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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
たなびく旗に想う編
130/206

忘れられない

(あの顔が忘れられない)


 あの後、山の民エリアで一泊、ミヤァでも一泊し再び古道を通って戻って来た。

 イーズの言う通り黒湯気絡みの摩訶不思議な出来事は起きなかった。

 その代わりに雪が積もり始めていた。


(古道は特別な道ではなくなったんだろうなぁ)


 そして出口……今は、もう去ったらしいエルフとドワーフのハーフ達の居住エリアに着いて幕を捲り出た所にラッカはいた……


「アーモン……カシューが……」


 何つぅ顔だと思った。

 あの、いつも自信満々で、めげないメンタルの強いラッカが……

 精神的に打ちのめされてボロボロになっていた。

 いつもサラサラで綺麗な紺色の髪とかボサボサだ……


「ゴメン……取り戻せなかった」


 俺は、それだけ言ってラッカを抱きしめた。

 変なラブロマンスなんかじゃない。

 痛々しい表情……疲れきった顔を見るのが辛かったんだ多分……

 ラッカは、わんわん泣いた。

 多分ラッカが泣くのを見たのは初めてだったと思う。





「すまないね私が駆けつけた時にはカシューナ姫は既に攫われた後で隷属された人同士が傷付け合うのを止めるので精一杯だった」


「いえ、ヘカタさんにまで迷惑を掛けてしまい、こちらこそすみません」


 俺達が古道へ旅立って数日後にエルフとドワーフのハーフ達が不穏な動きを見せた。

 今まで見向きもしなかった蜂の巣ダンジョンへ侵入し始めたのだと……

 あらかたダンジョン内の地形を把握した頃に空から、奴ら……モヘンジョ達が現れたそうだ。


 ヘカタ代表やヴァルトゼ達の指示でエルフとドワーフのハーフ達を見張る為にダンジョン内の警備を強めていたのだが、これが逆効果だった。


「その警備を隷属されてしまったと?」


「そうなの……さすがのイドリーも人数が多すぎるし何より敵じゃない人を傷付ける訳にもいかなくて……」


「でも助けが来たよー、です」


 ヘカタ代表からデスリエ王女への謝罪と説明が終わった後からはラッカとペカンに事情を聞いている。


「助け?」


「エラトスさんとシスターフラマウが来たの」


「あらあら、もうシスターではないわ」


 騒動の真っ只中にエラトスとフラマウが駆けつけた。

 そしてカシューを追ってイドリーと共に行ってしまったのだと……


「連絡をするから、それまで絶対にハリラタから出るなって……」


「別れ際に千里眼の可能距離を聞かれたよー、です」


 イドリーの事だ何か考えがあるのだろうが何もせずにハリラタで待ってろなんて……


「あらあら、アーモンもラッカも心配し過ぎよ」


 メルカが言うにはカシューが隷属されたのは、これが初めてではないとの事だった。

 かつて『テーベの鳥籠』が『テーベの鎖』からカシューを助け出しラマーニ修道院へ隠したのも隷属が原因なのだと……


「だったら、なおさら急がないと!」


「あらあら、そうじゃないのアーモン」


 隷属されて過去視を利用された後は隷属で利用された記憶も封印される。

 忘れなさいと命令されるような隷属眼の使い方なのだろう。

 そして、その作業は時々あるだけで普段は皇女として暮らしているから安全は安全なのだと、この話は元々はイドリーから聞いていたそうだ。


「もちろん、このままで良いとは思わないわ」


「でも動くのは今じゃないと?」


「あらあら、ラッカ顔色が良くなったわ」


 今の俺達じゃ力不足……

 カシューを助けるにも準備が相当必要……

 そりゃ分かっちゃいるが……


「だからって、じっとしてられっかよ!」


「ダーリン、カッコイイのじゃ」


「なっ、ちょっとダーリンって何よアンタ!」


(はぁ、今は説明する気にもなんねぇ勝手にやってくれ)


「……代わりに……説明する……子供……出来た」


「何よ、それぇぇ!」


 イーズとラッカが揉め始めた。

 重たい空気を良くしようとクコがふざけたのは分かってる。

 それでも俺の気持ちは重たいままだ。

 カシューに即座に危害はないとの言葉には少しは安心した。

 それでも俺はバビロニーチへ戻るつもりでいた。

 なぜなら、あの日のカシューの俺に助けを求める声が忘れられないからだ。

 だが、その考えを一旦保留したのはイドリー達からの連絡が来た時だった。


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