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愛だの恋だのに、うつつを抜かしている暇はございません

作者: ほしみ
掲載日:2022/09/04

タイトル通りの内容ですが、一応恋愛ものです。サクッと読めます。

 第一王子のエドワード様は、男爵令嬢に並々ならぬ関心を寄せている。

 その一方、婚約者に対しては。

「多忙になるから、しばらく会えない」と言い渡した。


 その多忙な時間は。

 男爵令嬢を追いかけ回すことに、費やされている。

 公務に勤しんでいた王子の変貌ぶりに、周りも困惑気味だとか。


 茶会に同席した令嬢たちは。

 真偽を確かめようと、探りを入れてくる。

 わたくしこそが、当事者。

 エドワード様の婚約者ですから。


「事実ですわ」

 肯定しながら、紅茶を口に含む。


 大変なことになった、と青ざめる者もいれば。

 陰でほくそ笑んでいる者もいる。

 修行が足りませんわね。


 表情を変えない者も、少しはいた。

 淑女たるもの、こうでなければ。


 エドワード様と共に過ごす時間がなくなり。

 空いた時間は、他の令嬢たちとの交流に充てている。


「つらくは……ございませんの?」

 遠慮がちに、たずねられた。


 高等技術だ。

 同情する振りをして、貶めようとしている。


 目を潤ませたりして。

 芸が細かい。

 見習わねば。


「別に」

 毅然として、見えただろうか。

 それとも、強がり。

 判断は、おまかせしましょう。


 エドワード様の「腰巾着」さんが、手紙を届けてきた。

 会えない代わりに、あの方は手紙を書いて寄越す。

 一読すると、わたくしは燃やしてしまうのですが。


 書いてあることが、男爵令嬢のことばかりで。

 笑うしかありません。

 このような手紙、残しておいても仕方がないでしょう。


 返信不要とあったので。

 返事すら、出してませんわ。


 婚約破棄されるのでは……という噂が流れ始めた頃。

 わたくしの茶会の参加者は、数を減らしていました。

 最初のうちは、大賑わいだったのですが。


 まあ、つまらぬ茶会ですからね。

 この場では、「王子」「恋愛」「男爵令嬢」の話題はご法度。

 

 禁じているわけではありませんが。

 婚約者と疎遠になりかけている主催者の前で。

 口に出す勇気のある者がいないだけ。


 でも、その日は違いました。

 情報通の令嬢が、目を輝かせながら口火を切りました。

「皆様、お聞きになりまして? かの男爵令嬢が、他国に留学なさるそうですわ!」


「そのようですわね」

 わたくしは、あっさりと肯定しました。

 

 皆様、察しが良くて助かりますわ。

 何事もなかったかのように、別の話題に移っていきます。


 終わり際に、わたくしは告げます。

「次の茶会には、エドワード様も参加されます」


 噂に惑わされず、留まった一握りの令嬢達。

 彼女らは、表情を引き締めます。

 この意味がわからない令嬢はいません。


 つまらぬ茶会は、試しの場。

 将来国母となりうるものと、繋がりを持ちたいと願うのならば。

 愛だの恋だのに、うつつを抜かしている暇はございません。

 

 数日中には、皆が知ることになるでしょう。

 わたくしの茶会に、参加しなかった令嬢達も。


 明日の夜会では。

 エドワード様から贈られたドレスを身に纏って。

 仲睦まじい姿をアピールする予定です。


 エドワード様は、片時も離れず。

 わたくしにとろけるような笑顔を向けられることでしょう。

 男爵令嬢のことなど、忘れ去ったかのように……


 エドワード様は。

 人材マニアです。


 有能かつ、面白い人材は。

 何をおいても、確保しようとなさいます。


「男爵令嬢」は。

 エドワード様のお眼鏡にかなった逸材です。


 王族にハニートラップを仕掛ける度胸の持ち主で。

 計画を見破られたら。

 依頼主を裏切って。

 他国に逃げおおせた。


「素晴らしい女狐だった」と。

 エドワード様は、手紙で絶賛されておりました。


 毎回愉快な内容が綴られていたので。

 笑わないようにするのが、辛うございました。


「ハニトラなう。」から始まる手紙なんて。

 王家の者が書くべきではありません。


 手紙を持つ手が震えてるのを。

 侍女が気遣わしげに見守っていたのですよ。


 手紙を見ると、思い出してしまうので。

 すぐ燃やしました。

 後世に残るといけませんから。


『つらくは……ございませんの?』

 令嬢の言葉を思い出す。


『別に』

 婚姻に向けて、着々と準備中ですが何か?


 茶会を開くようになったのは。

 王妃教育を終えたから。


 話していいこと、悪いことの区別がきちんとつくようになるまで。

 人との接触は、極力控えていました。

 うっかり、国家機密を口にしたら大変ですからね。


 わたくしはエドワード様と共に。

 この国を導いていかねばならない。

 

 すべてを背負う必要はないんだよ。

 面倒なことは、全部部下に任せてしまえば良い。


 エドワード様は、黒い笑みを浮かべていたけれど。 

 部下に逃げられないように。

 ほどほどにしてくださいませ。


 手紙は燃やしてしまったけれど。

 あの内容は、忘れようにも忘れられない。


 恋文のひとつでも。

 送ってくれたら良かったのに。


 でも、わたくしも送っていないのだから。

 おあいこですわね。


 愛だの恋だのにうつつを抜かす暇はないけれど。

 一生あの方の傍にいられれば。

 それで良いのです。

よろしければ、別視点の短編をどうぞ。タイトルは、「逃亡資金が貯まったので、性悪王子の腰巾着辞めます! 」https://book1.adouzi.eu.org/n0338hh/

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ハニトラなう。」で撃沈しました(腹筋が) 部下たちの胃痛以外には全くもって不安要素を感じないですけれど 未来のこの国に幸多からんコトを…!
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