106/106
舞台遷移
記録によれば、クリストンやソートリッジによって書き換えられた世界をこの未来にいる人々は魔法人やアルバートの目を通じて観測していたようだ。
つまり彼らは知っているのだ。
旧都の酒場で起きた悲劇を。
境界の街での魔法王の叫びを。
鍛冶町で純人教団を騙った者の敗北を。
研究者の町での少女の進化を。
そして、王都における真の英雄の勝利を。
しかし、彼らが知るのはここまでだ。
彼らが歪ませた偽物の世界は崩壊し、元の形を取り戻し始める。
彼らがその先を窺うことはできない。―――そして、私も。
記録も、これで終わりだ。
だが記録はこれで終われども、あの世界の物語は続く。これから、本当の物語が紡がれていくのだ。
新たな世界に、今の偽物の歴史が残るかどうかは分からない。
しかしあの世界の歴史にその名が残らなかったとしても、私は知っている。
世界は偽物でも、リンド・アルバートは確かに「英雄」だった。
【記録者:削除につき、不明】




