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3話:責任を持って子育て始めます!

 ブルースは、二本のソフトクリームを、私が侍女のモナカと話している間に綺麗に平らげている。

 間違いなく、夕食は……残す。

 残すと言えば、前世では「勿体ない!」であるけれど。

 この世界の貴族では、残すことが美学だった。

 なぜなら手を付けずで残された料理は、使用人が美味しくいただいてくれる。よって前世のSDGs(持続可能な開発目標)を、奇しくもこの世界は実現しているようだが……。


 でも甘い物でお腹を満たし、本来食べた方がいい夕食を残すのは、どうなのだろう?


 考え込んでいると、侍女のモナカが「奥様、そろそろ帰りますか?」と声をかけてくれる。「そうね」と応じ、ブルースをおろすように伝えると。


「えー、歩くの~? 貴族の子供は歩かないんだよー」「歩きます」


 小説というのは便利なもので。

 挿絵の数は少なく、しかもあってもそれはメインキャスト。

 ブルースの、一生一度の大舞台である婚約破棄をヒロインに告げるシーン。そこでさえ、ヒロインの顔がアップ。そばに大々的に描かれていたのは、第二王子のスチュアートだ。つまりブルースのビジュアルはなし。


 だがきっと。

 ブルースは、ぽっちゃりだったに違いない。

 何せソフトクリームを平気でペロリと二本平らげ、歩くのを嫌がっているくらいだから。


 だが現在のブルースは、美少年。

 しかもブツブツ文句を言うも、私が手をつないで歩き出すと、テクテクとついて来る。


 そこは……素直で可愛い。


 だが。


「お母様、パオーンに乗って帰る」

「え?」

「パオーン、欲しいって言ったでしょう? 買ってくれるんでしょう?」

「は……い?」


 そもそもパオーンって何? まさかあのゾウのことではないわよね!?

 それにそもそもゾウは物ではない。買って帰るようなものではない。


「お母様は、欲しい物は何でも買ってくれるって言ったよね?」


「……確かに昔の私は、そんなことを言ったかもしれないわね。でもね、パオーンは……ゾウは生きているの。簡単に買うなんて言ってはダメよ。命ある生き物は、簡単に売り買いするようなものではないの」


「ふうーん。でも僕、パオーンと一緒にいたいよ!」


 どこからどう教えればいいのだろう……と頭を抱えた時。


「!」


 ブルースにレクチャーを頼んだ飼育員! ろくに教えず、お金だけ持ち逃げは、許さないわよ!


 全力で睨むと、飼育員は蛇に睨まれた蛙状態でフリーズしている。モナカにこちらへ連れてくるよう指示を出す。


「公爵夫人、な、何でしょうか……」


「これからゾウについてブルースに教育したいの。すぐに終わります。お付き合いいただけますか?」


 飼育員は首をがくがくと何度も縦に振り、私達の後に続く。

 距離を。

 ゾウの鼻が届かない距離を取り、私はブルースへ問いかける。


「ブルースが飼いたいのは、このパオーンで合っているわね?」


 ブルースはコクリと頷く。


「飼育員さん。パオーンは今何歳ですか? そしてゾウの平均寿命は?」


「え、えーと、野生と動物園では、寿命が異なると言われています。飼育下ではストレスもありますし、短いと20年くらい、長くて40年くらいでしょうか。パ、パオーンは、先月十歳になりました。大人のゾウの仲間入りです」


「なるほど。ではパオーンは一日に、どれぐらいの量を食べますか? あ、待ってください。ブルース。パオーンは一日にどれぐらい食べると思う?」


 するとブルースは「えーっ」と言いつつも、考え込み、そして。


「バナナを朝・昼・夜で、3本!」


 大変おバカ……可愛い回答をする。


「正解を、飼育員」


「えーと、だいたい200キロから300キロぐらいです。水は100リットル以上は飲むかと」


 ブルースはポカーンと口を開け、理解が追い付いていない。


「主に草を与え、リンゴやニンジンは補助的に与えます」


「パオーンが一日に食べる量を、ソフトクリームで換算すると?」


「!? ソ、ソフトクリームですか!?」


 飼育員は涙目になりながらも、計算してくれる。


「ソ、ソフトクリームはおそらく1本、100グラム前後ですから、2000本から3000本でしょうか」


「ブルース、理解できた?」


「に、2000本から3000本。そんなに僕、食べられない」


 子供ってなんて愛らしいおバカ なんだろう。母性本能がくすぐられて堪らない!


「ブルースがそんなに食べるわけではないのよ。パオーンが食べるの。勿論、例えよ。実際にソフトクリームは食べないから。それぐらいの量を、パオーンは一日に食べるの。しかも四十年生きるかもしれないのよ。それを毎日用意する。餌を用意するのは、誰だか分かる? 飼い主よ」


「飼い主……。僕がパオーンを飼ってもらったら、僕がパオーンに毎日、それだけの量を用意するの!?」


「用意して、食べさせてあげるのよ。パオーンがいる場所まで運んで。残したら掃除しないといけないわ。それに水も大量に飲むのよ。そんなに飲んで、食べたら……」


 そこはしゅの導き……とでも言えばいいのかしら。

 ボテ、ボテと音がして、パオーンがうんちとおしっこを放出してくれた。


「飼育員、ゾウは一日にどれぐらいのうんちをします?」


「!? 確か記録では食べるのと同じくらいの量を出しているのではないかと。一度で10粒程を出します。おそらく50キロ程度。一日に八回程度、排出します」


「すごーい! パオーンのうんち、パオーンのうんち!」


 しまった! 子供がうんち好きであることを忘れていたわ!

 弟もそうだった。

 なぜか「おちんちん」 と「うんち」に過剰反応する。

 今のブルースみたいに嬉しそうにするのだ。

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