蜷帙?蠕後m縺ォ縺?k
「……君は 」
「久しぶりかな? 『不死身の水体』 トオル・カイラ……さて、これは何回目の会話だろうね 」
ヤマトを庇うように現れた、エリカという女の子。
彼女を知っている……私はケルパー王国出身だから。
でもなぜ……生きているの?
「不思議かい? 不思議だよねぇ。死んだ私が、君が殺した私が、生きてるなんて……それとも忘れてしまったかい? 」
「いいや覚えてる。驚いたのはここに現れたこと……どうして邪魔をするの? 」
そう問うと、エリカは悲しげな目を後ろに向けた。
「死なせたくないからさ。ほらヤマト、さっさと行って……その遺体だけは死んでも守りたまえよ 」
「……あぁ 」
その背後には、インクがこぼれたようなシミが広がり、その中にヤマトは入っていくが、
「行かせるわけ無いでしょ!!! 」
隣にいるルイが赤い帽子を取ると、そこからは強大な赤雷が生み出され、バチりと……雷が弾けた。
瞬間、それは大地そのもの呑み、エリカを地表ごと消し飛ばした。
「あぁ、先に言っておこう 」
「っ!? 」
ふと気がつくと、目の前には不敵に笑うエリカと、何事もないように無傷な大地が広がっている。
「私は『異想魔術』っていうのを持っててね。まぁ噛み砕いて言うと……私が見た人間を自在に誤認させることが出来る。例えば」
ふいっと、エリカは指先を動かした。
「っ゛!!? 」
ただそれだけでルイは吹き飛び、その顔からはポタポタと鼻血が出ている。
「何かに殴られた……そう君の体は誤認したんだ 」
「きさま!! 」
マガリが黒いヘルメット越しに叫んだ瞬間、赤い杭がエリカを囲み、そのすべてに鎖が繋がった。
だが
「あぁ、君はなにを勘違いしてるのかな? 」
その赤い杭達は、いつの間にか消えていた。
「なっ!? 」
「どうしたのかな? 魔術を使ったとでも誤認したかい? 」
ニタリと笑うエリカは、もはや異質と呼べるほどに気持ち悪い。
けれど同時に……酷くつまらなかった。
「なにしてんのトオル!! あんたも」
「慈雨・滅現 」
空を覆うほどの白い雨粒を生み、指先に従う水を地面へと落とす。
それらは地表を貫き、水で象られた数億の花たちが辺りに咲き誇る。
「ガハッ!!!!! 」
「ん、当たったね 」
いつからか背後にいたエリカ。
その腹は水の華に貫かれ、その体はジタバタと空中で暴れている。
「いくら誤認させようと、広範囲で攻撃すればいずれは当たる。しかも私たちが死んだと誤認させれないのなら、攻撃性はそんなに高くない……って、何回したっけ? この話 」
「さぁね……もう何年前かなんて忘れたよ 」
「……なんの話をしているの? トオル 」
ルイは何も分かっていないようだけど、私は知っている。
この世界が繰り返されてることを。
そしてその度に、私はエリカを殺していることを。
殺して、利用して、泣き続ける彼女をまた殺す。
そんな同じことをもう何百年も繰り返したせいで、もうこの会話にすら飽きてしまった。
「ねぇ……君たちはどうして、ヤマトを殺そうとしたの? 」
ふいにされた質問。
それに少し首を捻るが、正直なにが言いたいのかぜんぜん分からない。
「なんでって、学園を攻めて来たからに決まってる。私たちは教師、生徒を守るのが仕事だから 」
「そう……じゃあなんで、『あのゲーム』で生徒たちを守らなかったの? 」
「……? そういう指示だったから 」
「そっか……やっぱり君たちは」
いつの間にか水の華が消え、地面にべチャリと落ちたエリカ。
そしてゆっくりと前を向いたその顔は、ゴミを見るような、心底失望したような表情をしていた。
「アルベの操り人形だったかぁ 」
「っ!! 」
瞬間、全身に冷たい死が駆け巡った。
「二人とも!! 」
「オーケー!! 」
「種が分かれば簡単じゃい!! 」
この場でエリカを殺す。
その目的が一致した瞬間、全員が全力の一撃を構えていた。
大気が震えるほどの数千の流星。
空中に描かれた魔法陣からは、頭蓋が砕けるほどの雷鳴が渦巻き、私の前には水で出来た一本の剣が産み出され、そのすべてが、エリカを殺すためだけに牙をむいた。
「運命の落星 」
「魔女の奇跡 」
「原初の水剣 」
「はぁ……序章 」
星を砕くほどの流星と雷、そして一滴の水を前に、エリカはやれやれと言いたげに本を開いた。
瞬間、辺りを、世界そのものを闇が飲んだ。
「なに!? 」
「なんじゃこれは!? 」
(なに……これ? )
闇だけならまだ理解できる。そう誤認させられたと思えばいいだけだから。
でも……なんで私たちの技が消えている?
