悔いる
「じゃあ、ここに集められてる奴らは封印させし我が一族を倒す為だと?」
「そうなのじゃ、馬王が抑えるのも限界が近いのじゃ」
「おいおいおいソイビーよぉ、馬王が言うなって言ってたじゃんよ! その話ィ」
「べハイムも知ってて私に黙ってた? そう……」
「ちょい、ちょい、ちょい! ヘーゼルたん、そこは死ねばいいのにでしょ! 何で言わないのぉ、マジで怒っちゃってる的な?」
約一月、閃馬訓練が続く中でヘーゼルに隠し続けたスカルフェイスダーク討伐の件をイーズがヘーゼルにバラしてしまった。
きっと怒り暴れると思われていたヘーゼルだが怒りが湧いているのは見てとれるものの暴れはしなかった。
「馬王……ザクセンまで封印は保たないのか?」
「ヘーゼルよ、ザクセンまで封印出来たとしても望みは薄いのだぞ」
「……解ってるわよ! でも、それしか無いじゃない」
まだ、もう少し閃馬訓練は続く、世界樹の芽吹があるとすれば、その時期も近いだろう。
閃馬訓練の終了まで、ここに留まり、どうするか考えてはどうだと馬王はヘーゼルに告げたが、それは答えの先延ばしに過ぎなかった。
「ねえ、イーズは、どうしてヘーゼルに言っちゃったの?」
「妾が言わなければダーリンが言っていたのじゃ」
「そう……だよね」
ラッカは自分が言うべきだったと悔いていた。
アーモンがヘーゼルに隠したままスカルフェイスダーク討伐の訓練をしている事に疑問を感じていた事など気付いていたのに……
「くくくっ、ペカンよ頼みがある」
「何ですか? 馬王さんの頼みなら何でも聞くよー、です」
その夜……
「何でじゃ? 何で妾の晩御飯だけ無いのじゃ!」
「くくくっ、ソイビーよ。皆が言うのを我慢しておった事を言ってしまったのだ罰は当然であろう?」
「そんな酷いのじゃ」
あれだけ自分で言うべきだったと悔いていたラッカだが、この時ばかりは言わなくて良かったと思うのであった。
馬王の間から少し外れた魔石の吐出部、戦闘将の石笛と同じ模様があった、あの場所にヘーゼルはいた。
そして皆から距離をとっていたヘーゼルが移動するのを見ていたアーモンも、その場所へと追って来ていた。
「何か用?」
「流石だな気付かれないようにしてたのに」
「あんたじゃないわ、その後よ」
「あ! どうして着いて来てんだろ? まだコントロール出来てないなぁ」
閃馬訓練と並行して黒湯気のコマちゃんとシーちゃんのコントロール訓練をしているアーモンは馬王の指示により黒湯気を常時展開させ続けていた。
「まあ、いいわ……その子達といるのは悪い気がしないから」
「そか」
最初の頃は触るだけでダメージを加える黒湯気だったが現在では、その辺りのコントロールは可能になっているアーモンであったがヘーゼルは初めて見た時から平然と黒湯気に触れていた。
「やっぱシーちゃんが懐いてるな」
まるで飼犬が懐いて主人の側で寛ぐように2匹の黒湯気は鎮座していた。
その黒湯気のシーちゃんを犬でも撫でるように触りながらヘーゼルは少しづつ口を開いた。
「あんた達、本当にアレを倒せるの?」
「分からない、でも倒さないと多くの人が殺されるんだろ?」
「そうね」
「ヘーゼルの一族も沢山殺されたって聞いた……それでもヘーゼルは助けたいの?」
「わからない、でもザクセンに望みがある以上諦めるのは違う気がする」
「そうか……分かった、だったら試せばいいよ。それで駄目だったら俺達が何とかする! それでどう?」
「……」
ヘーゼルは答えなかった。
シーちゃんの首元に顔を埋めて何も言わなかった。
ただ、シーちゃんはアーモンのチカラの一部だ……
(魔族でも何でも泣いてる女子は助けなきゃな……)
シーちゃんの首元に滲む涙を感じ取っていたアーモンであった。
さて、そこから少し離れた草の陰に立っているのはラッカである。
もちろん小さく見えるアーモンとヘーゼルを心配して見ていた。
最初は追うか、どうか迷ってやめた事を悔いていたラッカであったが事情とアーモンの性格を誰よりも知ってるだけに今は、遠くからでも見てしまった事を悔いていた。
だが、その後悔は晩御飯を抜かれたイーズの後悔と比べれば他愛のないものだった。
「こんな事なら妾が言うんじゃなかったのじゃ!」




