虚舟
カシューの金眼について怒っているハルティス代表のヘカタが出てきた。
丘の民の中でも長寿らしいがエルフだけあって見た目は人間の50代ほどにしか見えない。
いきなり攻撃して来たらどうしよう。
その時は、やるしかない……のか!
(一応、魔眼もスキルも準備しておこう)
さて、どうなるのか……
「……くすくす」
「……失敗、失敗」
「それにしてもデスリエさんの魔法も、また凄くなったよね」
「いえいえ、ヘカタさんの魔法こそ勉強になります」
談笑……
喧嘩はどうなったんだよ?
しかも一応夫婦なのに敬語とか……
「あ、ヘカタさん彼らがラパからの客人です」
「ああ、そうなんだね、ええっと問題は金眼の……」
(来た! やるしかないのか?)
その時こそこそと話していたペカンとクコが動いた!
そしてカシューを前へ押し出したのだ。
やはり付き合いの浅い彼女らからすればカシューよりもハルティス代表を優先するのか?
俺は体中へ魔力を流し……いや、止めた。
「おお、これなら良いですよデスリエさん」
「おや、カシューさん似合ってますね」
「へ?」
「んぁ、クコがくれたなの」
何とカシューの頭には川の民の魔吸具が被せてあった。
ペカンとクコが、こそこそと話していたのは、この為だったのだ。
疑ってしまって申し訳ない……
カシューの金眼は確かに問題だ。
ただバビロニーチにハルティスがカシューを匿ってると思われなければ、それで良いのだと……
では、なぜ2人は喧嘩になったのか?
「デスリエさんが別人だったからさ焦って怒鳴ってしまって、すまなかった」
「いえ、私が山の民と合った直後に行ったのが間違いでした。こちらこそすみません」
と、ここでヴァルトゼが耳打ちをして来た。
「多分、今のは言い訳で本当の理由は歳の事を言われたせいだと思う」
どちらにしてもハルティスにいる間、カシューはマスク姿でいる必要があるのか……
少し可哀想だな。
「クコ、このマスクって加工しても大丈夫かな?」
「……問題……ない」
「じゃ、メルカお願いがあるんだけど上部を切り取って髪を出すのと、口の周りも切り取ってみて欲しいんだけど出来そう?」
(仮面舞踏会的になれば成功だな)
「あらあら、腕がなるわ」
イドリーとファンデラがデスリエ王女とヘカタ代表に、それで大丈夫かと聞いてくれたが目さえ見えなければ良いとの事だった。
「あ、あの! 失礼ですが目が合いましたよね」
「お、おいラッカ!」
これがオーラと言うものなのか直接には話しかけ辛い雰囲気のヘカタ代表にラッカが質問をした。
本当にラッカのメンタルは強い。
すると……
デスリエ王女とヘカタ代表が顔を見合わせて微笑んだ。
「あんなに沢山の目があるのは初めてだったので驚いたよ、長く生きてると初めてが減って来るのでね」
久々の初めてに胸が高鳴って喧嘩どころではなくなって理由を知ってそうなデスリエ王女に聞く方を優先したのだと……
ゆっくり話を聞きながら、ダンジョンを修復しながら出て来たのだと……
「アーモン君の、お陰ですよ本当に、ありがとうございました」
丘の民モードのデスリエ王女から丁寧なお礼を言われた。
「いろいろな魔眼がある、この目も、また珍しき魔眼の一つではあるのだけど……」
時に民を守る要となるかも知れない魔眼ゆえ詳細は勘弁して欲しいとの事だった。
ヴァルトゼとファンデラは、その言葉にウルウルしていた様にも見えた。
さっきまで歳の事でコソコソ話をしてたのが嘘のようだ。
前々から思っていたがヴァルトゼは超単純みたい。
その後はイノウタがヘカタ代表に再度謝るわ、デスリエ王女に嫌みを言ったものの丘の民モードだから、あっさり謝られて逆に平謝りし直すとか……
「あらあら、イノウタいつも通り大変ね」
とのメルカの呟きにハリラタで、どんな生活してんだよ!
と同情したりしてるうちに迎えの虚舟と呼ばれる乗り物が到着した。
普段は馬車を使うんだけど雪の時期だけ魔法を使った御神輿的な見た目の虚舟で運ぶとの事だった。
シンプルな造りだったのでイマイチ御神輿感は薄いが上に鳳凰を乗せれば、それらしくなりそうだ。
(そうだ! もし乗せれるなら雪面鳥の像を乗せよう)
などと日本の祭を思い出したりしつつ出発した。
速度は歩くのと同じだったので俺達も後から連なって街まで帰ったのだが帰る間中、疲れ果てたイノウタが……
「アーモンがいて良かった……」
「アーモンが居なければどうなっていたか? あー恐ろしい」
なんて呟きながら俺の側を離れなかった。
どっちかと言えばペカンの千里眼とかピスタやラッカの魔眼のお陰だと思うんだけど。
俺は、みんなに繋いだだけだから……
「やばいわ」
「やばいぜ」
「……やば……い」
「やばいよー、です」
「んぁ?」
マフラーウルフの毛皮に花の民装束の二重スカート、そして川の民の魔吸具。
俺的にはシュール過ぎるカシューの格好が一番……
「やば可愛い」
令和元年お世話になりました。
来年も、よろしくお願いいたします。




