表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ覇王と成る君へ  作者: エマ
自浄自刃編
51/73

第50節 アイノオモミ



「ドいテ……どけげよぉぉ……さく▓ら�サ;・༅ンさんぁん 」


「ん〜、ヤダ 」


 白い肉が、どんどんどんどん肥大していく。

 百は越える口は、自傷するように自らを食いちぎり、それを糧に再生している。


 もうそれは、一軒家のような塊だった。


(死にたいって気持ちかな? 遺産の暴走にしては速すぎる……でもこのままだと永久に死ねない、バケモノになっちゃう )


 ゲシュペンストの暴走。

 それを止められる確実なのは、対話や行動で感情の暴走を抑えること。

 けどこれは不可能に近い。


 だってユウト自身ですら、自分の本音が分かってないし、そもそも聞く耳なんか持ってくれるはずがない。


「ユウト、ごめんね 」


(簡易契約……チギレユメ )


 一時的に左小指の感覚を遮断。

 その対価として鮮血垂れる刀を生み出し、ユウトに優しく笑いかける。


「少し激しくするよ 」


 遺産が機能停止するほどの損傷を、一撃で叩き込む。

 それがユウトを助けられる唯一の方法。


「ぇぇ�ざぁ#る゜�ェィァァ!、!?、!!! 」


 バグのような異様な咆哮とともに、白い肉が盛り上がる。

 それは1000ほどの腕となり、腕から開いた口は、すべて私に向けられた。


 一瞬。

 たったそれだけの間で、目の前を腕が覆い尽くした。


(簡易契約……フレヌキボウ )


 左足の感覚を遮断。

 瞬時に上空に転移し、2激の赤い斬撃を肉に叩き込む。

 けれど数千の口が、斬撃を簡単に喰らい尽くした。


「おいぉい゜じじぉぉぃぃ 」


(まぁ、この程度じゃ傷すら付けれないよね )


「っ!! 」


 肉のすべての口からは赤い光が漏れ、えも言えぬ死が背筋を舐めた。


(簡捷契約(かんしょうけいやく) ガラスノアシ!!! )


 白い肉から放出された数万の赤い斬撃。

 瞬間的に強化した右足で空気を蹴り、跳ね回りながらそれを躱す。


(もっと近くに!! )

 

 がむしゃらにばら撒かれる斬撃は、空にある雲の形すら変えている。

 かすれば即死、よくて欠損。

 でも近付かなければ、なにも出来ない。


「っ!? 」


 目の前に現れた鏡。

 その向こうには、数万の腕が迫ってきている。


(まず)


 腕が鏡を割る。

 それだけで体は、逃げ場のない空中に転移した。

 しかも困ったことに、右足には黒いヒビが走っている。


(タイミングわるーい……詰んじゃったじゃん )


 左足は感覚がないし、契約の対価で右足は壊れた。

 これじゃあもう逃げれない。


「ガゥッ!!!!! 」


 お腹と両胸、左手が迫る腕によって食いちぎられた。


 体が裏返りそうな痛み。

 そのせいで、世界から色が抜けていく。


 当然と言えば当然。

 だって私は人間だから。

 たった心臓と肺が潰れただけで死んじゃう。


「ふひっ、でモネ 」


(簡捷契約……コワレノハナ )


 全身二割の血。

 それを対外へ放出し、蝶のような羽へと変質させる。


「私ってすごく!!!!! 」


 死ぬ前に羽ばたき、体を加速。


 腕がかする度に、皮膚や筋肉が喰われて行く。

 頬からは風が入り、垂れた内蔵には冷たい風が当たる。


「諦めがわるいの!!!!!!! 」


 けれど加速を止めない。


 左眼を喰われようと、耳を削がれようと、アバラを噛み砕かれようと。

 笑みを浮かべて、抱きつくように、ユウトに向かって突っこむ。


「アハハはははハはははハハガッッ!!!!? 」


 にぶい衝撃。

 お腹にはグッポリと腕がめり込んで、背中にそれが突き出ている。


(あ〜……今回もダメだったかなぁ…… )


 心臓も肺もダメ、というか血を流しすぎた。

 動こうにも、宙ぶらりんの状態じゃなにも出来ない。


(また……会えるかなぁ )


 世界から形が崩れる中、ポツリと……人間らしく祈ってみる。

 世界がまた作り直された時、ユウトに会えますようにと。


「こロす……こロロっっす。みんな……ぜんぶ…… 」


 意識が途切れる寸前、ユウトの声が聞こえた。


「………………うん、いいよ 」


 落ちる意識の中で、その声に頷く。

 瞬間、周りの白い腕は燃え尽き、潰れた内蔵や腕には黒い文字が集い、その欠損部位を再生させていく。


「あっはは〜、ラッキー!! 」


「? ???!?�※♯?? 」


「なに起こってるか分かんないよね? うん。まぁ簡単に言うと、私たちは契約したの 」


 数万と増殖した腕が、私を殺しにかかる。

 けれどすべては私に到達することなく、途中で燃え尽きた。


「『強制契約 チノマジワリ 』。『殺し』を許す代わりに、ユウトが私を殺害できない契約を、強制的に結んだの。だから私を殺害するための攻撃は、契約上なかったことにされる 」


「うびッ……コロろろろ 」


 嬉しくて、つい喋りすぎてしまった。

 気がつけばユウトの体はさらに肥大し、枝分かれする数億の腕は、雲を掻き回している。


「……うん、分かってる。私は殺せないとしても、最終的には私以外の生物を喰らっちゃうってことくらい……でもそうさせないために、私はここにいる 」


(強制契約……オレヌハナ )


 右手に現れたのは、黒く爛れた刀。

 それには小さな花が咲き、その花弁もまた爛れている。


「この刃はね、他人への感情を質量に変換するの。この意味が分かる? 」


 返答の代わりに、数億の腕が一気に振り下ろされる。

 それを受け止めるように笑みを浮かべて、私も刀を構える。


「シシシシシネネネネネネネ!!!!! 」


「ねぇユウト……私の愛は、けっこう重いよ? 」


 刀を振り抜く。

 それだけで数億の腕は破裂し、その向こうの空を砕いた。


「あっ 」


 空に腕をかかげ、落ちてくるユウトを受け止める。

 私の右腕はちぎれていたけど、左腕に伝わる心音が、温もりが、何よりも大切だった。


「…………うぇぇぇぇん!!! ほんとに生きてる!! 死んでない!!!! やっと、やっと!!! ……………救えたよ 」


 青空の破片が落ちる世界。

 そんな創りものの世界で、やっと……自分の目的を果たせた。


 今はそれが、何よりも嬉しかった。



 


 



 


 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