある映画の説明みたいなのを見ながら待つ


「あれ?智じゃん」


 声のする方を見ると千鶴と佐藤さん、そして他の女子が計5人、その後ろに宗太と清水と堀井達3人がいる

 というか、宗太はなんだか楽しそうな顔をしていて、清水は顔を赤くしていて、堀井は…まぁテンションが高い


「なんで下半身濡れてるの?おねしょでもした?」

「バカかお前は」

「千鶴ちゃん、智樹くんはそんなことしないって。あははは」


 千鶴、佐藤さんを除く女子達が千鶴の言葉で笑っていて、後ろのストーカー…じゃなかった男共も笑っている

 別に恥ずかしいとかそういうのは無いんだけど、とりあえず千鶴の頭を叩く


「イタっ、暴力反対」

「ジュラシックパークのやつ乗ったんだよ」

「あ、だからおねしょ…」

「お前…一回泣かすぞ…」

「女の子には優しくだよ。智」


 千鶴は俺に対して上目づかいで調子を乗ったことをしてくるが、ここはあえて無視して前を向き、進んでいく

 無視された千鶴は後ろの方で小さく、俺に聞こえるように「バーカ」と言っていたがそれも無視する

 そして、しばらくすると後ろでは宗太たちと女の子が楽しく話す声が聞こえてきて、なんとなく後ろを向くとすぐ後ろに千鶴と佐藤さんが付いていた


「うおっ…な、何」

「いや、智の背中が寂しそうだったから理紗ちゃんと見てた」

「ふ~ん。宗太たちの中に入らなくていいのか?楽しそうだけど」

「ん~…理紗ちゃんしかいないから言うけど、正直苦手なんだよね。神門君」

「え、そうなの?千鶴ちゃんと宗太くんって仲よさそうに見えてたけど」

「あはは、よかった。そう見えてて。でも、苦手なのは本当だよ。無理に笑ってるだけ」


 俺以外に素の千鶴を見せてるのは珍しい

 少し驚きながら佐藤さんと千鶴が話すのを見ていると、千鶴が俺の方を見てきた


「見て、智の顔。あれが驚いてる顔だよ」

「千鶴ちゃんは祠堂くんの事なんでも知ってるんだね」

「まぁ長いこと一緒にいるからね。でも、未だに分からないことがあるんだ」

「?」

「智の好きなタイプ。これだけは分からない。智は変態なのか、それとも女の子に興味が無いのか…」

「お前、佐藤さんの前で俺の評価どんだけ落とすんだよ…」

「え、だ、大丈夫だよ。祠堂くん。私の中の祠堂君はいつも素敵だから」

「あ、ど、どうも」

「あらあら?理紗ちゃん、今のは爆弾発言だよ」

「え、あ!…い、いや、別にそういう意味じゃなくて…その…と、友達として!」

「えっと……とりあえず、声のトーンを…」


 周りを見ると、さっきまで後ろで盛り上がっていた宗太たちがビックリしたような顔で俺たちの方を見てきていて、特に清水と堀井の視線が痛い…

 もう殺気すら感じる…というか、堀井も佐藤さん狙いか…

 俺は殺意の籠った視線から逃れるために前を向く

 しかし、千鶴はその状況を面白いと取ったのか、俺の手を取り、無理やり後ろを向かせ、にや~と笑っている

 まさに悪魔のような笑顔だ

 そして、その悪魔の後ろにいる天使の佐藤さんは顔を赤くしながら千鶴の後ろに隠れていた



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