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15層は

 ギルドの中に入っていったアルブのメンバーに称賛の声が飛ぶのが聞こえてきた。その騒がしいギルドの様子を尻目に、俺達はそのままダンジョンに入り14層の探索を始める。

 14層の探索も速く終わらせるために、一気に開けた場所まで行き周囲を見渡してポートを探す。途中で引き連れてきたモンスターを倒しながら周囲を見渡すが、そう簡単にはポートは見つからない。


「フレアレイン」

「セベラム!」


 集まったモンスターに対して放たれたミナトの攻撃魔法が発動したのを確認して、すかさずフィルがヘイトを稼ぐために敵を集めてヘイトを稼ぐセベラムというスキルを発動させた。敵が密集したことでミナトのフレアレインもヒット数が多くなりダメージはかなり出た。ファイアーボールよりも単発火力が低い代わりに、細かな火の玉が降り注ぐフレアレインでは範囲と総ダメージでは上だ。

 ただし、間違えると味方も普通に巻き込むから、タグリッドブレスレットの効果で狙いをしっかり定める必要がある。


 さすがに魔法一発では倒しきれないが、HPの減った状態からなら物理攻撃が通りにくいモンスターでも数発で倒せるので、凛花と俺で手分けして殲滅していく。

 それほど時間がかかることもなく十数体はいたモンスターを倒し切れたことに満足したのか、凛花が笑顔でミナトへと近づき、後ろからぎゅーっと抱きしめた。


「いい魔法だったよ。狙いもばっちりだね」

「これのおかげ。でもこれで足手まといにはならない」

「もー、足手まといなんてもとから思ってないのに。この装備のおかげで今まで耐えてこれたんだよ」


 すっと腕をあげてタグリッドブレスレットを凛花の目の前に持ってきたミナトに、凛花はわちゃわちゃとミナトの髪がぼさぼさになる勢いで頭をなでる。

 装備には助けられているし、効率狩りや金策をせずともやってこれているのは確かなので、俺とナナカとフィルも頷く。タグリッドリング自体も、生産系のスキルレベルが必要になってくるので作れるプレイヤーはある程度限られている。そのせいで、ドロップアイテム自体を集めるのにも時間がかかるし、集めたうえで生産職のプレイヤーに頼まないといけなく、現状では希少なので一つ5万ベルほどで取引されている。数が出回ればどんどん値下がりしていくだろうが、今は高価なのでそれだけでも資金面ではかなり助かった。タグリッドブレスレットはそこから改良が加えられているので、さらに高値で取引されるだろう。今売ったら10万ベルくらいしてもおかしくないものだ。


「うっ……目が回る」

「一応ヒールしておきますか?」

「ごめんね。ちょっと強くしすぎちゃった」


 凛花から解放されたミナトの髪はボサボサになっていて、撫で回された勢いで足取りは少しふらふらしている。ステータスの影響で力加減が現実と違ったりするのかな。凛花はやっちゃったと手をプラプラとさせながら申し訳なさそうにしている。

 あと、ナナカ。HPは減ってないからヒールをかける意味はないからな。どちらかといえば、リリーブの方があっているだろう。効果があるかはわからないが。


 ミナトも楽しそうにダンジョン探索をしているので、新アイテムがでてくれて良かったなと考えながら話しながら歩く四人の少し後ろをついていく。

 11層から14層までの敵の傾向を考えると、15層か20層のボスはヤドザミの上位種でも来そうだな。そうなれば、ミナトの魔法があるのはダメージソースとしてかなり大きい。

 5層がゴブリンの上位種だったことを考えれば15層で来る可能性が高いが、まだ一回ずつしかデータが無いので判断材料が少ない。それに、ヤドザミの上位種なんて来たら、物理火力しか持っていないパーティーではゴーレム以上に苦戦するだろう。5の階層が中ボスだったとすれば、もう少し倒しやすいモンスターが来るかもしれない。

 俺達はミナトがいるから魔法でのダメージもある。凛花も属性剣という魔法ダメージも与えられるスキルを持っているので、硬い相手でもダメージはある程度出せるからいいが、プラバスタは少し詰まりそうだな。アルブはヒーラーが攻撃魔法を使えるが、サディの火力は下がるだろう。サディが弱点部位にひたすらクリティカルを狙えるようなプレイヤースキルを持っていれば、あの速さがあれば手数で補って火力を出せるだろうが。



「何考えているの?」

「15層と20層はどうなるかなって。ミナトが間に合ったから魔法のダメージも期待できるし、ボスに対してはプラバスタやアルブよりも有利に立ち回れるかもしれないと思ってさ」


 気がつくとフィルが隣に来ていた。完全に考え込んでしまっていたようで、周囲の警戒も怠ってしまっていたな。


「そうね。あとは、私がタンクとして一人で受けきれる相手かどうかが問題だわ」

「フィルは立ち回りも上手いから大丈夫だろう。ステータスもミナトの作った装備のおかげで重戦士と比べてもそれほど低いわけではないし」

「様子を見に来て逆に励まされるとはね。期待に応えられるように頑張るわ」


 気を使われるほどの何かがあったわけではないからな。むしろ、デュークさんやオルムのプレイを見て少し焦っているように見えるのはフィルの方だ。


「きつくなったらいつでも言ってくれ。軽い休憩をとる間くらいなら俺が代わりに耐えてみせるさ」

「長期戦になるようなら頼むわ。でも、リーダーだからって無理はしないでよ」

「それはないさ。頼もしい味方がいるから、俺が率いようなんて思ってもないし」

「それはそれで問題発言ね」


 しょせんは器用貧乏ってところなのが俺のプレイスタイルだからな。きついところは本職に任せる。

 それに、リーダーとして何かをやろうなんて思ってはいない。凛花がいる時点で、能力としては二番手なのだから。


「あ! あったよ。15層へのポート!」

「やりましたね! ボスへのポートを見つけたのは三連続で私達がトップです!」

「今回は私も役に立つ」


 駆け出していく三人をフィルと一緒に苦笑いで見つめる。

 さて、ようやく15層か。新アイテムによりミナトが強化され、プラバスタとの共闘で学んだこともあったからパーティーとしてかなり成長したとは思う。今回も一発突破できればいいのだが、そう簡単にいくだろうか。

 まずは、駆け出していった三人を回収して、一旦引きあげるか。このまま挑むには準備もしていなさすぎるし、プラバスタが来るのも早くて夜だろう。すぐに挑むにしても、ポーションの補充や一度休憩をとってからだな。

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