バイルエ王国との外交4
とりあえず晩餐が終わり使節団が迎賓館に戻ったのを確認したらグランバルさんをはじめ主だった人が集まって集めた情報を纏めます。
「武内君、この晩餐はそんな意味があったのを知っていたのか?」
そう言って友好の晩餐だと思っていたようで月山部長が少し驚いています。
「まあとりあえず自分も知りたい事とか疑問が幾つかあったので、日本の酒の美味しさで酔わして少しでも知りたい事を聞き出せればと思ってたので」
「そうか、私は余計な事とか言ってないか不安になってきたな」
「まあ大丈夫ですよ。ドグレニム領の日本人は現在不満もあまり溜まっていないようですから、雑談程度なら全く問題ないですし、むしろドグレニム領の日本人が今の生活に不満を持っていないと相手に知ってもらえば下手な引き抜きをしようとする気も起きないでしょうから」
「そうか、それならいいんだがな」
「まあむしろ今回の晩餐の話や土田に持たしたビールの話とかがバイルエ王国内に居る日本人に伝わるとドグレニム領に来たいと言い出す人が出てくる可能性が高いですけどね」
「そうか、ただそれだと問題が起きるんじゃないか?」
「まあその際、ドグレニム領に行きたいと言う日本人を引き止めるのはバイルエ王国側の努力次第って事で、そうなると交易を積極的にせざるえなくなるでしょうね」
そう言うと月山部長は安心したようです。
グランバルさんも最初に伝えてあげれば良いのに何にも言わないから月山部長が心配してますよ。
そして、全員から聞き出した情報を全員で出し合ってまとめていきます。
「マサト、とりあえずお前が得た情報はどんな情報だ?」
「そうですね、前回の戦争の様子がバイルエ王国内ではかなり曲解されて伝わっている事、ほぼ確実に和平に舵を切ったけけど、建前と本音が違う気がする事、あと自分に第4王女との婚姻の話を持ってきたので断ってグランバルさんとこの息子さんをおススメしておいた事、あとついでですが土田が意外とまともな事でしょうか」
「そうか、詳細は後で聞くとして、なぜ俺の息子を第4王女の婚姻相手におススメしたんだ?」
「まあ、年齢差が丁度いいですし、バイルエ王国とドグレニム領の結びつきを強くするなら悪い話ではないですからね。まあ一旦持ち帰って国王と相談するって言ってましたから今すぐとかではないと思いますよ?」
「まあいい、それは今度話をしようか」
なんかグランバルさんがご機嫌ナナメです。
その後、それぞれが聞いた話を纏めて現在のバイルエ王国状況や今回使節団を送ってきた目的などを推測します。
「まあ実際問題として攻め込んで血を流して得る物より友好関係を結んで得る利益の方がバイルエ王国の為になるとの結論に至ったと言ったところですかね」
「ほんとにそう言いきれるか?」
「そうですね、バイルエ王国の最高戦力の土田が完敗だったと公言しているようなので土田を上回る戦力を手に入れない限り再度の進攻は無いでしょう」
「そうか、だが本音はどう見るんだ?」
「それが今一見えてこないんですよね、わざわざ日本人を連れて来る理由もありませんし、何考えてるのか、何を狙っているのか・・・」
「やはり奴らの狙いは分からんか・・・」
「そうですね、可能性の話ですが、強行偵察の意味合いもあるかもしれませんね」
「強行偵察だと?」
「はい、バイルエ王国は交戦派と和平派が居るようですから、一度使節団を派遣してこちらの内情を探るってその結果で今後の方針を決めるとか?」
「だが、使節団を送っておいてその直後に戦争を吹っ掛けるとか流石に聞こえが悪いだろ」
「戦争なんて勝った方が正義ですよ。歴史は勝利者が作る物ですから」
「そう言うが、そんなことをしたら隣国も日本人を求めて戦争を起こすぞ」
「まあもしかしたら、それが狙いだったかもしれませんね」
そう言うとグランバルさんをはじめ全員が怖いこと言うなと言わんばかりの顔でこちらを見ています。
「まあ今回が偵察だとしたら間違いなく和平に舵を切ると思いますよ。グランバルさんが打ち合わせ通り今回の料理、食材、お酒は自分が提供したものだと使節団の人に伝えてくれていればですが」
「それは大丈夫だ、歓談したほぼ全員に料理や酒、風呂などを自慢話がてら話したからな」
「じゃあ大丈夫でしょ、ドグレニム領を攻め落として占領したとしても自分が手に入らなければ欲しいものは手に入らない、ならば攻め込んで血を流す割に得る物が少ないですからね」
「まあ確かにそうだが、ドグレニム領を占領したらここに居る大人数の日本人を確保出来るんだぞ?」
「そうですね、ただ今回の晩餐とグランバルさんの自慢話で自分以外のここに居る日本人が霞んで見えるでしょう、なら狙うなら自分、でも自分を力づくで確保することは難しい。なら表面上だけでも友好を結んで利益をえる方が得じゃない?」
「自画自賛に聞こえるが・・・。まあ確かに筋は通っている」
