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いずれ覇王と成る君へ  作者: エマ
自浄自刃編
42/73

第41節 滅びの日



『こんにちは皆様。昼の放送は(わたくし)、カリヤ・ゲイルが担当させて頂きます 』


『キャー!! いい声!!! 』


『やった〜!! わたしこの人の大ファンなの!!! 』


『こーら!! 店の中なんだから静かにしないと!! 』


『そういうアイリだってうるさいじゃん! 』


『いらっしゃーい! 今日は特別な魔具が入ってるよ〜!! 』


『おっ!! 最新鋭の魔具じゃねぇか!? お前金ある!? 』


『一応ある 』


『なら二人で買おうぜ!! これで試験に合格しよう!!! 』


『……はぁぁ、お前は言っても変わらねぇしなぁ 』


『よっしゃぁ!! サンキューな!!! 』


『気にすんな。日頃付き合ってくれてる礼だ 』


『お母さん? どこ? 』


『ん? 迷子なのかい? 』


『……うん 』


『こらこら泣くんじゃないよ。お姉ちゃんが一緒に探してあげるから、あなたは』


子死唄(こじにうた)


 体から伸びた影。

 それが蠢いた瞬間、街から声が消えた。


「ふん、ふふん、ふっふ〜ん 」


 若い女の子たちの死体。

 仲が良さそうな二人の男子たち。

 子供と手を繋いだ灰髪のお姉さん。


 そのお目目はまっかっか。

 血涙はドーロドロ。

 そんな死体を踏みつけながら、鼻歌交じりに踊ってみる。

 

「あっ、合図待つの忘れてた…………まいっか! 全員殺すことが目的だしね!! 」


 そういう事にして手を空にあげる。


「今日はあなたの誕生日。今日は私の終わりの日 」


 詠唱をはじめた瞬間、頭にノイズが走る。


「覚めない(うつつ)はいつまでも。覚めない悪夢はいつまでも。あなたはバラバラ、私は消える 」


 黒い髪。

 赤い髪。

 紫色の瞳。

 青空の瞳。

 槍、心臓、一突き、バラバラ、咀嚼、赤いヒビ。


 断片的な映像が頭の中でチカチカと点滅する。


「でもね、私はあなたに会いたい。それが出来ないのなら、こんな世界は作り直そう。あの日から、私たちの出会いから 」


 拳をギュッとにぎり、ゆっくりそれを振り下ろす。


「っ!! 何事だ!? 」


「止まれ!! そこのおん……」


「どうし…… 」


 やってきた二人は私に剣を向けた。

 でもその目は空に釘付けになってる。


「わぁ、凄いね〜!! 」


 綺麗な青空。

 そこには場違いな空白があった。


 色がない白。

 世界を塗りつぶす白。

 それがゆっくりと……地上に迫ってくる。


「バイバ〜イ 」


 空気が震え、地面も震えた。

 瞬間、辺りは白に包まれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「合図…………いや、平民域の方だしハルトか。しっかし派手だなぁ 」


 時計塔の上から見える平民域だった場所。

 そこは白い砂に覆われ、あそこだけ世界が違うように見える。


「さーてと、んじゃ俺も……好き勝手はじめるか 」


 背中から落下し、空に右手を伸ばす。


「『駄作(フェイリア)』 『寄生(エンリッチ)』『鳥籠(カージュ)』『結晶(ペークシス) 』」


 ()()の多重発動。


 右腕の細胞が増殖し、肥大し、固まり、巨大かつ異様な大剣となった。

 それを掴み、ただ着地する。

 それだけで辺りの地面は砕け散った。


「っ!? 」


「何者だ貴様!!! 」


「はいはい。ちょっと黙っててくれねぇかなぁ!!! 」


 大剣を振るう。

 それだけで時計塔の見物人、虐げられていたゲシュペンスト、建物、遠目に見える城の一部。

 そのすべてが切断され、崩れ落ちた。


「……ハッ、威力やべぇな 」


 握りこむ赤紫色の大剣。

 それには赤い目や黒い血管が無数に絡みあい、見た目的にはちょっと気持ち悪い。

 けど威力は桁外れだ。


(さーてと、そろそろ来るか? )


 これだけ派手な一撃を貴族域でぶっ飛ばしたんだ。

 そろそろ来てもおかしくな


(っ! 上か!? )


「おーラッ!!!! 」


 上からの一撃を大剣で受ける。

 だが衝撃を受け止めきれず、大剣が背にめり込んだ。


『こいつ……受け止めやがった!! 』


「ハハッ、すげぇ一撃だな 」


 そいつを弾き飛ばそうとした瞬間、白い光から腹と心臓を貫かれた。


「ふっ 」


『やべぇ!! 』


 それでも強引に大剣を振るい、上にいる奴を地面に叩きつける。


(この手応え……受け身? じゃねぇな、魔術か )


