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自分は何処にでもいる凡人です  作者: 天原 重音


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寄り道をして、辿り着いた場所

 音を頼りに追跡するのは、思っていた以上に難しい。

 集中して音を拾っているのに、すぐに方向が分からなくなる。何度も聞き失いかけたが、気配探知の魔法を駆使し、どうにか音源を探し出して追い掛けている。

 けれども、気になる事が二つだけある。

 それは、短い階段を『何度も』昇り降りしている事と、魔物と全く遭遇しない事だ。

 記憶が正しければ、昇り降りしている階段は、二度も通った階段とは違う階段だった。記憶に無い筈の階段。

 ダンジョン内での調査で、こんな事は今までに一度も起きなかった。

 起きた原因について考えるが、どう考えても『単独でダンジョンに来た』事だよね。

 ゲームによっては、ダンジョンを単独(ソロ)攻略したら特別報酬が出たりした。これもそれに該当するのかもしれない。そうなると、あとを追ったのは失敗だったかも。

 特殊な条件で登場するダンジョンボスが出なければ良いんだが……。

 とにもかくにも、今は追い掛けるしかない。



 階段を何度も昇り降りし、記憶に無い通路を通り、幅一メートル程度の狭い通路の入り口に辿り着いた。

 この通路に辿り着く前に、音源の姿がやっと見えた。

 二足歩行する後ろ姿は――間違いなく人間のものだった。足元はブーツらしい靴を履いている。

 頭から大判の布を被っていたが、身長は長身と言える程度に高い。

 行方不明者か分からないが、ダンジョン内で初めて見つけた人間だ。魔物の擬態の可能性も残っているが、それはこれから判るだろう。

 狭い通路を奥へ進むが、この通路は思っていた以上に長かった。通路が狭いお陰で、先を行く人物の足音が反響して自分の耳にまで聞こえる。

 長時間、狭い通路を進んでいたが、追っていた足音がいきなり途切れた。

 慌てて歩く速度を上げたが、十歩と歩かない内に何かを踏んだ。何だと思って足元を見ると、ブロンズ色の金属の塊と白い塊が一緒に落ちていた。二つを拾い上げて注視する。踏んでしまった事で少し歪んでしまったが、金属の塊はロケットだった。蓋を開けると、中には知らない男女の写真が入っていた。

 ……どう見ても、遺留品だよね?

 白い塊は指先程度の大きさの石だ。何の石かは分からないが、ロケットと一緒にハンカチに包んで道具入れに入れた。

 そして、改めて奥へと進んだ。


 

 通路の先はただ広い円柱状の空間が広がっていた。天井はおよそ高さ五メートルかな?

 通路から顔だけ出して内部を見る。青白い光を放つ鉱石が壁や天井に埋まっているので、薄暗い程度の明るさがあり、全体を視認する事は出来た。

 広間は何も無い空間が広がっているだけだ。広さはダンジョンボス部屋とほぼ同じぐらいだが、何も無い。先に来ていたであろう人物もいないが、他の出入り口も無い。

 ……ここが引き際かな?

 遺留品と思しきものが入手出来たのだ。これを確実に持ち帰る為にも、ここで撤退すべきだろう。

 緊急脱出用品を道具入れから取り出した。直後、背後で轟音が響いた。

 何事かと振り返ると、天井から降って来た岩が背後の通路を閉ざして行く。

 慌てて通路から出て、広間に入った。元々、顔をだけ出して室内を見ていたので、一歩踏み出したらそこは広間になる。

 広間に出て十秒と経たない内に、通って来た通路は岩で完全に塞がれた。

 何が原因で広間に閉じ込められたか分からない。

 考えられるのは出したばかりの緊急脱出用品だけど、まだ起動させていない。

 他に考えられる原因は、一定時間その場にいた事ぐらいだ。

 どちらにせよ、広間に閉じ込められた事には変わりない。

 自分取っ手都合の悪い異変が起きる前に、広間を調べて脱出しよう。

 緊急脱出用品をポケットに仕舞い、自作のスティック型の懐中電灯を手に広間の中央へ移動し、床、壁、天井の順に調べて行くが、何も無い。塞がれた出入り口も調べたが、何も無い。

