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憧れの彼女  作者: 「」
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起きてすぐ気持ちが悪くて吐いた。

夢見が悪いなんて軽いものじゃなく、地獄に叩き落された気分だ。

彼が傍に居なくて助かったという思いと、彼が傍に居なくて不安だという気持ちが交差する。

右手にある彼のジャージ、深呼吸するように匂いを嗅ぐ。

……落ち着く。

どのくらい経っただろうか。

呼吸も整い、手足にも力が戻ってくる。

身なりを整えよう。


アプリを開き彼の位置情報を取得。

繁華街と歓楽街の境目、大学から結構離れたところにいる。

アルバイトだろうか?

でも私が上げた鞄が部屋にないから大学だと思うのだけど。

今日は受ける講義が少ないのかも。

触れてくれなくてもいいから声が聞きたい。

向かっちゃおうかな。

あんな夢を見たあとだ、仕事なんか行きたくない。

それに昨日、取り乱したことを誤りたい。


ラインで今日の出勤を取りやめる旨を伝えると出かけるために着替える。

薄目の白いセーターに黒いマーメイドスカートタイプのキャミワンピ。

昔の私なら似合わない選択肢が出来るのもこの見た目のいいところ。

オシャレが昔より楽しい。


駅でもう一度春人くんの場所を確認。

大学に向かっている様子。

どうやら外で昼食を食べるために出ていただけのようだ。

ここからなら私のほうが先に着きそう。

電車に揺られること数分。

目的の大学校門前に立つ。

ちらちらと見られている。

中にはじっと見つめる人もいるけど大抵が男性。

盗み見するほうが可愛げがある。

そろそろだろうか。

スマホから目を離し辺りを見回すと、だるそうな表情で猫背気味な春人くんの姿が見えた。



「春人くん!」



手を大きく振って存在感をアピール。

周囲の視線は気にならなくなった。



「え? 冬乃?」



彼の驚く顔を見れただけでも来た甲斐があるというもの。

すぐに駆けつけて、――やめた。

腕に抱きつこうとした。

またあんな顔をさせたくないし、傷つきたくない。

原因はわからないけれど距離感を測りかねてる。

触れない距離、春人くんの一歩後ろを歩くことにした。



「春人くん、今日なんコマ取ってるの?」

「今日はあと一コマだけ」

「それなら学食で待ってようかな」



手を顎に当てている。

いつもの癖だ、今回は何を考えているのだろう。



「なら迎えにいくから、駅前のスタバで待っててくれる?」

「学食は駄目なの?」

「今はちょっと時期が悪いかもなぁ」



学食に時期とか関係あるのだろうか。

私が居ない間に期間限定とか?

スイーツビュッフェでもないんだから、そんなわけないか。



「なにかあるの?」

「あぁ、いや……」

「春人くんにしては歯切れが悪いね」

「ほら、高橋遊の影響が出てるんだよね……。だから二人でいると冬乃にも陰口叩かれるんじゃないかなって」

「……ごめん」



あやすように頭を撫でてくれる。

罪悪感を覚えるのに、嬉しさも湧く。

複雑な心境。

線引が曖昧になる。

行く道を標してほしい。

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