エリカの魔術は一人に一つしか誤認させることは出来ないはずなのに。
「うん、君の疑問には答えようか 」
困惑の最中、暗闇の中でページをめくる少女がニタニタと笑っていた。
「これはさっきとは別の魔術だからね、知らないのは無理もないよ 」
「っ!? ……いや、複数魔術を持つ生命体なんて存在しな」
「異想魔術、それは『未知なる継承者』……エリカの魔術。そしてこれは『名無き死体』……エリカ・ミオソチスの魔術さ 」
暗闇は蠢き、エリカの右手には何かが握られた。
それはどこにでもあるような……ただの剣だった。
『指先すらも見えない闇の中、少女は武器を手に取った。それはなんの変哲も無いただの剣。けれどその一閃は、かつて勇者の一撃である 』
「っ!!!!!? 」
無造作に振られた剣。
それに遅れてやってきた風圧は、闇すらにヒビを入れ、私の両腕を引きちぎった。
「この」
『ヘルメットを被った男は怒りのままに魔術を使う。けれどそれは少女の前では発動できなかった 』
「っ!!? 」
『ふたたび剣を振りかぶる少女を前に、男は地面を蹴った。だが勇者の一撃は不可避なもの。躱すことも受けることすらできず、二つに別れた男は地に落ちた。そして』
「ひっ!? 」
『その風は、魔女の首すらも地面に屈伏させた 』
地面に転がる、ルイとマガリの死体。
それを踏み潰しながら、エリカはニチャリと……返り血まみれの頬を吊り上げた。
「で、どうだったかな? 適当に考えた文だけど、簡単に君たちを殺すことが出来たよ? 」
「10位以上を瞬殺……ね 」
「そもそも『天陸宇下』は、かつての勇者に近しいランキングだからねぇ。1位のアルベであろうと、この一撃には及ばないよ 」
「そういう事を聞いてるんじゃない 」
そう、聞きたいのはそこじゃない。
10位以上を殺せるなら、少なくともランキングに載ってるはず。
なのにエリカなんて名前は無かった。
(そもそも、前の世界でのエリカとは全然ちがう。この子は……誰? )
「誰……ね。さぁ? それは後にしようよ 」
心のうちを自然に読まれた。
けど……今はそんなことどうでもいい。
「不変 」
宙に現れ、ビチャビチャと渦巻く水。
それで両腕を型取り、水の記憶を元に肉体を復元させる。
(今は……こいつを殺す )
「あぁ、5位と相手だなんて……本当につまらないね 」
すべてが無駄だと言いたげに、エリカはページをめくった。
『覚悟を決めた女性を笑うように、空間はガタリと傾いた 』
「っ!! 」
突如として浮遊感が身を包み、体はエリカの方へ落ちていく。
『防げぬ一閃は、女性の体を消し飛ばした 』
(不変!! )
バラバラになった体を復元。
右腕を水の鞭に変質させ、音速を越えた先端でエリカの頭を吹き飛ばす。
『けれど少女は死なず、その傷は虚空へと消えた 』
(あれで即死しない……ならもっと大規模な )
着地しながら水の靴と剣を生み出し、一気に体を加速させる。
エリカの魔術は未知数。
だけど、分かったことは複数ある。
『跳ねるは水の刃たち。それは少女に到達せず、そのまま地面へと落ちた 』
「ふっ!! 」
『振るわれた剣は形を失い、その足は、少女のか弱い腕に引きちぎられていた 』
(水臨 )
「ん? 」
ちぎられた足は膨張し、エリカを吹き飛ばすほどの爆弾となった。
しかも今度は……防がれていない。
(やっぱり、一度にできる防御と攻撃には限りがある。それに)
『少女の傷。それは』
「水滅!! 」
