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【小話】番外編:ミルキーウェイ(天の川)の思い出

【ブルース七歳の時のお話です】

「ここではない世界に、ズラミスとサラミという夫婦がいたの。お父様とお母様のように、とっても仲良しだったのよ。でもね、いくら仲が良くても、天に召されるタイミングは別々だったの。そして二人はそれぞれ別の星になってしまったの」


 公爵邸の二階にあるブルースの部屋には天窓がついている。

 その天窓の下に厚手の布を広げ、ブルースを真ん中に、ジェラルドと私は川の字になり、仰向けになっていた。明かりは消してある。そうすると目に飛び込んでくるのは、天窓から見える星空。


 しかも今日は七夕。


 天窓から見えているのは、ミルキーウェイ(天の川)だ。


 前世の日本とは違い、この世界の夜空は実に美しい。そこに宇宙があると実感できる星空を、毎日楽しめるのだ。プラネタリウムがなくても問題ない。見上げるだけで毎日天体観測が楽しめる。


 そんな星空でも別格なのがミルキーウェイ。


 もう絶景。


 見ているだけで涙が出そうになる。


 そしてミルキーウェイ=天の川=七夕。

 七夕と言えば、織姫と彦星が有名。だが私は前世で知った、フィンランドに伝わる天の川の誕生の話を覚えていた。それを今、七歳になったブルースに聞かせている最中だった。


「ねえ、お母様。お星様になったお父様とお母様は、もう永遠に会えないの?」


 幼いブルースの中で、ズラミスとサラミは、完全にジェラルドと私に置き換えられてしまったようだ。訂正してもいいが、それは最後にして、まずはブルースの悲しい気持ちを払拭させてあげよう。


「二人はとても仲が良かったの。お星様になっても、会いたい気持ちは変わらない。でも二つの星は遠い場所にあって、会うことが叶わない……そう思ったけれど、諦めなかったの。気の遠くなるような歳月、それは千年。千年の時をかけ、二人は夜空に散らばる星を集めたの。そうしたら二人の間に星の橋ができたのよ。それが今、天窓から見えているミルキーウェイ」


「えっと……そうしたらお父様とお母様は、その星の橋を渡って、もう一度会えたということ?」


「ふふ。ブルース。お父様とお母様はまだ生きてここにいるわ。出会うことができたのは、星になったズラミスとサラミよ。でもブルースの考えた通りよ。星の橋を渡り、二人は千年ぶりに再会できたの」


 今の私の言葉で、ブルースの顔は満面の笑みに変わる。


「わあー、良かった! だってそのズラミスとサラミは、お互いに大好きだったのでしょう? お父様とお母様のように。それなのに離れ離れなんてかわいそうだよ。ちゃんと二人が会えてよかった~。でもお母様、千年ってどれぐらいなの?」


「そうね、千年は……」


 ブルースの頭を優しく撫でながら、「千年」について私は説明をする。


「千年はね、ブルースのお誕生日を千回お祝いするのと同じよ」


「えええええ、そんなに!?」


「でも千回、バースデーケーキを食べられるわよ」


 ブルースは、千回バースデーケーキを食べられることを喜んでいいのか、困るべきなのか、考え込んでいる。こういう時のブルースは本当に可愛い。


 ぎゅっとブルースを抱きしめる。


 七歳になったブルースは好奇心が旺盛。

 いろいろなことに興味を持ち、疑問をぶつけてくる。

 おかげで私も……かなり博学になった気がした。


 子供を育てると言うけれど、親も子供に育てられている気がする。


「……お母様、僕、さすがに千個のケーキは無理かな。でも分かったよ。千年がとっても、とっても長い時間なんだって。それだけ長い時間あきらめなかったズラミスとサラミは、すごいね。僕も……僕もね、将来、お母様みたいな……素敵な……レディに……会ったら……大切に……。……星の橋を……作る……ね」


 暗い場所にいると、眠くなるのは当然。

 夕食を終え、入浴も済んでいた。歯磨きも終わっていたのだ。


「どうやらブルースは寝てしまったようだな。わたしがベッドへ運ぼう」

「お願いします、ジェラルド」


 ジェラルドがブルースを抱きあげ、ベッドへと移動する。

 その間に私は広げていた布を畳んだ。


「ブルース、おやすみ」


 ジェラルドがブルースの額へキスをする。私も「いい夢を見てね、ブルース」と同じく額へキスをした。


 静かにブルースの部屋を出ると、ジェラルドと並んで廊下を歩き出す。


「あのミルキーウェイの話、初めて聞いた。ファンタジーだが、ロマンチックでもある。ブルースもすっかり気に入っていた。どこの国の物語なんだい、キャサリン?」


「子供の頃、乳母に聞かせてもらったの。どこの国の話かは……そう言えば、聞いていないわ。どこか外国の古い伝承なのかしら?」


「なるほど。でも夢のある話だった」


 そこで私の部屋に着いた。

 ジェラルドが扉を開け、私が先に中へ入ると。

 後ろからジェラルドがぎゅっと私を抱きしめる。


「ブルースは、ズラミスとサラミをわたし達のように思っていたが、それは同感だ。わたしも星になっても、キャサリンとは離れたくない」


「ジェラルド……。でも私も同じ気持ちよ。何千年かかろうとも、夜空の星を集め、橋を作ってあなたに会いに行くわ」


 静かに重なるジェラルドの唇。

 この世界に転生し、私は運命に出会えた。

 もしまた転生することがあっても。

 私はこの世界がいい。

 何度生まれ変わっても、ジェラルドのことを愛したい――。


 ミルキーウェイの星々は、愛し合う者達を、優しく照らしていた。

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