朝日と夕日
「炎の弾ファイヤーボール!」
「うがぁ! こいつら、ただの修道士じゃねぇ」
「ほれ」
シュー
「ありがとうございます衛僧長!」
「おう、やってやれ」
「ええい、怯むな! ねじ伏せんか」
「お返しだ!」
次々に石化の解けた修道士達が鎖兵と交戦状態となっていく。
圧倒的だった数の差は次第に縮まって来た。
「ちょっと、なにさ! こいつら」
「ふん、おばさんの相手も飽きたわ」
「待ちなさいよ、この小娘!」
修道士達の加勢によりヘーゼルはマヤとの交戦から離れ、ある場所へと一気に飛翔した。
「種族スキルは使えるまま?」
「ああ、それは使えるみたいだ」
「だったらガードしてなさい。出してあげる」
そう言うとヘーゼルは磔にされていたアーモンを闇の爪ダークネスネイルで石柱を砕き救出したのだった。
「ありがと」
アーモンが礼を言ってる時には、もう……
「癒やし抱きたまえヒーリング」
状況を見ていたメルカが辿り着き回復魔法を施した。
「大丈夫そうね、じゃあ行くわ」
そう告げるとヘーゼルは未だ数の有利を保たれ続けている上空へと加勢に向かって行った。
「大丈夫か? アーモン……」
エラトスだった。
「大丈夫……」
「あらあら昔話をしてる場合じゃなさそうね」
「そうだ文句があるなら、それも良いだろう! まずは鎖を大人しくさせて。それからだ」
「ふぅ、そうですね!」
あの日、修道院でエラトスが石化されて以来の会話。
奇しくも、またもや石化絡みの場で向き合うとは思いもよらなかった。
皇都バビロニでの、すれ違いもあったが、むしろ話さなくて良かったかも知れないと今は感じる。
胸の奥へ滞っていたわだかまりも会話をした事でスッと抜けて行く様な感覚を二人共が感じていた。
「クコ! 移動するわ」
「……下?」
「そう下にも行くけど、マテオ達が心配なの」
アーモンが解放された事で冷静さを取り戻したラッカは考えた。
この動きやすさはマテオが何かしたのだと……
あの追手の数を考えればマテオ、ペカン、アルワルの3人では危険過ぎる。
落ちていた適当な剣を掴むとアーモンは敵陣の真っ只中へと進んで行く。
それでも交戦は最小限だ。
石化の解かれた修道士達に任せ先へと向かう。
すれ違う修道士の中には、かつて日課や週課を共にした見知った者もいた。
皆、優秀な魔法士だが鎖兵もまた手練揃いだ。
(誰も死なないでくれ)
飛び交う魔法攻撃をくぐり抜け……
「カシュー」
エルフとドワーフのハーフ達によって錬成されたであろう台座の上にカシューは寝かされていた。
「ん、んぁ……アーモン……なの」
「ああ、遅くなってゴメンな迎えに来たよ」
「アーモン、兄様が……」
そう言ってカシューはアーモンへ抱き付き胸へと顔を埋めた。
美しい顔、美しい金色の瞳から涙が流れていた。
「止めなきゃ……だ」
「止めて欲しいなの」
そう言ったところでアーモンは周りを見回した。
確かに手練の鎖兵とは言え修道士達も魔法レベルが高く劣勢だった形勢は逆転していた。
それにエルフとドワーフのハーフである錬成士達の士気が妙に低いように感じる。
(これなら一気に制圧してシュメーを何とか出来るかも知れない)
そう考えカシューが寝かされていた台座の向こう、もう一つのシュメーが寝かされている台座をアーモンは見た。
!!!
「いない! シュメーが居なくなってる」
「んぁ」
その時、大聖堂に皇帝シュメーの声が響き渡った。
「調子に乗るな愚民共」
大聖堂の天井絵、その間近……つまり、この空間の一番上に皇帝シュメーは浮いていた。
いや、立っていた。
上半身裸となった、その背中には翼の如く一対の魔眼がギラついている。
魔眼『朝日』
魔眼『夕日』
共に重力を操る特殊な魔眼だ。
そして、その魔眼こそ……
「そんな……ダミヤン様とマカ様の魔眼だと!」
エラトスの叫んだ言葉の意味をアーモンは理解した。
その魔眼が自分の父と母の魔眼なのだと!




