表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/206

古道の真実

 ザワザワでは済まない大声で目が覚めた。


「何か起きたの?」


「……マテオが……聞きに行った」


 どうも食事担当の谷の民達の方から騒ぎが起きている様子だった。

 しばらくすると、リャマ系獣人マテオがタカタカと駆けて帰って来た。

 騒然とする現場の雰囲気とホンワカ雰囲気の走り方が違和感ありすぎだがマテオも顔は引きつっていた。


「昨夜、湯気ヘラジカを顕現(けんげん)させた谷の民が重体です……と言うか老人になってます」


「へ?」


 説明しろと揉めていた谷の民が一夜にして老人になった……


「浦島太郎か?」


「何ですか? そのウラシって」


「いや、いいんだ」


(ついに自分で日本ワードを訂正するようになってしまった……ああラッカに会いたい)


 しつこく揉めたから粛正(しゅくせい)されたのだろうか? いや、そこまでの揉め事ではないだろう。

 ではなぜ?


「きっと、これが呪いだぜ」


「あらあら、レアアイテムを隠し持ったのかしら」


 ピスタの解析とメルカの考えには(うなず)けるものがある。

 それを聞いたマテオの言葉で確信した。


「そう言えばボクも湯気司祭を出して潰された後で持ち物検査をされました」


「決まりだ!」





 谷の民は何とか命を取り留めた。

 が、仲間の谷の民達がストライキを起こしてしまった。

 食事も作らなければ、この先も同行しないと言い出して揉めに揉めている。


「俺達はマテオが作るし材料を別に用意してたけど……」


「……見られて……食べにくい」


 谷の民以外の人々の視線が厳し過ぎて汁物だけ飲んで残りは包んで持って行く事にした。

 が、まるで出発する気配がない……

 とうとう昼を過ぎた頃にイノウタとイシドールが全員を集めて説明を始めた。





「この話は古道を出た後は他言無用に願う」


 イシドールだ。


「これは多民族国家ハリラタの意志でもあります」


 イノウタだ。


「そしてハルティスと我々魔法民族の意志でもある。外に漏れれば取り返しの付かない事になるゆえ場合によっては命すら取らねばならなくなると心得て欲しい」


 イシドールの前置きが、あまりにも重く、一気に場の雰囲気がシリアスになった。



「もう気付いておると思うがワシが使う黒湯気(くろゆげ)(しょう)は100年くらい前に古道で身に付いたモノじゃ……」


 そこから長い昔話が年配エルフであるイシドールの口から語られた。



 今回と同じように呪われた古道で摩訶不思議な夜を何度か過ごし若かったイシドールも湯気の掌を顕現させた。

 その時は巨大な蚊を(てのひら)だけ大きな猿が叩く夜だったそうだ。

 何人ものエルフがイシドールと同じように蚊や掌を顕現させたが……

 現在、生き残っているのはイシドールだけだと言う話である。

 イシドールが若かったせいもあるが、とある薬を花の民から貰ったお陰で生き残ったとの事だった。

 その時、その薬は一粒しかなく既に虫の息だった他の者ではなく生き残る可能性の高い若きイシドールに飲まされたそうだ。

 ちなみにイシドールは、全く記憶が残ってないとの事だ。

 そして、ここからが重要だ。



「死んだ仲間とワシは古道に入る前に言われた約束を破ったのだ……レアアイテムを持ち帰ろうとした」


 そして今回の谷の民もレアアイテムを隠し持っていたと……


「なるほど……」


 ここからはイノウタが続ける。


「その時に使われた薬は花の民でも製法の失われたもので現在は作る事が出来ませんし研究用のサンプルが極僅か残るだけで飲用出来る量はごさいません」


 イシドールの力は実際には強力で、この力あればこそのハルティス代表の側近である。

 それゆえ詳細を話せば力を手に入れようと古道へ踏み込む者が出る恐れがあり話せなかった。


 同様に花の民の薬の話は極秘であり。

 (わず)かに残るサンプルをも盗み出さんとする者が出る事を避ける為に話せなかった。


「今回は犠牲者が出てしまい皆さんが納得されない様子なので特別に真実を話しましたが、どうにもならないのです」


 イノウタが申し訳なさそうに言う。

 その後に続けてイシドールが語気を強めて言う。


「が、しかし! レアアイテムを持ち帰らない事は契約であったはず。それを破ったのは彼だ。本来であれば捨て置かれても仕方のないところをデスリエ王女の寛大な措置で国の極秘事項を話している」


 そこまでイシドールは言うと間を置いて……


「これでも逆らう、内容を漏らす者は、このイシドールが命を貰い受ける!」


 場は静まり返った。

 丘の民の実質ナンバー2の言葉だ、さすがに物申す者はいなかった……





(花の民の薬はアルケミネラルだろう)


 カシューの過去視で見たハイキングフクロウのあれだ。

 そしてイシドールは長命のエルフだからこそ命を失わずに済んだのだろう。

 今回の谷の民はヒューマンベースだったから厳しいかも知れない。


 説明の後で一団は進行を再開。

 遅れを取り戻すハイペースで最後の野営地へ何とか日暮れ前に到着した。


「さて今夜は何が起きるのだろう……」


 寝ずに待つ人々を尻目に今夜の不思議現象は中々発生しなかった。


「ふぁあ、流石にもう眠いぜ……」


「あらあら、私も限界です……」


 最初にピスタが俺にもたれて寝落ちしたのをキッカケに俺達も次々と寝てしまい全員が寝落ちした深夜に、それは起きたのだった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