 あの一撃で叩きつけたのに、殺したときの気持ちよさを感じない。

 案の定、叩きつけた男は身軽に回転し、地面に着地した。


「あっぶねぇ!! なんなんっすかアイツ!? 」


「分からない。だがここから城を攻撃した奴だ、恐らく『天陸宇下(てんりくうか)』レベルで間違いない 」


「だるいなぁそりゃ 」


「はいはい、さっさと片付けるよ。こいつだけとは限らないし、平民域の方での一撃が気になる 」


「……ハハッ! いいねぇ!! 『天陸宇下(てんりくうか)』が四人もか!!! 」


 立ち塞がる四人。


 青髪に銀の双剣、そして俺の一撃を防いだ若い奴……たぶん48位。

 光の狙撃に金髪、瞳の中に炎がうねる青年……間違いなく51位。

 黒い鎧と兜を来た男……見たことはねぇが、さっきの二人より強い。

 そして赤髪と背の低い女……この中で誰よりも弱いが、なんか面倒くさそうな感じがする。


「で、お前は何者だ? いや……どこのゲシュペンストだ 」


 再生を見られたらしい。

 あからさまに……全員の雰囲気が変わった。


「俺の名は『ヤマト・ホルテンジエ』。この世界を……壊す物だ 」


 大剣を背負い、その4人に中指を立てる。

 瞬間、六つの光が空に浮かんだ。


「フォーメーションC。ゲシュペンストの処理を開始する 」


「「「了解 」」」


「せいぜい足掻けよ、人間共が 」


 大剣ですべての光を弾く。

 その隙に双剣使いから接近され、剣から巨大な衝撃波が放たれた。


「っう!! 」


 大剣を盾に防いだが、ここは空中。

 逃げ場のない場所でまた光が瞬いた。


(もう見てんだ……よ? )


 いつの間にか、右眼に闇のような刃が突き刺さっていた。

 しかも右脳を貫通してる。


(風の揺れも音もねぇ……間合いガン無視の一撃か )


 刃を引き抜くよりはやく、光から左足と左腕を持っていかれた。

 そして地上にはあの双剣使いがいる。


(一人くらい、ここで殺すか )


「やべ!! 」


 首をふるって刃を抜き、双剣使いに大剣を振り下ろす。

 その余波で辺りの建物は吹き飛んだが、攻撃は受け止められた。


(……おっ? )


 着地した瞬間、右足が溶け落ちた。

 しかも再生できない。


「今だ!! 」


 尻もちをついた瞬間、光から首を切断され、回る視界に黒い剣が突き刺さった。

 しかも心臓は双剣使いに切り裂かれる。


 重要臓器二つ潰れた。

 さすがにこれは……


(あーぁ、死んじまったな )


「……っ!! まだだ!!!!! 」


「えっ? 」


 頭のない体を動かし、大剣の突きを双剣使いにぶつける。


「っう!! 」


 防がれた。

 だがその体は空に打ち上がり、味方から引き剥がした。


(『寄生(エンリッチ)』……解除。『空翔(ヴルーヒュル)』 」


 使い捨ての頭から意識を切断。

 最速で右脳と片目を再生させ、最速で双剣使いに追いつく。

 

「この」


「おせぇ 」


 空中で加速。

 双剣ごとその体を切り殺し、ついでに頭を握りつぶす。


「カイリ!!! 」


(あー……やっぱあの女は治癒系の魔術か )


 溶けた足を切り落とし、その断面で空中を蹴る。


「おま」


「ケリー!? 」


 首だけの女はなにかを喋っていた。

 それを金髪の男にパスし、動揺したそいつを大剣で殴りつける。


(んっ、コイツは脆いな )


 金髪の体はぐちゃぐちゃに潰れ、吹き飛んだ死体は無数の家を貫通して城にぶち当たった。

 もう少し手応えがあると思ったが……あと一人しか残ってない。

 

「……お前は何製だよ? 」


 足と頭を再生させていると、鎧の男が話しかけてきた。


「なんだよ、不利になった途端おしゃべりか? 」


「あぁ、時間稼ぎだ 」


「……まぁいいぜ、答えてやる。俺の素材は人間だ 」


「人間? ゲシュペンストの素材は、ふつう人以外だろ 」


「普通ならな、けど俺は勇者の失敗作だ。歴戦の戦士、勇士、天才、天才の親、そいつらをドロドロに溶かして勇者の型に流し入れた、それが俺だ 」


「……なおさらわからん。たかが人の素材で、そこまでの強さが出るとは思えん 」


『なんだコイツは……どんなタネを持っている? 』


「……なるほどな 」


 下手に攻めてこない理由がわかった。

 だから大剣を下ろし、無防備をアピールしながら話をつづける。


「俺は109個の魔法を持っているんだ。だからお前の心も読める 」


「は? 」


「でもわかんねぇよな、すべての魔法は誰でも使える『(スクード)』で防げる。いくら魔法をつかえたからって、それじゃあ誰も殺せねぇ。だからこうした……俺自身を魔法で変異させる 」


