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ドロップは

「ヒール」

「本当に見てないのに良くあてられるのね」

「レンヤ以外だときついけどな。トライ、ヘイストかけ直すからちょっと下がって!」

「あいよ。サンキュー」


 アンブール草原に到着してからは周りの邪魔になるモンスターを狩りながら待つ。トライが凛花が競うように攻撃をし、タンク組が交代でタンクを引き受ける。ヒーラーも俺を含め三人いるので交代しながら行い、ミナトとシンは周囲の偵察という名目で休憩している。

 凛花とトライが元気すぎるんだよな。あの二人全く休憩せずにずっと戦い続けている。


「もうそろそろですね」


 ナナカの言葉に時間を確認すると残り一分を切っていたので、戦闘を一度止めるように伝える。寄ってきていたモンスターを倒し切ったところで時間になったので、全員で周囲を確認する。


「いやー、疲れたな」

「馬鹿みたいに狩り続けてるからだろうが」

「楽しかったからついな。ちゃんとこっからも頑張るから任せておきな!」

「あー! あれっぽい!」


 凛花が発見したようで皆を呼ぶ。奥の方に見えるのは小さなドラゴンのようなモンスター。初めて見るタイプのモンスターなのでどうやって戦おうかなと考えていると、凛花とトライが二人で走って突っ込んでいった。


「あいつら……」

「ま、まあこのメンバーなら勝てるだろうし、どうせ情報もないからね」


 クレスさんが苦笑いを浮かべながら俺の肩に手を置く。それにしても、あいつら二人で突っ込んでも、俺達が行くまでタンクもヒーラーもいないから殆ど攻撃もできないだろうから意味ないんだよな。あの二人なら死なずに堪えることくらいはできるだろう。


 縦のサイズ的には俺よりも頭一つ分ほど小さいが、全長は三メートルは余裕でありそうな小型のドラゴン。コルドラゴンという名のそのドラゴンですら、実際に近くまで来ると迫力に圧される。四足歩行なので、噛みつきと長い尻尾に気をつければ戦えそうだが、不安なので俺は支援に専念しておこう。


「こいつ火を吐くから気をつけてね。火の玉みたいなの!」


 やっぱりドラゴンだけあってブレス攻撃のようなのも持っているのか。現実と違って熱によるダメージというのはそこまで感じないようにはなっているが、タンク役は一度受けたらできるだけ早めに交代した方がいいな。盾や鎧が熱を持つと辛いから、ミナトにウォーターの魔法で冷やしてもらおう。


 最初にタンクを引き受けたデュークさんが上手く攻撃を受けてくれてはいるが、振り回される尻尾が邪魔でアタッカー陣が思ったよりも攻撃ができていない。コルドラゴン自体はそれほど動かないので、誤ヒール自体はそれほど起こらないだろうからいけるか。


「数発ならくらっても大丈夫だから、もっと攻撃してくれ!」

「はーい! いっきまーす!」

「あ! 負けてられねえ!」


 俺が伝えると同時に凛花がダメージ覚悟で突っ込む。トライは少し躊躇したが凛花に負けじと突っ込み、それを見たシンも少し戸惑いながら攻撃の手を強める。


「ナナカとクレスさんも余裕がある時は向こうにヒールお願い。外してもいいように外めで使ってくれたらいいから」

「了解です!」

「何事も練習よね」


 少しくらい誤ヒールしてもすぐにダメージは稼いでくれるだろう。それに、周囲に他のモンスターもいないからヒールをコルドラゴンにはあたらないように使えば外したところでヒールがどっかに飛んでいくだけだ。アタッカーが多い分、俺のヒールだけでは間に合わないから、あたればラッキー程度でも使ってくれた方がいい。


「タンク三人もいらないから、俺も向こうに行ってくる」


 リピドも攻撃に参加し、さらにコルドラゴンのHPの減りが早くなり、戦闘開始から三分ほどでその姿を粒子に変えた。

 ドロップアイテムを確認すると、1個だけ発表のあったレシピに必要な素材があったので、それだけはミナトに渡しておく。

 一体で1個だけか。今回の運がどうだったのかはわからないが、このまま1個ずつだとすれば四つ作るのに32個必要だから残り31体ということになる。


「よーし。戦い方は今のでいけるからどんどん倒していこう!」

「ダメージくらってもすぐに回復するってこんな感じなんだな。どんどんくらうから回復よろしく頼むぜ!」

「ちょっとはガードもしろよな。回復しすぎると俺達にヘイトが溜まりすぎるかもしれないんだから」


 特にトライは突っ込みすぎ。その分ダメージは稼いでくれているが、ヒールあてるのも難しいんだから、たまには引いてくれないとこっちが疲れる。


 他にアンブール草原でアイテム集めをしているプレイヤーもいないようなので、コルドラゴンのリポップを待つと、三分ほどでポップしたのでそのまま倒し続ける。どんどん慣れもでてきて10回目にもなれば、二分を余裕で切ることはできたが、スキル使用による消費によるMP消費が激しかったので、連戦しやすいように少し抑えてもらっている。


「同じフィールド内でも何体か出現しているようですね」


 ヒーラー組は一番やることがないので、ナナカは戦闘中も掲示板で情報を集めている。ミナトは途中から攻撃をやめてアイテム作製をしだしたのでノーカウントだ。

 さすがに1つのフィールドに1体しかいないと取り合いになるだろうからな。俺達がこうしてこの場所を独占できているのも、狩場が複数あるおかげだ。


「推奨レベルが低い場所ほどドロップ率も悪いみたいですね。その分モンスターも弱いみたいですが」


 簡単に集まるようでは、すぐに終わってしまうからな。アンブール草原でも問題なく狩れているが、20回の戦闘で5個。最初の一回で取れたのは運が良かったが、その後は微妙な確率になっている。

 これよりも下のフィールドだともっとドロップしていなくてイライラしてきたかもしれない。リポップが早いのは救いだが、VRだと疲労も溜まってくるし。


 かれこれ一時間以上倒し続けたせいで凛花とトライにも疲れが見えてきている。アンブール草原から近くの安全圏までは少し距離があるので、もう少ししたら今日は一旦終了だろうな。

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