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いずれ覇王と成る君へ  作者: エマ
自浄自刃編
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第45節 閉ざすもの



「うん? なーんだ、アキラはリュークのところに行ったんだ 」


 ヘレダントの方を見ながら、魔術の爆撃が降りそそぐ都市を散歩する。


「んーアキラが来ないなら暇になっちゃったなぁ。私を殺しに来てくれればもう少し楽しいのに 」


「あっ! あっ、アルベ様!! 」


 爆音の中、声が聞こえた。

 そこにはボロボロな女の子が、建物の隅で怯えていた。


「どうかした? 」


「た、たすけてください……お母さんも、お兄ちゃんも死んで……お願いです、たすけて 」


 爆撃を無視して女の子に歩みより、自分の胸にその子を抱き寄せる。


「大丈夫だよ、私が来たからね 」


「……あ、あっ、ありがとう、ございます 」


「ヨシヨシ、泣かなくていいよ。あっ、それとさ……ちょっと半歩下がってくれるかな? 」


「……えっ? 」


「いいから、私を信じて? 」


 微笑みかけると、女の子は半歩下がってくれた。

 すると何処からか飛んできた岩が、その子を押し潰した。


「偶然って怖いね〜 」


 頬についた返り血を舐め、ゆっくりと振り返る。

 瞬間、黒い炎が空から降り注いだ。


「派手だね 」


 一瞬であたりは焼け焦げ、更地になった。

 そんな野原を一歩進む。

 すると今度は白い光が爆ぜ、世界が揺れるほどの爆音がひびいた。


「おー、なかなかの威力だね 」


 空に立ち、あたりを見渡す。


 爆発した場所は、大地がくり抜かれたような形になってる。

 穴の底は見えないし、都市は跡形もなく消し飛んでいる。


「それで? 君たちはどんな用かな? 」

 