 何も無いのなら、脱出するか。ここに長居しても意味は無いし。

 ポケットに仕舞った緊急脱出用品を手に取った瞬間、背後に何かが落ちたような音が響いた。

 慌てて振り返ると、そこには床にぶちまけられた大量の黒く濁った泥があった。天井に懐中電灯を向けて見上げると、ぽっかりと大きな穴が開いていた。泥はそこから落ちて来た模様。

 懐中電灯の明かりを強くしてから上に向かって投げて、魔法で懐中電灯を天井にくっ付けた。

 その間に泥は音を立てて形を変えて行き、やがて天井を衝かんばかりの大きさの人間の上半身を形作った。

 三本指と赤い右目だけの姿は、日本妖怪の泥田坊を連想させる。

 こんなところに妖怪はいないから、泥ゴーレムの一種で間違い無いだろう。

 泥ゴーレムと視線が合うと、目の少し下が横に裂け、咆哮が轟いた。

 反射的にその場から退避する。直後、無数の石の槍が、数秒前まで自分がいた場所に突き刺さった。

 槍から走って逃げる間に、これまでに倒した泥ゴーレムの対処方法を思い出す。

 最初に水分を飛ばし、固くなったところを粉砕する。

 この手順通りに対処を行うのならば、炎属性の魔法を使う。だが、ここは屋内だ。迂闊に高威力の炎属性の魔法を使うと、術者の自分にまで影響が及ぶ。

 泥が落ちて来た天井の穴が開いたままなので、酸欠にはならないだろうが、熱の影響は確実に受ける。下手に使う訳にはいかない。

 とは言え、泥ゴーレムの巨体では魔法を小出しにしても効果は薄い。実際に振り下ろされた泥ゴーレムの拳に向かって炎の槍を無詠唱で放ったが、表面が乾く事すら無く、すぐに鎮火した。

 魔法で凍らせても、すぐに凍った部分が砕かれてしまった。

 鉱石で出来たゴーレムでは無く『泥で出来た』ゴーレムなので、腕を切り落としてもすぐに再生してしまうので、切り落とした端から試しても意味は無い。形状を維持する為の核を狙っても、位置を特定する事は出来ないし泥の中で動き回るので、狙撃で狙うのは難しい。

 では、どうすれば良い?

 パーティメンバーが剣などの武器を持った戦いを、後ろから支援しつつ何度も見て来たが、戦闘において大切なのは位置取りだと思っている。

 この状況で高い火力を誇る炎属性の上級魔法を、安全に使用出来る場所はどこか?

 答えは、泥が落ちて来た天井の穴の先だ。

 飛翔魔法を使って浮き上がり天井の穴を目指すが、その前に、邪魔されたくないので目潰しを行う。

 光属性の魔法を使うのではない。閃光を使っては自分にまで影響が出る。もっと単純に、泥ゴーレムの右目に向かってバスケットボール並みの大きさの火球を放ち、近くで爆発させた。

 眼前で物体が爆発すれば、生物は一瞬でも怯む。

 泥ゴーレムも例外なく怯んだ。しかも目を負傷したのか、仰け反って苦しんでいる。その隙に自分は天井の穴に向かって飛んだ。

 天井の穴の先は何も無い空間だった。

 追加の泥があったらどうしようとか、今になって思ったけど、無いなら都合が良い。

 穴の縁に降り立ち、使用する魔法の詠唱を行う。

炎夏(えんか)の空はただ青く、日輪と大地を遮るものは無し。空と同じく青き焔は全てを平等に焼き、地の底にまで熱を伝え、焼き焦がす。黒土すら残さぬ青き輝きは、無慈悲にて絶対なる力なり――青天!」

 頭上に生み出した青い炎の塊を穴から直下の泥ゴーレムに向かって放ち、即座に熱対策の水の障壁を展開して穴から可能な限り逃げた。

 目潰しから復活した泥ゴーレムは、タイミングが悪い(泥ゴーレム視点)事に、自分を追って天井に向かって体を縦に伸ばしたところだった。

 青い炎が泥ゴーレムに衝突した。

 ほぼ同時に、水蒸気爆発を連想させるような大爆発が発生し、展開した水の障壁が爆風で形状を崩した。すぐに魔法で障壁そのものを凍らせて対応し、光属性の障壁を半球体状に展開してからその場に伏せた。


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