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荒れ狂う

 やはり俯眼や千里眼が使えると一気に戦いやすくなる。


「こりゃ良いわぁね」


 アカゲザル系獣人アルワルにとっては初めての金環による魔眼波及。

 それに戦闘将の『馬眼』まであるのだ。


「なるほど将殿は、いつもこんな風に見て戦っておられたのですな」


 そりゃ強いよねと少しばかり含んだ感のある言い方は雪豹コスマスだ。


「こう使うのか……」


 蜂の巣ダンジョンでは使いこなせなかった『馬眼』も閃馬訓練で経験を積んだせいか使えるようになっていた。

 閃馬に跨っているせいもあるだろうが分体なので、やはり、こちらの捌き次第となるのだ。


 未だ動きのないスカルフェイスダークの本体だが頭から生えた大蛇の動きは俊敏だ。


「モード神事斧」


 剣モードのウロボロスよりも斧で思い切って叩いてみる事にした。

 頭上から迫る頭髪大蛇を避ける。

 すると大蛇は、すぐさま方向を変え慟哭を放つ!

 閃馬は立髪で防御壁を展開するが徐々に削られるのを回避する為、ホースステップで空中へと離脱!


「その手は食わないんだよ!」


 すでにホースステップで避ける事を読んでいる頭髪大蛇は、その長く巨大な蛇胴を活かし、しなる鞭の如く体をぶつけて来るが俯眼で全体を把握し馬眼で後方すら視認している俺にはムダな攻撃だった。


 ヴァスン!


「やった! 皆さんもアーモンに続いて下さい」


 とうとう頭髪大蛇の一体を切り落とす事に成功した。

 すると、すぐ後ろで同じくコスマスが一体を切り落とした様が見て取れた。

 もちろん馬眼での把握だ。


 ヴァスン!


「さすがコスマスさん、後6本です」


 コスマスは変わった武器を使う。

 その形状は雪山登山で用いられるピッケルと呼ばれる小型のツルハシの様な物だった。


「将殿よりも速ようござった」


 その身のこなしは素晴らしかった。

 両手でクルクルと操る2本のピッケル武器を時には長い尻尾に持ち替え見事な連撃を繰り出すのだ死角へ死角へと入られ削られる大蛇の首が落ちるのは見る者を魅了する程の手際であった。


「……見える……せい」


 みんなの防御を閃馬が担ってくれたお陰でクコも攻撃に専念出来ている。

 ウネウネと動く大蛇を得意の体術で避けると攻防一体のバンデージ武器で掌底を炸裂させた。

 それでも弾かれた大蛇は弾かれたチカラさえ利用するかの如く逆から再度、迫って来る。


「危ない!」


 マテオが、そう叫びそうになった時、後ろに目でも付いてるかのようにクコは最小限の動きで回転しスリーパーを決めた。

 そして、そのままバンデージ武器の威力なのか? すごい力で締め続け遂には捻じり切ってしまった。


「……何か……キモい」


 これで3本の大蛇が切り落とされた。


「いける」


 本体への道が開けた。

 千里眼で捉えた本体は、未だ覚醒前だ!


 ヒューマンの種族スキル、クイックを発動。

 獣人の種族スキル、レイジを発動。


 身体能力を高め、更にはホースステップをも利用し一気に間合いを詰め……


「うらぁ!」


 一発で決めてカシューの元へ行く。


 ヴゥヴァァァア!


「アーモン!」


 ヴァシュン! 


「これは、まさか!」


 切り落としたはずの大蛇が新しく生えていた。

 それだけではない、しなる鞭のような形態の大蛇と固く突き立ててくる大蛇に変形し本体を守るかのように攻撃して来たのだ。

 一瞬の出来事に魔眼で捉えながらも対処出来ずに吹き飛ばされてしまった。


「その能力……貴様ぁ封印されながらも我の能力を取り込んだのかぁ!」


 そうだ、このスカルフェイスダークの攻撃は閃馬になった馬王の立髪攻撃そのものだった。


「馬王殿、いけませぬ!」


「うおっ!」


「許さぬわぁ」


 分体となっている閃馬が一斉に荒ぶりスカルフェイスダークへと突進を始めてしまった。

 その突進に対してスカルフェイスダークは大蛇を、しなる鞭の如く操り進路を妨害し避けた地点へ固く突き刺す攻撃を仕掛けて来る。


「落ち着け、馬王」


 防御する事を忘れ荒ぶるばかりの閃馬の上では捕まるのがやっとだ。

 それでも荒ぶるごとに力が倍増するかのように閃馬の動きは速度と力強さを増していく。


「すげぇぜ」




 荒れ狂う




 猛烈な大蛇と閃馬の攻防を表す最適な言葉だろう……

 そして、その荒れ狂った速度と力の嵐は突然止んだ。

 まるで台風の目の中にでも辿り着いたかのように唐突な静けさが去来した。

 そう、スカルフェイスダークの目の前に辿り着いたのだ。


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