SS5 (2) お台場
夕飯を食べ終わった僕達は、食事をしたフードコートのあった建物から外に出てライトアップされた白い巨大なロボットが立っている立像の前に来ていた。
買い物から帰って来た那須先輩とも、そこで合流した。
那須先輩の両手には買ってきたと思われる大きなプラモデルの箱が入った袋がたくさん握られている。
これは……かなりの出費だったんじゃないだろうか。
それでも、那須先輩はご満悦そうに頬をほころばせている。
立像は全体的に白一色で統一されていて、とてもシンプルな見た目をしている。
市川さんに見せてもらった写真とは印象が全然違うため、あれは立像が動いた後の写真なんだろう。
今の見た目から、あそこまで印象の違う姿にどうやって変形するのか楽しみだな。
「お、そろそろ動く時間だよ」
ちょうど僕が立像の変形に胸をワクワクさせていた時、丈人先輩が腕時計を見て始まりの合図をしてくれた。
皆、巨大なロボットの立像を見上げるように注目する。
那須先輩は嬉しそうにスマホを向けて動画撮影の準備をしている。
と思ったら、那須先輩だけじゃなくて丈人先輩や美結さん達も、周りにいた他の人達もスマホを立像にかざしていた。
僕もつられてスマホを立像に向けて動画を撮影する。
突如、立像を照らしていたライトアップの光が消えて暗くなる。
直後に緊張感のあるBGMと共に立像の一部分から激しい光の点滅が起こり、何かが起動するような音が鳴り響く。
そして、主人公と思われるキャラクターのセリフの音声が流れて、ドラマチックなBGMに呼応するように巨大なロボットが真っ赤な光を発しながら変形を始める。
足元から変形を始めて下から上に向かって変形は進んでいき、最後は頭部の顔が変わってユニコーンのように尖った白い角が左右に二つに割れた。
変形完了後は、立像の発行する部分が真っ赤な光をウェーブさせてから一度全体が大きく真っ赤に光ってからゆっくり元の姿へと戻っていった。
「おぉ~! すごかったねぇ~」
感嘆のため息を漏らしながら、丈人先輩が撮影していたスマホを止めて手元に下ろす。
「やっぱり、いつ見ても最高!」
那須先輩は何度か見たことがあったようだけど、ハイテンションだった。
「本当、夜なこともあって綺麗でしたね」
昼間だと、ここまで立像の発光は映えなかったと思う。
夜に見ることができてよかったな。
「ねっ! すっごく、綺麗だった」
「そうだね。写真で見た時よりもずっと綺麗だったね」
美結さんと市川さんも満足そうだ。
巨大なロボットがメインの作品のため、どちらかというと男の子向けな感じもするけど、この立像はガッチリ女の子の心も鷲掴みにするようだ。
「想像以上に動いたな」
「あっ! それ、アタシも思った! あんな風に頭の部分が動くなんてすごいよね!」
マノ君の感想に共感するように美結さんがリアクションする。
「あの、角の部分が思いっ切り真っ二つに割れるのがいいよね。これぞ、『ユニコーンォォォォン!!』って感じで熱いよね」
「……丈人先輩、それ、パチンコの話ですよね?」
「あ、バレた? というか、マノ君よくわかったね」
いたずらっぽく丈人先輩は笑う。
丈人先輩がパチンコをやることの新事実が、丈人先輩も大学生であることをなぜか僕に思い出させた。
「俺が知ってるパチンコのイメージがたまたまそれだったので」
「なるほどね。たしかに、パチンコでもユニコーンは有名だからね。マノ君もパチンコができる歳になったら、一回くらいはやってみなよ。人生経験として、遊びで楽しむにはいいと思うよ」
「そうですね……気が向いたらやってみます」
マノ君は興味深そうに言う。
なんだか、マノ君は動体視力がすごくいいからパチンコで嘘みたいに勝ちそうだな。
「伊瀬君もね」
「あっ、はい。一回くらいなら、僕も少し興味があるので」
「うん、そんぐらいでいいと思うよ。吞まれないようにだけは注意してね」
「それは、絶対気を付けます」
ギャンブルは人を狂わせると言うらしいし。
「三人共、何してるのー? 夜景、見に行くよー!」
離れた所にいた美結さん達に呼ばれて僕達は駆け足で美結さん達がいる方へと向かった。
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