18話 新しい商材
その後、僕たちは鉱山に向かって、ダイヤモンド原石を手に入れた。それから近くで取れるいくつかの鉱石もサンプルに。それはいいんだけど……。
「ねえ、グランドラ。鉱夫が少なくないか?」
「……おらがちょっと遊びすぎたみたいでぇ。逃げてしまっただ」
「なるほど」
責任者を置き、待遇を改善して生産性をあげないと。日本社会が僕にはしてくれなったやつ。
「ファラーシャお姉様、どうします?」
「お前にまかせる」
「でも魔王になるんでしょ?」
「その時はスキルで従わせる」
「その前に、さっさと封印されないように、ここを国の体にしないと」
姉様だって、せっかく魔王になった途端に眠りにつくのはいやだろうに。
「そういうのはお前の仕事だ」
「まあ……実際やるのは僕かもしれませんが、お姉様の意思を聞いているのです」
お姉様にも自分事として捉えて貰わなくては。
「では、奴隷を買ってこい。支払いはダイヤモンドで。働きによっては解放する契約にすれば逃げることもないだろう」
「なるほど、正社員登用を謳って契約社員を集めればいいんですね」
「んっ?」
「ああ、なんでもないです」
心の声が漏れてしまった。そうだよね。ここはファンタジー世界だ。奴隷も合法なのでした。僕はグランドラに奴隷商人との話をつけて貰うよう依頼し、その日は城へと帰った。
「ただいま~」
僕が部屋に戻ると、カリンとデインが駆け寄ってきた。
「お帰りなさい!」
「おかえりなさい!」
「いい子にしてたか」
シルクに視線を送ると、彼女はこくりと頷いた。
「ええ。二人とも、ジュアル様に見せるんでしょう」
そう言われると二人はハッとして、紙を持って来た。そこには何か人のようなものが描いてある。紫の髪に赤い眼……。
「これ、僕?」
「はい、ジュアル様です!」
カリンがそう言ってキラキラした目で見てくる。拙いけど、一生懸命に描いたんだろうこの絵。ああ、涙が出そう。だって僕、中身はおじさんだもん。
「ありがとうね……」
「今日のお仕事、お疲れ様でした」
「おつかれさまでした!」
二人が少し緊張した感じで頭を下げる。この辺はシルクから振る舞いを教えて貰ったんだろう。
「仕事は上手くいったよ。ほら、これを手に入れた」
僕は二人の前にダイヤモンドの原石を取りだして見せた。
「これ……石?」
デインが少しがっかりしたような顔をする。
「うーん? シルクさんはキラキラの宝石を取りに行ったって言ってたんですけど……」
カリンも不可解な顔をしている。
「これを削って加工するとね、キラキラの宝石になるんだよ。二人は今、この原石みたいなもんだ。これから頑張って宝石になるんだよ」
「へえーっ、すごいや」
「デイン、めっ!」
途端に目を輝かせて、原石に触れようとするデインの手を、カリンがはたいた。
「いいよ。手に取って見てご覧。ダイヤモンドってのは凄く硬いんだ」
僕が許可を出すと、二人はそーっと手を伸ばして、原石に触れた。
「これを高く売って、この魔族領の暮らしを良くする為に使うんだ。二人には、そのお手伝いをして貰いたいんだよ。沢山勉強してね」
「キラキラの宝石になるんだね!」
「そうだよ」
僕はデインの髪をくしゃくしゃになで回した。
翌日、僕はグレンの魔道具店へと向かうことにした。今回はカリンとデインを連れていくつもりだ。
「人間の国に?」
僕が今日の予定を二人に告げると、カリンとデインは顔を見合わせた。
「ああ。人間は力が弱いけど、乱暴はしてはいけないよ。約束できるかい」
「やくそく!」
「はい……わかりました。でもちょっと怖い……」
二人は魔族領から出たことがない。生きている人間も見たこともないのだという。
「大丈夫だよ。二人の見た目を人間に近づけるからね」
僕は隠蔽魔法で二人を人間の子供の姿に変えた。ついでに自分の姿も例の好青年風の見た目に変える。
「ジュアル様! 大人になっちゃった!」
「ほんとだー」
カリンとデインが目を丸くしている。
「じゃあ行こうか。今日は商売の勉強だよ。いい子にしていたらご褒美をあげる」
「わあ!」
手を取り合って喜ぶ二人を連れて、僕はルベルニアの王都へと向かった。




