第40節 見つけた
「ではまず、ケルパー王国の落とし方を説明しましょう 」
ガタガタと揺れる馬車の中、シグレは指先で『3』を示した。
「ケルパー王国は貴族域、平民域、ゲシュペンスト域の3つに別れ、その中心に『王域』というものがあります。そこがゲシュペンストの製造工場、王下隷者の研究資料、ゲシュペンストを利用する人間、国を運営するために必要なものすべてがあります 」
「じゃあつまり……三人で三方向から攻めるってこと? 」
「いいえ、王域にはデータと人間を外国に出す魔具があるんです。全員ではなくても王や数人は逃がせるでしょうね 」
「じゃあどうするの? 」
「私が王域に侵入してその魔具を壊します。そしてヤマトさんとハルトさんが国民を中央に追いやってください。そして挟み撃ちで皆殺し……って感じですね 」
「……?もう一つの域は? 」
「そこは安心してください。もう二匹……協力者がいますので 」
「ふーん……ねぇヤマト? 聞いてた? 」
ずーっと遠くを見てるヤマト。
でも声をかけるとハッとしたようにこっちを向いた。
「んっ、聞いてるぞ。つーことは誰が攻めるかどうかを決めねぇとな 」
「えぇ。まぁ好き勝手に決めちゃってください、協力者には後で伝えますので 」
「そーか。なら俺は貴族域を攻める、ハルトは平民域にしろ 」
「どうして? 」
「ゲシュペンストだったら人に操作されるし、平民ならどデカい魔術ですぐに逃げてく。挟み撃ちにすんだったらお前が殺さなくてもいい 」
「………………ありがと 」
「別に気にすんな。シグレもそれでいいだろ? 」
「えぇ、追いやってくれれば全員殺しますのでね 」
お礼を言うと、ヤマトは気さくそうに笑って手を振った。
するとその同タイミングで馬車は止まった。
「着きましたね 」
「あぁ、つか計画実行はいつだよ? 」
「今日の昼時に合図を出しますよ。協力者に情報共有しないといけませんしね 」
「今日か……急だな 」
「えぇ、1500年も続いた国が一日で壊れるなんて……最高でしょう? 」
「ハッ、お前とは趣味が合わねぇよ 」
「残念ですね〜 」
二人は笑い合うと、シグレは外に出ていった。
開きっぱなしの扉から朝日が差し込んでいる。
朝露の臭いもするし、たぶん夜が明けてそんなに経ってない。
「ほいハルト、平民域の地図だ 」
「ありがと 」
シグレが残していった資料を受け取り、二人で地図に目を通す。
紙をめくる音だけが聞こえる馬車の中。
そんな中、ちょっとした疑問が思い浮かんだ。
「ねぇヤマト、ケルパー王国ってどんな国なの? 」
「どんな国……か。1500年前くらいに覇王を復活させるためにできた場所、そうとしか説明できねぇな 」
「復活? 」
「あぁ。人類は覇王の死体を喰ったことで魔術を扱えるようになったんだが、全人類が喰えるほどの肉はなかった。だからまた死体が欲しいから覇王を復活させようとしてんだ。特別なゲシュペンスト……貴族たちの死体を使ってな 」
「いやそうじゃなくて、覇王は死んでないよ。なのになんで復活させようとしてるの? 」
「はっ? 」
「えっ? 」
あの本のように覇王が死んだと言うヤマト。
それを否定しただけなのに、信じられないと言いたげな目を向けられた。
「どういう事だ? 」
「そのままの意味だけど? 覇王はまだ生きてる。あっ、それともう一つ聞きたいんだけどさ、覇王の死体はこの国にあったの? 」
「……あぁ 」
「…………そっか。そっか!! うん! ありがとヤマト!!! やっぱりこの国の人間全員に殺すね!!! 」
「……はっ? お前なにいっ」
「またね!! 」
ヤマトを無視して外に飛びだし、そのまま国に向かって走ってみる。
体は驚くほど軽かった。
こんなつまらない世界に希望を見いだせた気がした。
だって……やっと殺すべき相手を見つけたんだから。
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「マジでなんなんだよアイツ…… 」
残された馬車の中、意味が分からなすぎて笑ってしまう。
最初は世間知らずってイメージだった。
でも二加色前……ゲームが終わってからその考えは変わった。
『ねぇヤマト、なんで空に月がないの? 』
『ヒカゲを殺した? そうなんだ……でもヒカゲは生きてるよ 』
『なんかさ……ずっと前にヤマト達と会った気がするの。絶対会ったことなんてないのに 』
(あれ……やっぱ最初からおかしくねぇかアイツ? )
思い返してみればアイツ……俺を蹴飛ばしている。
気配は人間なのに、ゲシュペンストな俺を、二百キロ近くある俺を……あの細い足で。
つーかそもそも、虐殺はしない態で着いてきたのに、急に人間を殺すといい始めた。
しかもそれよりも異例なこと。
アイツは突然11位という立場についた。
色々準備した俺とは違って、本当に突然……何かが変わったように。
(マジでアイツ……なにものだ? なにが目的でなんのために動いてる? )
「………………まっ、関係ねぇか 」
しばらく悩んだ。
が、どうでもいいことは切り捨て、さっさと外にでる。
「おー、いい天気だな 」
空はどこまでも快晴だった。
こんなにいい天気な日は……ヒカゲを殺したときを思い出す。
「……さ、俺は俺の目的を果たすか 」
馬車と馬を指できざみ、ただ走る。
この世界を壊すために、まずはケルパー王国からだ。