 私を囲む、布で顔を隠した10人。

 その子たちに首を傾げると、全員はそれぞれの武器を構えた。


「いやーそれにしても酷いねぇ。一般人は皆殺し、都市は跡形もない。彼女たちにはなーんの罪もないのにね〜、心が痛まないのかな? 」


「……お前にだけは言われたくねぇよ、アルベ・ヴァニタス!!! 」


 耳が痛くなるような怒号。

 それとともに、黒い炎や脈打つ爆弾、赤い影が襲いかかってくる。

 すごい魔術ではあるんだけど……二度目はつまらないよ。


「『幻想法下の大宇宙(ヌー)』 」


 指をはじく。

 それだけで暗い宇宙が生成され、突っ込んできた9人は結晶化して死んだ。


「お、勘がいいね君。少しでも動いたら死ぬって分かるんだ 」


 一人残った人間。

 その子を拍手しながら褒めてみる。


「……… 」


「喋らないのもいいね、口を動かしたら死んじゃうもの。でもずっと動けないのは辛いでしょ? 死にたくなったら叫ぶといいよ 」


 足場のある宇宙を歩き、ゆっくりとヘレダントに帰ろうとした瞬間、風が吹いた。

 すると右腕が宙を舞い、左胸を後ろから貫かれた。


「あれ? 」


 数万年ぶりの困惑。

 振り返ろうとする。

 けれど首を斬られ、視界がストンと落ちた。


「へー、魔術の無効化かぁ 」


 落ちた頭から声を出すと、その子は動揺したように後ろへ逃げた。

 その隙に首を拾ってつなぎ直す。

 続けざまに落ちた右腕は自分の意思で跳ね上がり、肩の断面に戻ってくれた。


「まぁ、この程度じゃ死なないわよね 」


「あっ、キミ女の子なんだね。ごめんね〜、毛ほども興味なかったからさ〜、気が付かなかったよ 」


 よく見ればその子は女の体付きをしてた。

 自ら破いた布からは、紫色の髪と虹色の瞳が見え、可愛らしい顔も見える。


「ねぇねぇねぇ、キミはなんのために私を殺したいの? キミの家族と愛人が死んでるみたいだけどさぁ、私はそれに関係ないよ? 」


「関係ないならなんでそれを知ってるのよ……というか、この世の死はすべてお前のせいでしょ 」


 憎たらしく睨まれた。

 そのせいで久しぶりに頬がつり上がる。


「うん、そうだよ。でもさでもさ、私を殺せるの? 頼みの綱のアキラは別用みたいだし、私って1位だよ? 」


「あんたと戦って生き延びようなんて思ってないわよ。ただ……あんたが死ねば、そのぶん幸せになる人がたくさんいるの。だから私はここで死ぬ、あんたを道連れにね!!! 」


 女性はなにか叫びながら大剣とナイフを構えたけど、あくびをしてたから何も聞いてなかった。


「ん、終わった? ごめんね〜、キミはもう飽きちゃったからさ、死んでいいよ 」


 涙をぬぐってると、凄い形相をした女の子が突っ込んできた。

 その攻撃が当たるよりはやく瞬間移動し、宇宙にぶら下がって人差し指を伸ばす。


「ねぇ、私の魔術は知ってる? 『無有魔術(むゆうまじゅつ)』っていう、この世に無いものを創る能力なんだよ 」


 女の子は一生懸命ナイフを投げてくる。

 でもそれらは結晶化して砕け散っていく。


「人が生きられる宇宙空間、空を踏める靴、思い通りに転移できる脳、時が戻る体、一定速度を越えると結晶化する空気。じゃあこれを、どうやって攻撃に使うと思う? 」


 話してくれない女の子を無視して、どんどんどんどん口を動かす。


「言葉で相手を殺す能力? うんん、それは実在する。星を吹き飛ばすほどの爆発? これもある。まぁこの世には魔術があるからね、探すとなると中々難しいんだ〜。だから私はこう考えた。じゃあ、特定の人物だけを巻き込む爆発なんて……存在しないよね? 」


「っ!! 」


 伸ばした指先から、小さな光が産まれた。


「しかも存在しない名前を付ければ、いくらでも連発が出来ちゃうわけ 」


「いや……それでも!! 」


「魔術で作った宇宙空間で息ができてることは、キミの無効化は自分にとって有害なものにしか作用しないんだよね? だから熱や光までは防げない 」


 チェスのように逃げ道をふさぎ、ニッコリと笑ってみる。

 すると女の子は私に背を向けて逃げ始めた。


 慌てるように、命を惜しがるように。

 そんな可愛らしい姿を見てると、背筋が、頬が、ゾクゾクと疼く。


「逃げても無駄だよ、この爆発は……銀河をも呑む。『さようなら(ヘイドイヴ・ナガラ)』 」


 適当に考えた言葉とともに、小さな光が弾けた。

 瞬間、女の子も宇宙すらも消えた。


 蒸発したのか、爆発によって消し飛んだのかは分からない。

 けれど宇宙だった場所は、白く何もない空間になっている。


「……うん、今日もつまらなかったなぁ〜 」


 何もない空白に手を伸ばし、何もない空白で横になる。


「あぁ、私のハルト。私の娘、私の覇王。速くここまでたどり着いてね 」


 自分の娘の名を呼ぶ。

 そうするとなんだか眠たくなってきた。


「あー……まだ敵が来るのになぁ。ヘレダントの学生が死んだらめんどくさいなぁ。でも大丈夫かな……だって10位のあの子がいるものね 」


 いつも通りの独り言を終え、膝をだいて眠りにつく。


(やっぱりこの星は……狭いな )


 この世に産まれた時からある、疎外感を胸に抱えて。

 


 


 

 

 

 


 



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― 新着の感想 ―
[一言] アルベママン!!?やっぱり世間は狭いな…… っということは、数話前にちっちゃい赤ちゃん拾ってたのも…… さておき、存在しないもの限定で作れる能力強いですね。弱点はネタ切れだけ。理論上無敵で…
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