表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/150

7話:息子が変わって来ています!

 公爵……ジェラルドに腕枕され、優しく頭を撫でてもらっている。

 なんだか自分が、猫か犬になった気分だ。

 とても気持ちよく、喉を鳴らしたくなる。

 愛を確かめ合った後のジェラルドは、こうやって腕枕をして、話をしてから眠りにつく。


「キャサリン。ブルースが剣術の練習をしたいと言い出すなんて。一体何があったんだ?」


「それは……」とブルースが、剣術や運動をすることになった経緯を話して聞かせる。


「そんな方法で……。そうなるとブルースは、わたしのライバルになってしまうな」


「え?」


「だってブルースは、君に大好きでいてもらいたいからこそ、剣術を習うと言い出した。その気持ちは、わたしも同じだからな」


 そう言うとジェラルドは、私の額へキスをする。


「ブルースの好きと、ジェラルドの好きは、種類が違います」


「本当にそうだろうか」


「確かめますか?」


 フッと笑みを浮かべると、ジェラルドが私を抱き寄せる。

 再びの甘い夜が始まった――。


 ◇


 朝食の席には、白パンの代わりに湯がいたジャガイモ。


 レタスやキュウリに、トマトを添えたサラダも、用意されている。

 サラダには、オリーブオイル、塩コショウをふりかけ、和えて食べるのだ。


 剣術の訓練に、ジェラルドと共に毎朝参加するようになったブルースは、朝食を残さず食べる勢い。しかもちゃんとサラダも食べ、肉料理と一緒に、ジャガイモも食べている。これで肥満ルートは回避できただろう。


 使用人にも、ジャガイモを食べることをすすめるが「白パンを食べずに廃棄は勿体ないです!」と、私達の代わりに白パンを喜んで食べてくれている。仕方ないのでサラダはこれまで通り、ちゃんと食べるようお願いしていた。


「キャサリン。ブルースが剣術を始めて、もう三ヵ月が経つ。そして間もなく秋になり、狩りが解禁だ。剣術の練習では、馬術も一緒に行っていたから、ブルースも一人で馬に乗れるようになった。よってホワイトフォレストへ、ブルースを連れて行こうと思う」


 秋は狩りのシーズン。貴族は社交とスポーツ感覚で、狩りを楽しんでいた。

 ラズベリー色のドレスを着た私は、ジャガイモを手に、季節の移ろいの早さに驚きながら答える。


「狩り……。残暑は厳しいですが、もう秋なんですね。ええ。いずれ公爵家の当主になるブルースは、狩りの経験を積む必要があります。それにジェラルドが一緒なら、安心です」


「勿論だ。ブルースに怪我などさせないよ。わたしと君の、大切な息子なのだから」


 チャコールグレーのスーツで、朝からビシッときまったジェラルドは、私の手を取ると、指に「チュッ」とキスをした。これを見た紺のブレザーとズボン姿のブルースが「僕もお母様にキスをしたいです!」と言い出し、席を立とうとしている。それを見たジェラルドが、注意をしていた。


 気づけばジェラルドは、しっかりブルースの躾にも、協力してくれている。


 食後、ジェラルドは執務、ブルースは勉強、そして私は使用人に、秋に向けた屋敷内の装飾品の変更を指示する。いわゆる季節に合わせた、調度品の模様替えだ。その後、自室で刺繍をしていると……。


「奥様、エントランスホールに飾る絵でございますが、どちらにいたしましょうか」


 ヘッドバトラーが、二枚の絵を従者に運ばせ、私に見せる。

 一枚は、紅葉が描かれた湖の風景画。

 もう一枚は、秋の森の中で狩りをする、貴族の姿を描いた絵だ。


 その二つを眺めていた時。脳に一枚の挿絵が浮かぶ。


 小説の数少ない挿絵の中で、この絵を見た記憶がある。そしてその絵と一緒に書かれていた、短いエピソードは……。


『ブルースの父親である公爵は、狩りの最中、崖から転落。死亡している。』


 心臓が止まりそうだった。

 どうしてこんな重要なことを、忘れていたのか。

 公爵は……ジェラルドは、ブルースがヒロインに婚約破棄を言い渡す時、この世にはいない。

 ブルースが幼少の頃に、死亡していたのだ。


 今朝私の手に、キスをしたジェラルドの顔が浮かぶ。


 前世で小説を読んでいる時、数行しか登場しなかったジェラルド。でもこの世界で出会ったジェラルドは、確かにそこに生きた人間として、存在している。ブルースの子育てにも躾にも協力的で、剣術の訓練もつけてくれた。妻である私にも、惜しみもない愛を捧げてくれている。そのジェラルドが狩りで命を落とすなんて……!


「奥様、いかがなされましたか?」


 ヘッドバトラーの声に、我に返る。


「ごめんなさい。ちょっと考えごとを。絵は湖の方にして頂戴。それとジェラルドは……公爵様は狩りと言えば、いつもホワイトフォレストへ行くのよね?」


「左様でございます。旦那様は鉱山も多数所有され、その近辺にも領地をお持ちです。ですので、狩りのために地方へ行くこともできます。ですがいかんせん、旦那様は複数の商会運営もされていますから。王都で狩りと言えば、ホワイトフォレスト。奥様と結婚してからは、毎年、ホワイトフォレストで狩りをされています」


「そうよね……。チャーマン、お願いがあるの。ホワイトフォレストに関する書物があれば、持ってきてくださる?」


 ヘッドバトラーは「承知いたしました」とお辞儀し、二枚の絵画を運ぶ従者と共に、部屋を出て行く。


 そして私は刺繍そっちのけで、自分の前世記憶を辿る。


 狩りなんて毎年の行事。いつ、ジェラルドは崖から転落したの……!?

 小説に、ジェラルドは何歳で亡くなったと、書いてあった?


 私は必死で思い出そうとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