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憧れの彼女  作者: 「」
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それから語られたのは彼らの中学時代の話。

同じ中学の私は知らない話でもなかった、一つ年上の私には噂程度のことで詳しくは知らなかったし、彼らのこととはわからなかった。

宮下君は家庭環境のいざこざで荒れていた。

当時から宮下君と香ちゃんは両想いだったらしいけど、彼女の言葉すら通じないほどだったという。

本当にそんなことあるだぁーというような話で、宮下君はなにかあれば喧嘩をして大人が相手でも関係なく暴れまわったそうだ。

そんなことを繰り返した宮下智明という少年は浮いてしまうことは当然の結果。

ある日の放課後、流血事件が起きた。

理由は思い出せないほど些細なこと。

野球部の一部と喧嘩になり、宮下君は落ちていたバッドを握り部員の一人を殴ろうとしてしまったらしい。けど、部員が大きな怪我をすることはなかった。

そこでたまたま通り掛かった春人くんが止めに入り、ふっとばされて花壇にぶつかり血が流れた。

もう一人の幼馴染みの姿をみて冷静になりその喧嘩は止まったのだという。

そのまま春人くんは病院に運ばれ数週間入院したらしい。



「白雪先輩ならみたことあると思いますが、アイツの右肩の傷の原因俺なんっすよ」



気になって聞いたことがあったけどはぐらかされたあの傷。

大きく目立つようなものでもないが日頃から身体を重ねる私たちだ。気づかないわけがない。



「打ちどころが悪くて最悪死んでしまうことになったかもしれない。もちろん、だからといっても許されないことだ」



血が出そうなほど拳を強く握る宮下君。

この話は無関係である私に彼に掛ける言葉はない。



「それにあいつバスケ部だったんですけど、あの怪我が原因で右肩あがらなくなってしまって」



合点いった。

しばらくの間、委員の仕事に春人くんは来なかった。

当時は部活があるから忘れていたのかと思っていたけど。

そして久しぶりに会ったら、あんなに頑張って2年でレギュラーを勝ち取りエースなんて言われていた筈なのに辞めていた。

私も応援をしに土日にある試合を見に行っていたし、彼が部活を辞めたことにがっかりした記憶がある。



「俺のせいで部活をやめることになったのに笑って許してくれて、だから俺はずっとあいつの味方をするんっすよ。だからなにかあったら許さないっす」



それ以来、宮下君は大人しくなり、彼を止めることが出来なかった香ちゃんも元気を取り戻したという。

宮下君は春人くんと香ちゃんがいる間は癒やされていたらしい。

話を聞いて自分の彼氏が更に誇らしく思った。

いくら仲の良い友だちだとしても春人くんのように動ける人間は世界中を探しても中々見つからないだろう。

そんな春人くんが私という存在を好いてくれている。



「大丈夫だよ。私は春人くんのこと愛してるから」



私から彼を嫌うことはない。

私から裏切ることはしない。

私から捨てるようなことはしない。

彼が私を嫌うということは怖い。

彼が私を裏切るということは寂しい。

彼が私を捨てるということは死。


身体は生きてるかもしれない。

でも心は今度こそ死ぬ。



ただ彼の邪魔になるようなら、私は喜んで彼のもとを去ろう。

私が願うのは、彼の、春人くんの幸せだけ。

その隣に私がいるのであれば、これ以上ない喜びだ。




それからしばらくして、春人くんがそろそろ戻ってくるだろうからと宮下君たちは自室に戻っていった。



「はぁ~……」



ため息が漏れる。

座っていたベッドにそのまま寝そべる。

いい話を聞いたと思う。彼らの関係性を知れたのも良かった。

だけど胸の奥がちくちく痛む。

彼らは私に秘密を打ち明けた。

けど私は彼らに秘密がある。

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