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憧れの彼女  作者: 「」
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やばかった。

普通のキスはまだ耐えられた。

手を繋ぐことは優しい気持ちになった。

彼女に触れることも触れられることも嬉しいと思う。

けれど薄く口を開いた冬乃を見た瞬間。



「……気持ちわるっ」



吐き気がした。

我慢できないほどではなかったが、たまらずトイレに逃げきた。

脳裏に浮かぶのは今日のこと、冬乃の実家でみた写真の数々。

冬乃ことは大好きだ。

けれど心のどこかで穢らわしいと思ったのだろうか。

潔癖症ではない。

散々言葉では彼女は普通の女の子、ちょっと特殊な立ち位置にいるだけだと言ってきた。

実際その通りなのだろう。

けれど、初めて拒絶してしまった。



「……はぁ」



冷たい水で顔を洗い気持ちを切り替える。

彼女を支える。

その気持ちに嘘偽りはない。

タオルで顔を拭き、リビングに戻った。



「おかえり」

「悪いな」

「いいよ、別にぃ~」

「いじけるなって」



膨らむ彼女の頬を突く。



「今日からまた一緒だろ?」

「うん、そうだね。次はちゃんと可愛がってね?」



瞳を潤ませ艶やかな表情。

いつもと違う見た目。

少女のようだった彼女は大人の雰囲気を醸し出す。

思わず目を背けた。



「……おう」

「拗ねるよ」

「冗談だって」



誤魔化すように冬乃の頭を撫でてからキッチンへ向かって夕飯の準備を始める。

少し遅くなってしまったが時間はもう8時を過ぎている。

冷蔵庫を開けると、すっからかん。



「冬乃」

「なに?」

「どこか食べに行こう」



ジト目。

呆れられてしまった。



「俺も家にあんまいなかったからさ。備蓄がなかった」

「しょうがないよね。いつものファミレス?」

「食べたいものある?」

「んー。おまかせするー」



一番困るやつだ。

ただ冬乃の場合は本当になんでもいい時にしか使わないから本当に困る。

何を作っても喜んでくれるし、どこへ連れて行っても喜ぶ。

俺の甲斐性がないのか、冬乃がいい女すぎるのか。

どっちもだな。

出前でもいいけど、それは俺の気分じゃない。

いつもの候補を浮かべ消していき、結局選んだのいつものファミレス。



「ここに来るのも結構久しぶりだよね」

「言われてみればそうな」



最後に訪れたのは夏休み前ぐらいだから少なくとも2ヶ月は経っている。

自炊してるからってのもあるが、俺の手が回らない時は冬乃が出前頼んでくれていたり、彼女の行きたいお店に行ったりしていた。



「何にする?」



冬乃はメニューを開きながらこちらに見せてくる。

彼女は少食なので基本的に注文のバリエーションが少ない。

残してもいいのでは? と聞いたことがあったが、残すのは許せないらしい。

足りなければ俺から取っていくし、多ければ俺が食べる。

いつもの光景。

まだまだ問題は山積みだけど、ようやく平穏な日々が帰ってきたのだと安心する。

帰宅した後は二人して泥のように眠った。


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