 そう言うと、鎧の男は半歩引いた。


「『駄作(フェイリア)』……駄作を生み出す魔法。これで全細胞に、極小の臓器と筋肉を増殖させる。

寄生(エンリッチ)』……触れた対象に意識を移す。これで脳やら心臓やらが潰れても、細胞の臓器が生きていれば再生できる。

結晶(ペークシス) 』『鳥籠(カージュ)』……増殖させた細胞を固めて剣にしてる。

あとは『空翔(ヴルーヒュル)』で体を加速させたりとかな 」


「……それだけか? 」


「あぁ、それだけだ 」


 時間稼ぎにわざわざ付き合ったんだ。

 これでようやく、こいつの全力が拝めるはずだ。


「……『夜ノ太刀(ヨルノタチ)』 」


 案の定、鎧の男は空に手を掲げる。

 瞬間、黒い煙が空をおおった。


「おっ? なんだあれ? 」


 空には巨大な刃があった。

 しかもそのデカさは空の端から端まではある。


「あの刃は夜そのものだ。誰だって夜からは逃れられないだろ? 」


「回避不可能の超広範囲攻撃か。いいのか? んな事したら国が終わるぞ 」


「気にするな、俺の魔術……『夢界魔術(むかいまじゅつ)』はターゲットにしか影響を及ぼさない。ベラベラ喋ってるうちにマーキングさせてもらった 」


 なるほどな。

 だからコイツは貴族域をまもっていたのか。

 どんなに暴れても……周りに被害を出さないから。


「ちなみに俺を殺しても太刀の落下は終わらない……お前の詰みだな 」


「へー、そうかよ 」


 勝ち誇った声とともに、空から刃が迫る。

 それに応じて大剣を構え、口が裂けるほどの笑みを浮かべる。


「……? 何をして」


「俺さっき言ったよな? 全細胞に極小の臓器や脳を生み出せるって。脳、筋肉、心臓、消化器官。これがあるってことは……それは一つの生物なんだよ 」


「だからな……っう!!!! 」


『まさか!! 』


「そっ。魔法はこの世すべての生物が使える 」


 勘づいた男は闇のような刃を無数に放つ。

 それは脳、心臓、足を貫くが……すべての細胞を滅するまでには至らない。


「『(イスクス)』 」


 60兆ほどの全細胞。

 そのすべてに黒いヒビが走り、破れた血管からは黒炎が立ちのぼる。

 

「止ま」


「『落命(らくめい)』 」


 剣を振り下ろす。

 ただそれだけで……刃はおろか、空も夜も、無音が消し飛ばした。


「っ……ぅ…… 」


「感謝してるぜ、お前らのおかげで自分の力量を測れた。なにより……空からの一撃で助かったよ、これを地上に撃ったら大陸ごとぶっ壊れてたろうしな 」


 空にむかって剣を振ったにも関わらず、貴族域は命の痕跡すらない更地になっていた。


 かろうじて鎧の男は生きているみたいだが、余波をもろに喰らっている。

 右半身は消し飛び、残った方もボロい布切れみたいだ。


「おま……ぇは……なんのため…… 」


「世界を壊すことだ。他に目的はねぇよ 」


 その頭を大剣で潰す。

 すると吐き気がするほどの快楽が全身に回った。


「…………行くか 」


 吐き気を無理やり飲み、顔をあげて地面を蹴る。

 それだけで体が跳ね上がり、遠巻きに見えた城は目の前に見える。


((イスクス)……解除 )


「おらよっと 」


 壁を蹴破って最上階から侵入する。

 そこには紙束を抱えた科学者たちが、怯えた顔をしていた。


「なにも」


「バケモノだ 」


 大剣に血をめぐらせ、それを剣圧とともにぶっ飛ばす。


「あっ? 」


 科学者たちは廊下ごと消えたが、その奥には誰かが残っていた。

 しかも血の斬撃は消えている。


(受け止めた? いや……なにかに呑み込まれた感じだな )


「コイツは……手応えがありそ」


「あれ、ヤマトさん? 」


「……はっ? 」


 そこに立っていたのは、ユウトだった。


 


 

 

 

 


 



 


 

 


 


 


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 感想に書いたつもりが書き忘れてたので 勇者の失敗作なヤマトの武器が「ちょっと気持ちわるい“大剣”」なのはそういうことなんですかね。すごくいいなと思いました。ちょっとじゃないんですけどねw
[一言] 合図……作戦……まあ細かいことは気にしてもしょうがないですね。ハルトちゃんも有限“即”実行で気持ちいいのなんの(*´∀`)bイエーイ そしてヤマトが超強くなってますね。こんなマトモ(?)に魔…
[良い点] 世界がいくつあっても全部滅ぶわこんなん…… ハルトの魔法は美しいね。
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