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憧れの彼女  作者: 「」
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失敗したなぁー。

焦りすぎたのかな。

いや、一度膨らんだのだからあのまま出させて上げればよかった。

喜んでもらおうと思って口でしたのも良くなかっただろうか。

働き始めは失敗続きだったけれど慣れてきてからはそんなことも無かったはず。

何度か春人くんにもしてあげたことがあった時は、口の中にたっぷり出してくれて嬉しかった記憶がある。

舌の使い方やストローク、昔より巧くなったからこそ気持ちよくなってほしかった。



「ぶくぶくぶく~」



彼は頭を洗っているので浴槽は広々。

顔を半分だけ出して彼を見つめる。

右肩があまり上がっていないので洗いにくそうに思う。



「あばばぶあばべでであべぼぶが?」

「流石に頭だけは自分で洗わせてくれ」

「よぶわばっだべ」

「冬乃の考えてることはある程度わかるよ。あと、いい加減普通に話せ」



以心伝心だ、嬉しい。

彼は頭を流し始めているのでこちらを見れていない。

ニヤけた顔を見られずに済んでほっとする。

春人くんから泡が綺麗に流れ、光に照らされた髪は赤みが増していつもとほんのり違う雰囲気を醸し出す。

ざばぁっと音を立てながらお風呂を脱し彼の元へ。

ボディソープを泡立てて自分の手に溢れるように盛り、春人くんの胸に広がるように塗る。

ぽたぽたと落ちる泡がちょうどいい感じに彼のシンボルに落ちた。

先に一番汚れるところを丁寧に洗う。

普通の男性ならここで盛り上がってくれるところだけど、その気じゃないといった彼のは反応はしてくれるものの下を向いたまま。

お尻の方も洗ってあげたいのだけど、普段使ってる椅子と形が違うため困難なので諦める。

無料でこんなことするのはもちろん好きだからに他ならない。



「何してる?」

「身体を流してあげようと」



春人くんの表情が曇る。

なにかした?



「ちがくね?」

「え?」



首を傾げる。



「冬乃、がちで言ってる?」

「これじゃないの?」



会話を続けながらも手は止めておらず、自分の胸にもたっぷりと泡を乗せており滑りをよくするために自分の股にも塗っておく。

頭を抱える春人くんを見ながらも彼の太ももに乗り、密着して胸をスポンジ代わりにして彼の身体を洗う。



「やっぱちげぇって、風俗の洗い方だろこれ……」

「これしかやり方わかんないし」



男性が喜ぶことに特化したモノ。

研修で教えられてお客相手に練習しつつ徐々に身になった動き。

洗体は胸が大きいことで下手でも評判はよかったように感じていた。

マットプレイはもっと苦手だけどまずまずの評価。

でも春人くんが喜んでくれない理由が理解出来なかった。


彼と付き合うと同時期に私は風俗で働きはじめた。

初めての彼氏で交際経験のない私はどうしていいのかがわからない。

お店にくる男性はそもそも私にそういうことを期待してやってくるのだから喜んで当たり前。

考えるまで気づかなかった。

春人くんの彼女だというのに彼の求めるものがわかっていなかった。

男性だからこういうことが好きなんだと勝手に思っていた。

彼氏とお客さん。

同一視していたのかもしれない。

いや、今までそんなことなかった筈だ。

自分の変化に戸惑う。


胸で擦るのをやめて、そのまま向き合う。

今の私は酷い顔をしているだろう。



「春人くんがして欲しいことない?」



思い切って聞いてみることにした。

彼が喜ぶことならなんだってしてみせる。

私がしてあげられることは少ないと自覚してしまった。



「一緒にいてれるだけでいいよ」



彼の泡だらけの手が頭の上に乗る。

私の方が年上なのに子供扱い。

出会った頃は私のほうがお姉さんとして頼られたことも多かったと思う。

今では真逆。



「本当に? それだけでいいの?」

「うん」



本心だと言うように春人くんは力強く頷く。

彼は甘えてくれと言った。

なら、



「キスして、おでこじゃなくて」



目を閉じる。

口に意識を集中。

だけどいつまで経っても望む感触が得られない。


どうして?

恐る恐る目を開くと彼は顔を伏せてこちらを見ようとしない。

噛み締めて辛そうに見える。

なんで?

なんでそんな顔するの?


目頭が熱くなる。

視界がぼやける。

光が屈折して眩しい。

なにも見えない。


わけもわからず浴場を逃げるように出た。

彼の私を呼ぶ声が聞こえる。

床を濡らしながら呆然とリビングの端で立ち止まり、崩れる。

流れる涙は決壊したかのように拭っても拭っても消えない。



「……冬乃」



掛けられたバスタオル越しに抱きしめられるとわかる。

けれど寒い。

いつもの温かい気持ちになれない。



「なんで?」

「ごめん」

「謝るぐらいならキスしてよ……」

「ごめん」

「どうして!?」

「言えない」



この家に戻ってきた時にはまた春人くんとの幸せな時間が続くと思っていた。

違和感の正体。

春人くんが私を拒絶している。

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