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情報は

 動きが一層激しくなるゴーレム。それをデュークさんは両手でいつもより大きな盾を構えて耐えた。衝撃で苦しそうな表情を浮かべるが、まだ余裕があるのか攻撃の合間には少し口元に笑みも浮かんでいる。

 それを確認するとギルドの中で大きな歓声があがる。それと同時に何人かは悔しそうに手に持った紙を床に叩きつけたりしているので、クリアできるか賭けでもしていたのか、記事や自身のSNSで負ける宣言でもしていたのだろう。

 トライ、シンに加えて普段はタンク役のリピドまでもが攻撃に参加しゴーレムのHPを削る。こういうタンク1で十分な時に重戦士だと攻撃にも参加できていいな。三人で攻撃している分、俺達よりも早くゴーレムのHPは減っていく。前半戦はミナトのファイアボールのおかげで俺達の方が早かったので、討伐時間の差は中盤の崩れた時の分、俺達が遅いだろう。

 終盤以外はタンク二人が交代でタゲを取っていたので体力的にも問題ないだろうから、これは完勝と言っていいだろう。魔法職が盛り返すまでは、ゴーレム戦の戦い方はこれがお手本になりそうだ。


 終始安定した戦いをみせたプラバスタは戦闘開始から20分ほどでゴーレムを倒し、笑顔で中継画面に手を振ってポートへと向かう。戦闘後座り込んだ俺達とは、やっぱり違うか。あれだけ戦闘が安定して、辛い役目をするタンクを交代で行い、アタッカーも休憩をとっていた。休みが無かったのはヒーラーのクレスさんだけだが、彼女は殆ど動くことも無かったのときついところは味方がポーションで回復を助けてくれていたので安心して回復を使い続けられただろう。

 15層か20層のボスではこの差が大きなものになる可能性もある。継続戦闘を行うためにもフィルの負担をどれだけ減らせるかだな。タンクの代わりにタゲを取れるようにならないと長期戦では疲労で崩れてしまう。


「ここじゃ声をかけられないから、外で待ってようか」

「うん。お疲れ様くらいは言いたいもんね」

「皆で行きましょう!」



 ギルドの前で話しながら時間を潰していると20分ほど経ってようやくトライを先頭にプラバスタのメンバーがギルドから出てきた。俺達を見つけると笑顔で手をあげてきたので、俺も手をあげてトライとハイタッチする。


「お疲れ様。かなり安定した戦いで見ていて参考になった」

「ありがとよ。相性が良かったからな。デュークがゴーレムを抑えてくれたから問題なく倒せた」


 あそこまで完璧にタゲを取ることができればあとは叩くだけだもんな。あの安定感は見ていて安心できる。ただ、参考にはなるがあれをできる人がどれだけいるかというのも問題だけれども。


「やっぱり挑む前に装備を新調できたのが良かったな。インフリケードがアクセサリーの開発に成功したっていうんですぐに買いに走ったぜ」

「あ、アクセサリー!? 見せて!」

「ちょっと落ち着けって。できあがっている物なら買いに行けばいいんだし」

「ははは、見せるくらいいいさ。ミナトちゃんって生産職も兼ねてるんだろ? 気になるのはしょうがないだろ」


 気前よくネックレス型のアクセサリーをミナトに渡してくれた。ミナトはネックレスを色んな角度から必死に見ているので、俺がトライに礼を先に言っておく。今までRPGならアクセサリー系の装備があってもおかしくないと色々試しっては来たが、効果のあるアクセサリーは俺がミニゲームで手に入れた者だけだった。プレイヤーが作製したアクセサリー、それが実際に目の前にあるのだから興奮するのも無理はないか。


「それでインフリケードってなんだ?」

「やっぱり知らなかったか。ネトゲで情報収集は大事だぜ。インフリケードってのは生産職が集まってできたクランだな。まだ参加人数はそれほど多くないが、現状生産系ではトップで間違いないな」


 生産職のクランか。生産職も自分の作った装備をつけたプレイヤーが試練のダンジョンに行けば、そのプレイヤーが得たインセンティブ報酬によって自分にもその何パーセントかの報酬がもらえたはず。そうなると、アクセサリーの作り方を教えてもらうことはできないか。


「俺達も買いに行くかな」

「装備は大事だからな。お前たちは特にレベルが低めだからその分の穴埋めが必要だしな」

「ありがと。大丈夫。アクセサリーも私が作る」


 力強く言うミナトに苦笑いをする。作り方はわからないが、それでも誰かが作れたのなら作れる。生産職としてのプライドもあるのだろう、ミナトの目は真剣だ。

 彼女のためにもここは俺が引いておこう。切羽詰まっているわけでもない。俺達の装備を作ってくれてきたミナトのセンスを信じよう。トップを目指すだけでなく、俺の目的は目立つことだから、装備が似合っていることも大切だ。ミナトが描く俺達の姿を楽しみに待っている。


「情報ありがとうな。今回はうちの職人が本気みたいだから、俺達は俺達で作ってみるよ」

「いいってことよ。まあ、もし良いアクセができたら俺達にも譲ってくれよな」

「はは。余ったらやるさ。その時はまた代わりに何かもらうけれどな」

「今回の分の情報でとんとんだろ?」

「別に11層からの情報がいらないなら、俺はそれでもいいけど」

「いや! それは欲しい! ちゃんと情報は手に入れてくるから、今回は11層の情報をくれ!」

「そんな焦らなくても教えてやるから! だから離れろって!」


 縋り付くように人のお腹辺りに抱きつくトライの頭を押しのけるが、なかなか離してくれない。こいつ、絶対悪ノリしてやがる。


「私は先に戻ってる」

「いや、そんなに急いで作らなくてもいいから!」


 呼び止める声さえ聞かずにミナトはクランハウスの方へと戻っていく。


「じゃあ、ちょっと向こうでゆっくり聞かせてくれ」

「はあ……ゴーレム戦終わりだってのに元気だな。じゃあ、残りの皆も連れて行くか」

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