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共闘は

 新アイテムの情報公開後もいつも通りレベル上げがてらにダンジョン探索を続ける。まだまだ情報が出回っていないから効率の良い狩場もわからないし、ダンジョン探索を疎かにすることもできない。

 今のところレベル15ほどあれば5層のゴブリンロードを周回するのが経験値効率は良いみたいだが、そのせいで待ち時間も出ているし、中継でひたすら作業狩りを見せるのも申し訳ない。それに、13層まで来ていれば効率的にも殆ど差はなさそうだ。


「今日はもう終わりか?」

「……トライか。ダンジョン探索はな。この後は素材集めだ」


 13層の入口ポートの近くまで戻ってきたところでプラバスタのメンバーと遭遇した。ちょうど休憩をしていたのか道から逸れた木の裏に座っていたので声をかけられるまで気がつかなかった。


「今突破してきたのか?」

「ああ。最後はちょっと無理矢理ポートに突っ込んだから疲れたぜ」

「お疲れ様。外れポートだったのか」

「それでも見つからないよりかはましさ」


 ポート周囲にモンスターの数がかなり多いポートは外れポートと呼ばれている。明らかに密集しているから、戦力的にぎりぎりの時は別のポートを探した方が良いと言われるほどには面倒なポートだ。俺と凛花が1層を突破した時に駆け抜けたのも外れポートだろうが、あれ以来は遭遇していないので助かっている。


 それにしても攻略が早いな。ゴーレム戦が終わった段階では1層分完全に離していたのに、もう同じ階層に並ばれたか。まだ13層の探索分の差はあるが、中継である程度情報は得られているだろうから、どちらがポートを早く見つけるかの勝負になるな。


「今度こそ先を行かしてもらうぜ」

「まだトップは譲らないさ」

「そういや、今度の新アイテムは取りに行くのか?」

「とりあえず集めはする。俺達のパーティーは三人魔法職がいるから、使えるようならかなり楽になるからな」


 使えなかったら使えなかったで仕方がない。情報待ちをしてもいいが、こういうのは自分達で取りに行って一喜一憂するのもまた楽しみの一つだからな。


「俺達もクレスの分は最低でも必要だからさ、一緒に狩りに行かねえか?」


 協力して狩りか。はっきり言ってこっちにはメリットばかりだな。デュークさんのタンクが加わり、アタッカーもさらに追加になる。新アイテムの素材を落とすモンスターがどんなモンスターなのかにもよるが、動き回って強いと凛花しか攻撃できないのが俺達のパーティーの欠点だからな。


「そっちの他のメンバーはそれでいいって言ってるのか?」

「ああ、確認は取ってある」

「じゃあ、俺達も問題ない」


 皆を見ると頷いてくれたのでその場で承諾する。だが、このままだと俺達側のメリットばかりでトライ達にはあまりメリットがないのだがいいのだろうか。


「一緒に戦うことでお前らのプレイを間近で見れる。特にクレスが見たいって言ってるんでな。それに、俺達の中には生産職がいない。伝手が無いことはないが、良かったら俺達の分も作ってくれないか?」

「そのくらいなら、全然オッケー」

「おお! じゃあ頼んだぜ! お前らの分が終わってからでいいからな」



 *  *



 新アイテムの素材をドロップするモンスターがフィールド上に現れるまで残り15分。俺達双天連月とプラバスタの合同パーティーは街を出て、推奨レベル20のフィールドであるアンブール草原へと向かっている。現状公開されている情報では、アンブール草原を含めて五か所のフィールドで出現することは確定している。その中でも推奨レベルが一番高いフィールドを選んだのは、他のパーティーとの遭遇を考えてだ。

 モンスターの取り合いになると面倒で効率も悪くなるから、少し敵が強くなっても推奨レベルの高い、人の少ないフィールドの方が取り合いは少ない。それに、この面子であれば、ここでも問題なく狩れるだろう。


「さすがに人が多いと楽でいいな」

「だからってサボらないでよね」

「わかってんよ。しっかり倒すぜ!」


 進みながら寄ってきたモンスターを倒していく。凛花とトライが競うようにごり押しでモンスターに攻撃していくので、タゲ取りも回復もしていない俺とミナトはやることが無い。


「魔法使えるようになるかな?」

「そうだといいな。このタイミングで出してくるアイテムの機能なら使えないようなものではないだろう」


 呟くように言うミナトは、やはり戦力として役に立たないことが多いのを気にしているのだろう。アイテムや装備の作製では本当に助かっているし、ゴーレム戦の前半や敵の数が多いときは魔法のダメージに助けられたこともある。それでも、こうやって戦闘に参加できないときは気にしてしまうのだろう。


「ツキヤはORDEALをやってて楽しい?」

「楽しいよ。こうやって皆で何かに対して真剣にやれるってのはやっぱり良い」

「そう……私も楽しい」


 これはどこまで触れていいのだろうか。現実と代わりのないように思えるこの世界の感情表現だが、現実よりもさらに感情に直結してしまっている。ミナトがどれだけ悩んでいるのかを上手く察することができないし、それにミナトがどういう人間なのか、この世界の中で見せる姿しか知らない俺が簡単に口出ししていいのか。


「ツキヤはレンヤと仲が良いけど、嫉妬したりはしないの?」

「全くってわけではないけれどな。あいつがしてきた努力も知っているし、別に絶対に超えられない存在でもない。ただ器用で要領が良く、そして負けず嫌いなだけだから」


 才能なんて言ったって、本当に万能なわけではない。羨ましいと思うことはあっても、それが妬みに変わることはないだろう。


「私は羨ましくて逃げた。でも、ここでなら自分の力で皆と一緒にいれるかもしれない」


 昔に何があったのかは知らないが、今のミナトは確かに前を向いている。それならば、その力になれるように手を貸すくらいはクランリーダーとして、一緒にORDEALで遊ぶ友達として、できる限りのことはしてやろう。


「それなら、今日は絶対にドロップ素材を集めよう」

「うん。お願い」

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