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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
たなびく旗に想う編
134/206

結成式

 遂に春到来である。

 あれから半月に一度ペカンの千里眼でラパの旗を見ているが赤色は上がらない。

 それはカシューに危険がない事の証拠でもあるので良いのだが、もどかしい気持ちになる。

 とは言え、今行って役に立つほどの実力が備わったのか?

 いや、まだだろう。

 でも理屈じゃないんだ、やっぱりカシューを助けに行かなければ気が済まない。

 この蜂の巣ダンジョン攻略が終わったらカシューを救出に行く。

 今迄だって実力なんて無くてもピンチを脱出して来たし何とかなるはずだ。


(ボス討伐が終わったら、みんなに話そう)


 そう心に決めた。




「では明日が結成式ですね?」


「はっ、そうであります!」


「ご苦労様なのじゃ」


 イーズがスモーク・ブリッジ・スパイダーにトドメを刺してから何度となくランタンラミーを斬る輩が出没した。

 その度に俺達は駆り出され討伐を繰り返した。

 こちらも実力を上げる為に都合が良かったので毎度毎度、参加したのだが最後の方は、いい加減にして欲しかった。


「あらあら、今日もゲボクさん達は熱心ね」


「やめてよメルカ、あの人達が勝手に名乗りだしただけだからね」


「皆、ラッカのゲボクさんなのじゃ」


「やめてよイーズ、そもそもイーズのゲボクさんのはずなのに!」


 スモーク・ブリッジ・スパイダーを一撃で倒したイーズ。

 そのイーズへの賞賛で渦巻いのだが、イーズがラッカへ「これで良いかの?」なんて聞いたもんだからラッカの方が立場が上だと噂が広まってしまった。

 そしてイーズのビキニアーマーとラッカが川の民の民族衣装であるピタッとした皮の服を着ているせいと『痺れ鞭の女王様ラッカ』の二つ名も相まって、すっかり女王様としてイメージが定着してしまった。

 さらには自らゲボクと名乗る信者なのかドMなのか分からない者まで集まりだし現在30名程のラッカ様ゲボク軍が出来上がっている。

 そのゲボクさん達が定期的にスランバーコール集落まで各種連絡を届けに来るのだ。





 すっかり雪の溶けた丘の民エリアであるハルティスは春独特の暖かい風に包まれている。

 空には渡り鳥達が群で離れていく様子が見え足元には小さな花も芽吹きつつある。


「草原の民が戻って来たぞぉ」


「干面鳥を補充しなきゃな」


「谷の民と一緒にいるのは山の民?」


「らしいぞ、あんな大勢いる山の民は初めて見るな」


 春到来と共にハルティスへ周辺民族が集まるのは毎年恒例であり賑やかで華やかな雰囲気で街が溢れている。

 いつもと違うのは谷の民エリア『ミヤァ』で冬を越した山の民が大勢で訪れた事だろう。

 全身黒ずくめで口元まで黒い布で隠した集団は一種異様な雰囲気である。


「アナクシも来てるんだぜ」


「そうなの? ミヤァの仕切りは大丈夫なの?」


「……ストラボが……賭けに負けて……残ってるらしい」


 そうかストラボさんも大変だな。

 てか山長を谷に縛り付けたら山へ戻れないんじゃないのかな?

 だから山の民がハルティスへ来たんだろうか……


(まあ、俺達には関係ないか……)





 そして蜂の巣ダンジョン討伐隊の結成式当日。


(どうして、こうなった?)


 それぞれのパーティ毎で縦に並んでいたのだが1パーティのみ猛烈に長い列が出来ていた。

 そう俺達『白銀のスランバー』の列だ。

 ラッカ様ゲボク軍が来るのは想定していたが、なんと山の民達がイーズの元へ集まってしまったから相当な人数に膨らんでしまっていた。


「アーモン君よ、すまんが列を整理してくれ」


「はい、そうですよね」


 ギルド長から言われラッカを俺の右横にイーズを俺の左横に並ばせてみた。

 だが、それでも列は長いので仕方なく俺達『白銀のスランバー』は全員が横に並んでラッカ様ゲボク軍と山の民達が、その後ろへ折り返しつつ並ぶようにした。

 なんだが、やる気満々に人を集めたみたいで恥ずかしい限りである。


「では、ここに討伐隊結成式を執り行う」


 ギルド長の説明から始まりハルティスのナンバー2であるイシドールから挨拶が、あったりと式は滞りなく終了した。






「よう、お前ぇさんら人数増えまくってるじゃねえか」


「プトレマさん違うんですよぉ」


「目立ちまくってるさね」


「ミュラーさんも、からかわないで下さいよぉ」


 彼らが目立たないように灰色をパーティ名に入れている本当の気持ちが初めて理解出来た気がしたのである。


「やーだラッカ、貫禄付いたでねーか?」


「ちょっとココン止めてよね」


「ハハ、ココンも貫禄なら負けずに可愛いぞ」


 今回も討伐隊長を任されたらしいヴァルトゼは相変わらず意味不明のココンラブである。

 カイとファンデラも相変わらずイチャイチャしておりマテオだけがピリピリとしているように見えた。

 やっぱり『翡翠の爪』はマテオが脳筋4人をコントロールしているのかも知れないと改めて思った。

 そのマテオが話しかけて来た。


「アーモンさん見ましたか? 草原の民の戦闘将が来ていたの!」


「あの黒湯気軍を率いてたやつ?」


「あれは僕の夢だったので先代のヒューマンだった戦闘将なんですよ」


 今日来ていた現戦闘将は獣人タイプ、しかも馬系獣人で草原の民としては待望の馬系戦闘将なのだと言う話だった。

 なぜ馬系戦闘将が待望なのか聞こうとしたところでヴァルトゼに呼ばれてマテオはタカタカと駆けて行ってしまった。




「失礼いたす。イーズ殿は、どちらか?」


「……黒い人……囲まれてる」


(来た~! お馬さんだぁ)


「イ、イーズー! お客さんだぞぉ」


 草原の民の戦闘将がイーズに何の用なのだろう?

 そもそもイーズがホールマウンテンから復活したのは数ヶ月前だ、ハルティスでは既に有名人ではあるがハルティスに着いたばかりの草原の民が何故イーズを知っているのだろう?


「なんじゃ?」


「カータから参ったヘレフォーと申す」


「知らんのじゃ」


「マオウ様より伝言を授かっておる」


「なんと、あやつ、まだ生きておったのか? 懐かしいのじゃ」


(なんですとぉ! 魔王いるのかぁ! そうだよなぁ、異世界だもんなぁ)


 ヘレフォーと名乗る戦闘将はイーズへ伝言を伝えた後、仲間の元へと戻って行った。


「イーズさ、魔王と知り合いなの?」


「昔馴染みなのじゃ」


(そうかぁ、まぁドラゴンだもんな、不思議ではないな……)


 それにしてもダンジョン討伐隊結成式の日に魔王の存在を知るとは、この先どうなるのだろうか?



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