22 前代未聞の冒険者
犯罪奴隷から開放されたシクロは、この日はギルドを後にして、宿を探すこととなった。
さすがにシクロの持ち込んだ魔物の数が多すぎた為、正確な査定は一日では終わらない、とギルドマスターに言われた為だ。
そこでシクロは確定した売却益の一部だけを現金で受け取り、近場の宿で一晩すごすこととなった。
久々の柔らかいベッドに癒やされながら、シクロは眠りについた。
そして翌日。シクロはまた冒険者ギルドを訪れる。
受付に向かうと、受付嬢はすぐにシクロに気づく。
「シクロ様ですね! 今、ギルドマスターをお呼びしますねっ!」
「ああ、頼む」
今までに経験したことが無いほどの、受付嬢の丁寧な対応にシクロは少し驚きながらも、表には出さなかった。
そうして少し待っていると、すぐにギルドマスターが顔を出した。
「シクロ君。査定の方は無事終わっているよ」
「そりゃあ良かった。で、いくらぐらいになったんだ?」
「最終的な査定額は、金貨換算で1万8350枚。白金貨で183枚と、金貨50枚だ」
「こりゃまた……とんでもない金額になったな」
「間違いなく、過去最高額だ。正直、現金でくれと言われたらとてもじゃないが払えないな」
ギルドマスターが正直なところを言い、シクロも苦笑する。
さすがのシクロも、それぐらいの常識は持ち合わせていた。いくらギルドが多額の現金を動かす組織とはいえ、昨日の今日で白金貨100枚を超える資金を用意できるとは思えない。
「まあ、手持ちがいくらかあれば残りは預金でいいよ。で、その為には――」
「そうだ。冒険者として登録するのが手っ取り早い。シクロ君も、そのつもりだったのだろう?」
「まあね」
冒険者として登録をすると、冒険者ギルドが管理する銀行で扱える預金口座も同時に開設出来る。
シクロは王都に住んでいた時、職人ギルド経由で口座を持っていた。だが、犯罪奴隷に落ちたことで口座は凍結。今は預金に使える口座を一つも持ち合わせていない状態だった。
そこで、今回の報酬を受け取るためには冒険者ギルドで口座を作るのが最も手っ取り早い、というわけだ。
「そう言うと思っていたよ。シクロ君の冒険者登録は、既にこちらで済ませてある」
「え、マジか。それは助かる」
「そして、これが君の冒険者登録章――通称ギルドカードだ」
ギルドマスターがシクロに一枚のカードを渡す。
カードは真っ黒な色をしており、文字は金色の彫金が施されている。
この色に、シクロは首を傾げる。
「黒? これって、ランクはいくつなんだ?」
シクロの疑問は、冒険者のランク制度についてであった。
冒険者とは、その実力に応じてランク付けされる。
そして、ランクに応じてギルドカードの素材、つまり色が変わる。
一般的な冒険者は、登録したばかりだとFランクから始まる。
そして経験を積むごとにEランク、Dランクと上がってゆき、ここまでが銅製のギルドカードを使うことになる。
続くCランク、Bランクまでが銀のギルドカード。Aランクになると金のギルドカードを使い、そして限られたごく一部の冒険者、Sランクともなれば白金のギルドカードを使うことになる。
だが、シクロのギルドカードは黒。見たことも、聞いたことも無い色のギルドカードであるがゆえに、シクロは戸惑ったのだ。
「そのギルドカードは特別製なのだよ」
「特別製?」
「そうだ。制度上存在するが、長いギルドの歴史の中でも数えるほどしか発行されたことのない、幻のギルドカード。通称ブラックカードとも呼ばれるそれは――SSSランクの冒険者のみが使うことを許された、アダマンタイト製のギルドカードなのだよ」
そこまで言われて――シクロはようやく理解する。
「……てことは、ボクがそのSSSランクってやつになるってわけ?」
「そういうことになるな。おめでとう、シクロ君。君は今日から、SSSランクの冒険者だよ」
「マジかよォッ!?」
予想もしていなかった展開に、シクロは驚く。
サプライズに成功して、してやったり、と言わんばかりにニヤリと笑うギルドマスター。
こうして――ノースフォリアにて伝説とも呼ばれたSSSランクに該当する冒険者が誕生したのであった。