体を見た。
それだけでエリカの表皮は沸騰を初め、その隙に叩き込んだ一閃は、首だけを彼方へと吹き飛ばした。
(再生中には、防御も攻撃もできない )
すぐさまその手足を切り落とし、左胸を突き刺して体を固定する。
「始雨・一滴 」
空から、一滴の水を放つ。
それは世界を震わせ、空を覆うほどに膨張すると、再び一滴の水へと収縮し、闇を呑むほどの光となって弾けた。
とうぜんその爆発は……私ごとエリカを消し飛ばした。
(……不変 )
無音となった黒い空間の中、体を復元して辺りを見渡す。
とうぜんエリカは死体すら残っていない。
あの爆発は、ビックバンほどのエネルギーを発するから。
「いやぁ凄いねぇ。いい花火を見せてもらったよ 」
「っ!? 」
パチパチと、小馬鹿にするような拍手が暗闇から聞こえる。
その方にはやっぱり……無傷のあの女が立っていた。
「……なんで? 」
「なんでって言われてもねぇ。私は死んでない、傷ついてすらいない。それだけだよ? 」
「っ!! 私が聞いているのはそんな事じゃ」
「さぁ!! タネ明かしと行こうかな!!! 」
急に声を荒らげたエリカは、いつからか私の後ろにいた。
「君はさ、私の魔術が『口に出した現象を起こす』もの……とでも思ってたのかな? 」
エリカの姿が消え、今度は頭の中から声が。
「それは全くの間違いさ。私の魔術は『自分の世界へと他者を引きずり込む』というもの。まぁ言ってしまえば、自分の本の中へ他人を招待するんだ 」
次は空から。
「私が文を書き換えれば、傷も、攻撃も、世界すらも思い通り。ほら、お腹の傷は治さなくていいの? 」
「っ…… 」
いつからか、お腹からは赤黒い紐が垂れ下がっていた。
(内蔵が)
「この世界では私が作者、君は役者。すべてが私の思い通り……そのネックレス、気に入ってくれたかな? 」
首の湿り気に気付いた時には、心臓が通された赤い紐が、首にぶらさがっていた。
「……ゴブっ 」
「さて、君はどう勝つのかな? 」
ふと気がつけば、ケタケタと笑うエリカが、ページをめくっている。
けれどこいつには、聞かなければいけないことがある。
「君は……何が目的? 」
「目的? なんの事かな? 」
「私は繰り返される世界でエリカと会った。彼女は優しくて……この世界を救おうとしていたのに!! でもお前は、エリカとは全く違う!!! 」
水で復元された心臓が、体を震わすように脈打っている。
そう、これは怒りだ。
「お前はその体で、何がしたい!? 」
「……うん、じゃあ答えよう 」
少女は嬉しそうに、ニタリと笑った。
「私はね、この世界の運命を変えたいんだ 」
「……は? 」
突拍子もない言葉に、思考が止まる。
そんな私を笑うように、少女はツカツカと足音を立てて、どこかへと歩き始めた。
「作者の思い通りに、殺し、潰され、自殺を選ぶこの世界。それが何度も繰り返されるなんて、もう飽き飽きさ!! だから私はね……ストーリーをズラした 」
「……何言って」
「元々ね、『37節』で死ぬのはヒカゲじゃなくてヤマトだった。『42節』でユウトは死んでたし、そもそも彼らがこの世界の真実を知るのは、まだまだ先の話だった。エリカと君の関係もかな? あと『50節』ほど先じゃないと明らかにされないはず……だからまぁ、傍観者からすれば私たちは何を話してるかも分からないだろうね……でもさ 」
「っ!? 」
いつからか、小さな手から胸ぐらを掴まれていた。
