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83話:ミステリーは解決です!

「シューチャック男爵令嬢、もしやご両親から勘当され、ハッサーク国へ密入国されるおつもりだったのですか?」


 私の問いに、ポコの顔が無念そうに歪む。

 どうやらそれは正解のようだ。


 密入国をするから、貴族令嬢としてではなく、平民のフリをしたのね。


 そこでもしやと思う。


「もしかしてサディ・フランツ、46歳という女性として密入国をしようしたのですか? 本当は変装されていたのでは?」


 私の指摘にポコは苦々しい表情になり、ジェラルドやマシエウ隊長らが「えっ!」と声をあげることになる。


 一方の私はポコが着ているワンピースを見てさらに確信した。ワンピースはリバーシブルタイプだ。サディ・フランツが着ていたのは、スモークブルーのワンピース。縫い目から察するに、スモークブルーのワンピースは裏側だ。今は表側を着ているのだろう。最初からサディとして密入国した後、ポコの姿に戻るため、リバーシブルタイプのワンピースを着ていたようだ。


「変装はこの国境越えでこそ、必要なものだったはずです。それなのに変装していないのは、ご自身の意思に反した出来事があったからではないですか?」


「はぁ」とため息をついたポコは、肩の力をすっと抜き、両手をあげ、肩をすくめる。


「さすが切れ者として社交界で有名な、フォード公爵のご夫人ですね。公爵同様、鋭い方。私は名前と年齢しか名乗っていないのに。すべてお見通し。ご指摘の通りです。私はサディ・フランツ、46歳という平民の女性のフリをして、密入国するつもりでした。サディ・フランツというのは、私の従者の母親の名です。彼女はハッサーク国にいます。私は自分に仕える従者と関係を持ち、妊娠しているんです。両親は衝撃を受け、私を勘当し、従者のことも解雇しました」


 いきなり衝撃情報がいくつも飛び出し、皆、唖然としている。

 従者との許されざる関係の上に妊娠。

 その上で密入国……。


「両親の仕打ちが許せなくて。口論となって、つい、二人に手をあげてしまったのです。怪我をした両親は相当頭に来たようですが、王都警備隊に駆け込めば、いろいろ不名誉な事実が明らかになります。よって王都警備隊は頼らず、刺客を雇ったようなのです。不名誉な娘はいらないとばかりに。そこで正体がバレないようにして、密入国する必要があったんですよ……。従者だった彼とは時間差で、ハッサーク国へ逃れ、そこで落ち合う予定でした」


 マシエウ隊長の顔に緊張感が走る。

 相手が両親であろうと、傷害事件を起こしているのだ。

 彼は部下に目で合図を送り、ポコが逃走できないよう、取り囲むようにさせていた。


「この汽車には変装し、サディ・フランツとして乗り込みました。夕食の時間が近づき、それが終わる頃にはいよいよ国境越えです。そこで照合があることは分かっています。そこでレストルームに行き、変装に不備がないか、確認しようと思ったのです」


 レストルーム……。


 そういえば二号車のレストルームが使えないとスタッフに訴えている女性がいた。

 それと何か関係があるのかしら……?


「私、カツラはつけ慣れていません。よって微妙にズレている気がしたのです。そこでレストルームで直そうとしたら……落としてしまったのです。カツラを」


「それはまさか用を足す穴に落としてしまったのですか」


 私が驚きと共に尋ねると、ポコは「ええ、そうです」と即答した。


 汽車に備えられているレストルームのトイレは、線路に直接排泄物を垂れ流すタイプだった。まさかそこにカツラを落とすなんて……。


「カツラを失い、サディ・フランツを演じるのが難しくなり、しばらくレストルームから出ることができなかったのですね? でもスタッフから安否を気遣われ、ついに出ることになった。その後は自分のベッドがある二号車に戻ることもできず、ラウンジでやり過ごした……ということですか?」


 私が尋ねるとポコは頷き、ため息と共に自身の思いを吐き出す。


「ええ、その通りですよ、公爵夫人。スタッフが来る前から、扉を何度も叩き、キーキー声でまくしたてる女性がいました。あれには辟易です。カツラさえあれば、照合もうまく行ったはずなのに。それでも。サディ・フランツがいないとざわつきましたが、列を移動し、なんとかなりそうと思ったら……。まさかフォード公爵夫妻がいるなんて。ついていなかったです」


「失敬だな、シューチャック男爵令嬢。我々こそ、ついていない。国賓としてハッサーク国へ招かれているのに。こんなところで足止めを食うことになった。わたし達だけではない。大勢の乗客も迷惑をこうむっている。少しは自身がしたことを反省したまえ」


 ジェラルドの言葉にポコは不服そうな顔になる。


「私、公爵様のファンだったんですよ。父親と同じぐらいなのに。父親よりうんと若く見えて、ハンサムで、スラリとして長身で。それなのにひどい言われようですね」


 ポコの言葉にウンザリ顔になったジェラルドが黙り込み、代わりにマシエウ隊長が動いた。


「密入国をハッサーク国は認めていません。ご同行願えますか」


 こうしてポコ・シューチャックの逃走劇はここで終わる。

 彼女は強制送還となり、その先は――。


 両親に謝罪し、和解できればと思うものの。

 実の娘に刺客を送るなんて……。

 だがポコ自身も両親に怪我をさせているのだ。

 もはやどっちもどっち。

 事件の謎は解けたが、シューチャック一族の末路は……いろいろ厳しそうだ。


「お客様、事件を解決に導いてくださり、ありがとうございます」


 列車長が頭を下げ、あの女性スタッフも一緒に頭を下げてくれた。

 その後は急いで汽車の中に戻り、スタッフたちは慌ただしく出発準備に追われる。


 最終的にマシエウ隊長らハッサーク国の国境警備隊に見送られ、汽車は再び動き出す。


 慌ただしく休むための準備に追われ、私達は眠りについた。

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