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33,はい、はい。

 


 ~前回までは~

   〈ガリア城塞〉では、ソルトは〈炎の帝〉と対峙中。

   〈紫ガ城〉では、妹であり【虐殺娘】ことセーラが、魔人の王【廃都卿】を殺した、が。




 ──〈ガリア城塞〉、ソルトの視点──


 うーむ。

 手加減してしまった。


〈時間跳躍ディレイ攻撃〉を。


 やはり、相手は〈炎の帝〉とはいえ、アーグの姉さん。

 殺すのは忍びない。


 一方、〈炎の帝〉は所持アイテムを取り出す。

 一見、人の形をした小さなアイテムに過ぎない、が。

 そこから放たれるオーラは、底知れない。さてはあれが。


「これが分かるか、【破壊卿】? 〈滅却絡繰り〉だ。魔人の幹部さえも復活できぬ滅却状態にすることができる、封印アイテムだ」


 封印アイテムといいつつ滅却してくるのか。

 という、素朴なツッコミをする前に気付いたが、つまり『復活を封印する』ことで、完全に殺す、ということか。


「そんなものを出してきたからには、こっちも本気で挑まなきゃならないようだな」


 刹那。

 次元が裂けて、妹のセーラが現れる。

 それから突然のことで唖然とする〈炎の帝〉の右手から、〈滅却絡繰り〉を奪い取った。


「ちょっと貸して」


 それから裂け目に戻り、消えてしまう。


「……」


「……」


 いやまてまて、セーラ。

 あいつ、〈滅却絡繰り〉を使って、何をする気だ?




 ──ところかわって〈紫ガ城〉、【廃都卿】の視点──


 魔女神サリアの恩寵によって、復活する【廃都卿】。


「許さん、許さんぞ、あの小娘! よくも、余を殺してくれたな! 必ずや粛清してくれる! 必ずや! …………なんだ?」


 大広間のほうが騒がしい。

 第一形態に戻って【廃都卿】が大広間に戻ると、そこでは公開処刑の最中だった。


【廃都卿】の配下である魔物たちが、怯えた様子でひれ伏している。

 その先では、【廃都卿】の息子たちが並ばされていた。息子たち……誰もが歴戦のつわものであり、中ボスとして君臨してきたのだ。


 いままさに、首を引き抜かれようとしていたが。


【虐殺娘】が、いつかは【廃都卿】を継ぐであろう長男の頭部を引き抜く。


 長男の断末魔の悲鳴。


「あああぁぁぁぁぁぁぁ父上ぇぇぇぇ!!!」


 そのまわりでは憤怒と憎悪の形相で、兄弟たちが【虐殺娘】を睨んでいる。

 だが誰一人、戦えないのは、すでに手足を引きちぎられたあとだから。


「ぐぁぁぁ!! 貴様ぁぁぁ!! 余の家族に何をするぅぅぅ!!」


【廃都卿】は怒りをぶちまける。

 が、その怒りが恐怖に変わった。


【虐殺娘】の右手には、〈滅却絡繰り〉が握られている。


「バカな! それは、冒険者ギルドの永久宝物庫に保管されているはずではないのかぁぁぁ!! まてぇぇぇ、やめろぉぉぉ!!」


〈滅却絡繰り〉の起動によって、長男の復活が封じられる。

 封じる、とはいうが、すなわち復活のキャンセル。


 一度キャンセルされた復活は、二度と再開できない。

 よって【廃都卿】の長男は、完全に死んだことになる。


「ぬわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 怒りのあまり何も考えず【虐殺娘】に飛び掛かるも、すぐさま返り討ちにあう。

 転がったまま【廃都卿】は叫んだ。


「な、なぜこんなことをするのだぁぁ!! 貴様ぁぁ、同じ魔人ではないかぁぁぁ!!」


【虐殺娘】、本名はセーラといったか。

 セーラか、冷ややかに見下ろしてきて。


「あたしを呼んだのは、あんたでしょうが。あたしを、偉そうに呼び出すものだから。こーなるのよ」


「そ、そ、そんなことでかぁぁぁ!! 許さん! 貴様だけは、許さんぞぉぉぉ! この鬼畜がぁぁぁぁぁぁ!!」


「はい、はい。はーい、」


 全身を闇の槍で貫かれ、最期には〈滅却絡繰り〉を使われた【廃都卿】は、あっけなくこの世から消滅した。

 永久に。


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