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憧れの彼女  作者: 「」
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何にも考えたくなかった。

けれど気持ちとは関係なく親のこと、春人くんのこと、宮下君と香ちゃんのこと、仕事のこと、……高橋のこと。

ぐるぐると浮かんでは消えてが繰り返す。

そうして何度目かの朝。


暗い感情だけが私を支配する。

ちっぽけな復讐を思いついた。

私にとっては、たったひとつの冴えたやりかた。

他人からすれば、たったひとつの愚かなやりかた。

けれど女である私にしかできない復讐だ。

春人くんを困らせ大学内で誹謗中傷を受けさせる。

母に大事に育てられたけれど風俗で働く親不孝者。

原因は私の弱さだけど、こんなことになった大きな要因はアイツだ。


高橋遊は私に歪んだ愛を向ける。

だけどアイツは私のことを理解していない。

大事なものを傷つけ、隠し通したかった事実を晒した。

あの男が欲しかったのは自分の言いなりなる女だ。

自分の理想を押し付けて人形遊びをしたかっただけだ。


私は弱い。だけど、ただ言いなりになるような少女じゃない。

ハメることしか考えてない男を私がハメてやる。


そう決めた私の行動は早かった。

すぐに美容室の予約を取った。

春人くんが好きだと言ったこの黒髪。

今はいらない。

明るい髪、腕のいい美容室で綺麗な亜麻色に染め上げ。

メイクも髪色に合うように変えた。

もう9月の末。

露出の激しい服装はもうお店に並んでいない。

男に媚びるようなボディーラインが出るように、ソリッドハイネックのトップス。

胸を強調するサスペンダースカートをチョイス。


見た目まで変える必要はないのかもしれない。だけど、傍から見れば私だと気づかないだろう。

少女のようだった見た目は、完全に遊びを覚えた年相応の見た目になった。

服装を大人なものに変えれば典型的な風俗嬢であることを誤魔化せない出来栄え。

自分でも少しドキドキした。

私の本質は少し悪い子かも。


準備を終えると私はホテルに戻り、前に連絡先と渡されていた名刺を取り出す。

大学2年で名刺などと自己顕示欲の塊。

……馬鹿な男。

ホテルの備え付きの机。

眼の前に鏡があり、自分の姿が映る。

ニヤついてた。

嫌な笑みだと思う。


机の上、プライベート用に使っていた携帯は沈黙している。

一週間以上ディスプレイは消えたまま。

もう充電すら切れているかもしれない。

私はもう一台の携帯を取り出し、名刺にかかれている番号を入力する。

待たずして男は電話にでた。



「やっぱり掛けてきたね。冬乃」

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