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89話:コットンフラワーです!

「……というわけで、コットンフラワーは冬の寒さに弱く、それでいて夏の暑さには強い。よって我が国では綿花の栽培が盛んになったのです。夏の今はこのように美しい花を咲かせます。品種によっては一日の内に花の色が変わるものもあります。黄色からピンクへ変化するのです。夏に咲いた花は秋に実り、熟します。果実が弾けると、綿毛に包まれた種子が出てくるのですよ。このように」


 綿花畑を管理する王宮から派遣されている職員が、シャーレに入った綿毛と種子を見せてくれる。


 美しく咲いた花を見て回った後、併設されている職員用の建物に案内された。


 そこは食堂になっており、いくつもの長テーブルが並んでいる。

 氷室の氷を使ったよく冷えたレモネードを出してもらい、それを飲みながら、ハッサーク国での綿花産業についてレクチャーを受けていた。


「コットンフラワーと言うけれど、花ではなく、実だったのだね」


「ふわふわした綿毛に包まれて、種も可愛らしいわ」


 ブルースとミユがそう言って微笑み合っていると、その会話にリアーニャ第二王女が割り込んでいく。


 昨日の庭園のように、チューでもして撃退しちゃいなさい、ブルース!


 そんな風に思ってしまうが。

 さすがに双方の両親がいるのだ。それはできないだろう。

 しかもすぐそばにラーク第二王子もいるのだから、完全無視もできない状態。


 第三王子フェリクスより、このリアーニャ第二王女は(たち)が悪いわね。


 そんなことを思っていると、突然、護衛についている騎士や兵士が食堂へ入って来た。


「どうした、シール副団長?」


 ラーク第二王子が尋ねるが、シール副団長は声を出さず、目で何かを訴えている。

 その目は真剣そのものだった。


「貴様、何者だ!」


 ジェラルドの鋭い声に、全員が凍り付く。

 するとずらりと横一列に並んだ護衛の騎士と兵士の背後に突然、一人の男が現れた。

 黒髪の癖毛に焦げ茶色の瞳で、シャツにズボン。

 だが。

 食堂のテーブルに飛び乗ったその男の体には……。


 胸の辺りにぐるりと複数の爆弾を巻いていた。


 この世界にまだ銃はない。

 だが爆弾は存在していた。

 それは鉱山で硬い岩盤を粉砕するため、発明されたものだ。


 手にはランタンを持つ男は叫んだ。


「余計なことをしてみろ。これだけの爆弾がある。引火したら建物ごと吹き飛ぶ。建物のあちこちにも爆弾は仕掛けた。俺の仲間がな。一つでも爆発すれば、連鎖して大爆発する。お前たちはお終いだ!」


 なるほど。

 王族を守る精鋭の護衛の騎士や兵士が無力化された理由がよく分かった。


 下手に男を制圧しようとし、わずかでも失敗すれば、ランタンから引火の危険がある。

 しかもこの男以外に仲間がいるなら、この男を制圧したところで、仲間が爆弾を爆発させるだろう。

 そうなるとこの男が言う通り。

 一つの爆発が連鎖し、大爆発になるはずだ。


「目的は何なんだ。我々を人質に取り、何をしたい?」


 ジェラルドが落ち着いた口調で尋ねる。


「解放だ」

「解放?」


 男によると、綿の需要が高まってから、次々と綿花畑が作られるようになったが、労働力が足りていない。そこで隣国の国境付近の小さな村の人々を全員、騙すようにしてハッサーク国に連れて行く事件が多発していた。連れ出された人々は、低賃金で働かされ、まるで奴隷のような状態。


 そしてそんな事件が起きていることを、ハッサーク国の国王は見て見ぬをフリをしている。

 

 許せないと感じ、何かできないか、男は探るようになった。


 国賓が招かれることは新聞で知った。

 国賓ではあるが、貴族。

 警備が隣国の王族や皇族を招いた時より、緩くなると考え、この爆弾を使った人質計画を思いついたと言うのだ。


「こういう外出の時、もしもの時に伝書鳩を連れていることは知っている。解放するべき村人の出身地をリストにまとめた。これを伝書鳩を使い、国王陛下に届ける」


 そこで男は人質となった私達に目を走らせ、ある人物に焦点を定める。


「人質にお前達がなっていることの証明にする。このリストに署名をしろ。お前は新聞で見たことがある。王女だろう?」


 男がリアーニャ第二王女を睨んでいた。

 さらにミユとロイター子爵夫人と私に、武器の回収を命じる。

 つまり騎士や兵士の剣や短剣を集め、窓から外へ投げろというのだ。

 従わなければ、爆破する――そう言われては応じるしかない。


 リアーニャ第二王女がサインをすると、男は彼女を含む私達女性陣に、ロープで男性達の足を結び付けるよう命じる。


 それが全部終わると、男は一旦廊下に出て、「おい」と大声を出した。


 手だけが見えた。


 リアーニャ第二王女がサインしたリストを受けとる手が。

 あれが伝書鳩で飛ばされ、国王の元に届けられることになる。


 この状況を伝えられた国王は、男の要求を呑むしかないだろう。

 第二王子と第二王女が人質なのだから。


 ただ、男が言っていることが正しいのであれば。

 奴隷のようにこき使われ、搾取されているのが真実なら。

 男には同情の余地はある。

 でもこんな方法が許されていい訳がない。


「女達も互いの足をロープで結わけ」


 こうして私達は食堂の隅に集まって座り込むことになる。


「下を向いていろ。もし許可なく顔を上げたら、人質を一人ずつ殺す。勝手な行動を起こしても同じだ」

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