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15層攻略は

 三人が落ち着くのを待って一度ギルドに戻る。中継で俺達がポートを見つけたことに気づいた人達が、いつ挑むんだ?と言いたげな視線を送ってくるが、直接聞いてくるわけでもないのでそのまま通り過ぎようとすると、どこから聞きつけたのかナトリが現れた。


「間に合ってよかったです。15層にはいつ頃挑みますか?」

「記事を書くのか?」

「下書きは終わってます。挑まれる時間に合わせて修正するだけなのでご心配なく」


 俺達が一番乗りすると信じていたのか、それとも何パターンも書いていたのか。有能な記者であるなら後者だろうな。ナトリが優秀な記者なのかは知らないが、ボス戦の後のインタビューでは他の記者を取りまとめたりもしていたので、ORDEAL界隈ではそれなりに有名ではあるのだろう。行動が早いというのはあるだろうが。


「いつ挑んで欲しい?」

「そりゃあ、私としては他の記者が後追いしてくる前の方がありがたいですが」


 そうだろうな。記事を公開すれば、それをパクってくる奴は少なからずいるだろう。早い奴は数分で同じ内容の記事を出してくるだろうが、そのあたりは諦めるしかない。まだ他が情報収集している間に俺達が挑めば、ボス戦がどうなったかという次の記事をまた一番で出せる可能性も高くなるから、準備時間は短い方がナトリの筆さえ間に合えばナトリには良い結果になる。

 どうせ時間をかけたところでレベルが1上がるかどうかの差なので、ここは乗ってやろう。


「三時間後だ。三時間後に15層に挑むから、しっかり記事を書いておけよ」

「は、はい! 三時間後ですね。間に合わせます」

「今回は魔法職の有用性が見られると思うぞ」





 俺達を見送ると走って記事を書きに行ったナトリのためにも、三時間しっかり準備をしないとな。クランハウスに戻り、ミナトはアイテムの補充に、ナナカとフィルは休憩のためログアウトして、それぞれ準備をする。


「どんなモンスターかなー?」


 凛花は楽しみだと言わんばかりに修復アイテムを剣に使用する。剣を拭きながら笑みを浮かべるのはやめてほしい。

 15層に挑む前にこれだけ楽しそうにできているのは、さすがとしか言えない。大丈夫だとは思いながらも少し緊張している俺とは違う。


「今回も私は攻撃に専念でいいの?」

「ああ。凛花の好きにするといいよ。ただ、今回は思ったよりも弱かったらミナトに手柄を譲ってやってくれ」

「ふーん。そのくらいならいいよ。ミナトちゃんも頑張ってるからね」


 誰もいない二人きりの部屋に沈黙が流れる。数秒だろう。それでも少し長く感じたのは、凛花が俺の内心を見ようと目を細めたからだ。

 数秒見つめ合い、凛花は再び楽しそうに剣を拭き始めた。態度に出さないように内心ほっとしながら、俺もインベントリ内のアイテムの整理を始める。

 どうせ、周りのことを気にし過ぎだとか、しっかり頑張ってとか思っていたのだろう。言われなくてもちゃんとやるし、凛花が本気出して魔法の出番がないとナトリに宣言したことが無駄になるから言っただけだ。今更、俺が魔法の有用性を見せたところで、俺だからで済まされそうな気もするし。



 一時間半ほどで全員が戻ってきたので、早めにダンジョンに向かう。今回は少しポートまで距離があるので、先に向こうに行ってから待っておく。

 ギルドに着くと、すでにモニターが一番見やすいであろう場所には人がいて、その周囲にもちらほらと集まっている。ナトリの記事のおかげだろうが、それにしても早いな。別にギルド内の大モニターでなくてもいいのならどこでも見れるというのに、一時間以上も待つなんてよくやるな。スポーツとかだと中継があっても現地まで何時間もかけて行くなんてのはよくあることだから、それと同じ感じ感覚なのかもしれないが。


 集まった人達に情けない姿は見せられないなと考えながら14層にポートで飛ぶ。

 普段は戦闘中それほど前に出ないが、体を慣らすためにも積極的に攻撃をする。時折、凛花が隣にきて競うように俺の獲物に攻撃をしてくるのは、さっきのことがあったからだろう。俺も体を動かしたいので凛花に負けじと攻撃していく。



「ナトリさんが記事で魔法のことに少し触れたので、掲示板とかも魔法の話題が多いですね」

「これは一大事。頑張らないと」

「私も頑張ってリリーブ飛ばしてみます!」


 15層へのポートの前で休憩をとって時間を待つ。ナナカとミナトが掲示板を見て気合いを入れている。空回らないといいのだけれど。

 フィルは目を瞑って集中しているようで、凛花はスキルを空打ちしながら感覚を確かめている。

 ぼーっとしながら皆の様子を見ていると、気がつけば予定時間まであまり時間が残っていない。

 最後に、もう一度いつも通りの作戦を簡単に確認して、立ち上がる。


「今回も初見一発突破でいくよ!」

「はい! 精一杯頑張ります!」

「今回は魔法が唸る」

「いけるわ。私達なら」

「じゃあ、行くか。入ったら油断するなよ」


 俺と凛花が先頭でポートに入る。視界が暗転し、すかさず光が差し込む。


「プロテクト。もういるぞ!」

「私が引き受ける! 準備できたら合図ちょうだい!」


 凛花が駆け出す。その先にいるのは予想とは違いヤドザミの上位種ではなかった。ハイオークと表示されたオークの上位種であろうモンスターに凛花が攻撃を加えタゲをとる。

 その間に、フィルにプロテクトをかけ、ポート周辺の拳大の石で動きにくい場所からハイオークがいた土の地面へと移動する。


「フィルタゲ取りお願い」

「ええ。任せて」

「レンヤ! 準備できた!」


 俺も剣をとり、ハイオークが振りかぶった木の槍を下から切り上げて体勢を崩させる。凛花がガラ空きの胴体にエアブレイドを叩き込み、そこで一旦引いてフィルがヘイトを稼ぐ。


「動きが鈍いからいけるね。ただタフそうだから、ミナトちゃんどんどん魔法でHP削っていって」

「うん、わかった」


 HPと火力が高いタイプか。スピードはそれほど無いからミナトの魔法はあたる。フィルのHPをしっかり確認して、疲れが見えたら交代でいけるな。

 イメージとしてはゴーレムに近い。ゴーレムより物理攻撃も通るから、これは15層ではプラバスタもアルブも詰まらずにすんなり抜けてくる。だから、絶対に負けられない。

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