「許せないだろう? 作者の筋書き通りの世界なんて。死が決まったシナリオも! 作者が自己満するだけのエンディングも!! その何もかもが!!! …………という訳で、私はアルベどもを殺したい。生きている彼らに、死んでいる彼女らに、自由な世界をもたらしたいのさ 」
私を睨みつける目からは、涙がこぼれていた。
怒り狂うような、悲しむような、複雑な感情たちが入り交じったように。
「……そう 」
正直、終始意味がわからないままだ。
けれど……ひとつ分かったことがある。
コイツは私たちの敵だ。
「ん? 」
空気中の水分を操り、エリカの体をズタズタに引き裂く。
けれどふと気がつけば、やはり無傷な少女が空中に立っていた。
「そもそもキミはアルベの操り人形だろう? キミがそこまで必死に戦う理由なんてないと思うけどねぇ 」
「いいや、あるよ 」
私の答えに、少女は珍しく眉をひそめた。
「アルベなんてどうでもいい。私はただ……世界を滅ぼす権利、それを持ったリュークを信じてる 」
「…………正気かい? 」
「うん。お前はリュークの邪魔をするんでしょ? だったら私は……お前を殺さなきゃいけない 」
(永水 )
空へと、一滴の水を放つ。
その水は空を覆う海となり、そこからは無限の魚たちが産み落とされる。
それは数千、数億と無限に増殖を初め、すべての殺意が少女へと牙を向けた。
「ふふっ、あははっ!!! 」
だと言うのに、少女は我慢できないような笑い声をあげた。
「あぁ、そうだったね。キミの魔術は『水の記憶を読み取る』ものだから……知ってるんだ。あの歴史を、勇者と覇王の行方を。という事はあれかい? 過去の罪を、今いる私たちに背負えと言いたいんだね? うん……ふざけるなよクソ老害が 」
笑みを崩さないまま、少女はページをグシャリと握りつぶした。
またあれが来る……でも、勝ち目がない訳じゃない。
(あの魔術はほぼ無敵……でも私を自殺させない以上、何かしらの制限がある。なら)
持久戦なら勝ち目はある。
「始雨・永遠!! 」
空を泳ぐ魚たちは、いっせいに白い光に包まれた。
瞬間、先の爆発が世界を
「幕引き 」
少女は本を閉じ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「聞こえるかな? ……うん、聞こえていないね。それとも何が起こったか分からないのかな? ……分からないみたいだね。じゃあ、答えてあげようか。私は本を閉じた、だから君は動けない……君は本の中の登場人物だからね。ページがめくられない以上、物語が進むことは無い。時は静止したまま、朽ちることすらもできない…………あぁ、本はここに置いていくよ。誰かが本を開いてくれるかもしれないしね…………………………………………
これが奴隷の気持ちさ。
生き死にや、運命ですら勝手に決められる理不尽な生物……こんな世界で幸せになるなんて、不可能に決まってる………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
あぁそれと、私が誰かだっけ? ……ふふっ、私はストーリー最初の犠牲者だよ。
揺れる馬車の中で、外に放り投げられた『名無き死体』。
人として扱われず、獣に踏み殺されたゲシュペンスト。
だからこそ、私はハルトを幸せにしたい……
私の最期に、そっと手を差し伸べてくれた彼女を……お前たちの思い通りにさせたくない。
だから私はここに居る……
さぁここからは、『登場人物』の時間さ




