表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンス・リベリオン 〜念願叶って剣士の世界に転生したのに女子最強。修行ばかりしていたら前世の剣がこの世界のスキルをすべて置き去りにした〜  作者: 天道源


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

第3話 友達の姫は漢らしい

 この世界はなにかおかしい。

 魔物がいるとか、魔窟があるとか。

 それに伴って、姫と呼ばれる女子に対してすべてが都合よく手厚い。

 どういうことだろうか。

 

 図書館やインターネットを使って歴史を遡ってみると、織田信長登場以降から、どうにもおかしくなっている。

 江戸時代に至っては、徳川家が姫集団に良いようにされている。意味がよくわからなかった。大奥ではなく、姫剣士列伝みたいな感じだ。


 だが、それには理由があったらしい。

 それをはっきりと知ることになったのは、小学校1年時のある授業のときのことだ。


     ――


 せいかつの時間だった。

 とある姫子が、先生に指名されてこう答えた。


影野黒子かげのくろこさん。元号、とはなにか知っていますか? 今は何という元号ですか?」

「はい。えっと、令和……じゃなくて、いまは桜景です」


 隣の席の姫だった。

 黒髪の長い、色白の物静かそうな女の子だ。

 

 男子が5人。

 女子が28人の教室内で、聞き慣れた言葉が突然出てきたときには、一瞬、理解ができなかった。だが、はっきりと言っていた。


 ……令和?

 懐かしい響きだ。

 反応したのは俺だけ。

 そしてピンときた。


 影野黒子と呼ばれた姫子を、俺はじっと見つめる。

 彼女は俺の視線に気が付くと、どこか居心地が悪そうに椅子に座りなおした。


     *


 放課後になった。

 俺は昇降口で一人で靴をはいている影野さんに話しかけた。


「なあ、影野さん」

「え、あ、はい、なんですか」


 一年生とは思えない落ち着いた話しぶりだ。

 俺は確信した。ゆえに質問を口にした。


「新選組の局長って土方だよね?」

「え? 新選組?」

「そう。局長。一番偉い人」

「たぶん、近藤じゃないかな……」

「そっか」

「う、うん」


 不安の色の宿る目を見つめて俺は言う。


「この世界に新選組はいないらしい」

「……あっ」


 驚きが答えだった。


     *


 俺たちは学校から出て、帰り道の途中にある小さな公園のブランコに座った。

 他人に話を聞かれることを避けるためだ。

 どんな話なんてことは、お互いに確認するまでもなかった。


 影野さんは伏し目がちに言う。


「山田くんも転生した人なんだね……」

「ああ、そうみたいだ」

「じゃあ、トラックにひかれて?」

「……なぜわかる?」

「だって、そういうものでしょ」

「そういうものなのか……」


 転生にはルールがあるようだ。

 俺は無知すぎる。


「いつ目覚めたの? ぼくは、先週なんだ。だからまだ混乱してて」

「俺は1才だ」

「そうなんだ――って、1才!? 1才から、こんな世界で漢として生活してるの!?」

「……? そうだが、なにか問題があるのか?」

「いや、ないけど、このゲームの世界って、漢の立場がやたらと弱いというか、まあ、設定上は仕方がないんだけど、それでもちょっと無茶苦茶なところあるじゃない? ぼくは姫だったからよかった……わけじゃないけど、でも漢はつらいよ」

「影野さん」

「なんかくすぐったいね……名前も鳴れてない」

「なら呼び捨てにするか?」

「うん。呼び捨てでいいよ。ぼくもそうする」

「わかった。じゃあ黒子」

「下の名前なんだ……」

「一つ確認させてくれ。黒子は今『ゲームの世界』っていったのか? この世界はゲームの世界なのか?」

「うん、そうだと思う。ここってシリーズ化されてる人気ゲーム『プリンス・リベリオン』の世界なんだよ」

「きいたことがない」

「まあ、大衆的なゲームしかしない人は知らないと思う。住み分けがあるし」

「そもそもゲームをしなかった」

「ならなおさら知るわけがないよ。時系列的には一番人気が出た3作目かな……。オンラインではないんだけど、自分が育てた姫でランク戦ができたり、純粋にダンジョン攻略の深度を競い合う各種対人戦もあつくて――」

「――そうだったのか!」


 すべての謎がとけたときの気持ちよさが去来した。

 びくっとした黒子の手を握り、俺はぶんぶんと振った。

 

「ありがとう! ようやくこの世界の違和感がとけたよ!」

「そ、そう? ならよかった……」

「これからも色々と教えてくれないか? 俺はそのゲームのことをまったく知らないんだ。基礎知識もないから、困っている」

「そ、それはそうだとおもう。とんでもないもの、この世界のルールは――あの、手、手」

「ああ、すまない。姫の手を一方的に握るなんて、この世界の漢的にはご法度だったか」

「そうなんだよ……姫のほうが権力強いから。でも、いいよ……ぼく、前の世界では男だったから、全然気にならないし。むしろどうやって姫として暮らしていこうかな……魔窟にも行かないといけないのかなあ……」

「なに? 男?」

「うん……だから、ほんと、びっくりしちゃって。でも頑張らないとね。せっかくの第二の人生なんだし。高校生で終わったなんて残念だったし」

「ああ、頑張ろう。ちなみに俺は35歳サラリーマンだった」

「す、すみません、ため口で……すごい大人ですね……」

「やめてくれ。俺たちはもう友達じゃないか」

「そ、そう? 友達……友達……へへ……友達かぁ」

「……? どうかしたのか」

「い、いや。じゃあ、この世界のレクチャー、今からする?」

「ああ! 頼む!」


 こうして俺はこの世界での初めての同士を得た。

 まさか高校生まで続く縁になるとは思わなかったが、ありがたいことだ。


 では、この世界のルールとやらの説明を受けよう――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