「あとグランバルさんにお願いしたいのはバイルエ王国とウェース聖教国と隣接する国の情報ですね。軍備を拡張しているならそれが防戦の為か進攻の為か、相手は何処を想定しているのか?」
「バイルエ王国とウェース聖教国じゃなくて近隣か?」
「はい、念のためです。そこから両国の意図が見えて来るかもしれませんから」
「わかった、とりあえず手配をしておく」
「あとは、明日以降の交渉はどうするかだが・・・」
「それはグランバルさん達の仕事でしょ?まあ話がまとまれば、道づくりとそれを塞ぐ位置への城壁建設は自分が言い出したからやりますけど、その他の交渉やらは自分の出る幕ではないですし」
「いや、マサトが用意する日本の品が交易の主流だぞ、それを出る幕無いで丸投げか?」
「そこはグランバルさんの交渉力で元来ドグレニム領にある品を交易の主流にしてその中に少しずつ日本の品を売る様に話を持って行ってもらわないと」
「このドグレニム領にどんな特産があるって言うんだ?有り余っているのは森と魔物ぐらいだぞ。」
「じゃあ魔石とかですかね?」
「簡単に言うな、魔石はドグレニム領でも需要があるんだ、輸出するほどの余裕はないぞ」
「じゃあ自分が穀物を卸しますんでそれを売ればどうですか?」
「バイルエ王国も穀物には困っていないだろう、それだけじゃ交易にならん」
「そうですね、じゃあ後は日本人が現在作っている品を輸出してはどうですか?」
「それは何だ?」
「その辺は月山部長が詳しいかと思います」
月山部長に話を振って現在日本人が作っている物にどのようなものがあるかを確認します。
「石鹸に洋服や絵本ぐらいしかまだ形になってませんよ。その中で数が用意出来るのは石鹸だけです」
そう言って月山部長は現状輸出するようなものは石鹸ぐらいしかないと言います。
「マサト、これじゃあ交易にならんぞ」
「そうですね、この前話してたジルクスパイダーの糸を作る製糸工場が出来れば交易の品の足しになるんですけどね」
「ジルクスパイダーの糸かそれならかなり売れはするだろうがそれだけではな・・」
「因みに、ロータンヌ共和国の他の領土は特産品あるんですか?」
「まあそれは、鉄に宝石、布や書物に珍しい果物なんかもあるがそれがどうした?」
「だったら、他の領主の所から輸入をしそれを転売するか、商人を呼び込むか」
それに対しては月山部長が話を引き継いでくれます。
「それならば、プレモーネが物流の中心になり、人や物が集まり商売や取引を行う場所になる」
「そうですね、それなら他の領主も利益が出るから文句も少なく横やりも少ないですね」
そう言って月山部長と自分が盛り上がってますが、グランバルさんは渋い顔のままです。
「マサト、他の領主の所との交易って言うが、魔物の活性化でそっちの交易も途絶えがちなのを忘れてないか?」
「そうでしたね、じゃあまずはロータンヌ共和国への道の前にそちらの道を整備拡張しちゃいましょうか?その間にジルクスパイダーの糸を作る製糸工場を早急に立ち上げてこちらの体制を整える」
「おい、待て、勝手に道の拡張、整備なんて、そんなことをしたら何を言われるかわかったもんじゃないぞ、まずは相手に話を通して了解を得てからだ」
「あ~、その辺はグランバルさんが知らぬ間に日本人が暴走して勝手に道の整備と拡張をしたって事でよくないですか?」
「武内君、それはまずいだろう、グランバルさんにだって立場ってものがあるんだから」
うん、月山部長にたしなめられました。
「いや、それならなんとでも言い訳はできるな、どうせ他の領主の所にも日本人は居るだろうが扱いに困っているはずだ、その日本人が暴走した結果だとしたら他の領主も自分の所に居る日本人が同様の事をするかもしれんから強くは言えんだろ」
「じゃあ決まりですね、まあ道の整備拡張は領主が止める間もないほど手早くやりますんで、言い訳はよろしくお願いします」
「そうは言ってもかなりの距離だぞ?マサト1人で出来るのか?」
「1人では無理ですし、人手はありませんが、ゴブ手は沢山ありますんで、ミノ手もあることですし、人知れず、短期間で終わらせますよ」
「それなら大丈夫そうだな」
そう言って悪い顔をしている自分とグランバルさんを見て月山部長がやれやれと言った感じです。
うん、男ってこういう悪さとか悪戯じみた事、結構好きなんですよ。
「さて、それはそうと、うちの息子に第4王女をと言ってくれたらしいが、本当に実現したらどうしてくれるつもりだ?」
「その際は、おめでとうございます。と言わせてもらいます」
「お前、事の重大性を理解してるか?」
「まあ王族との婚姻ですからそれ相応の受け入れ態勢など面倒事はあるでしょうけど、それだけでしょ?」
「ほんとにそう思っているのか?ロータンヌ共和国内に居る他の領主達が黙ってないぞ。最悪、他の領主と険悪になる可能性もあるんだぞ」
「まあそれはある程度は仕方ないでしょ。ドグレニム領がバイルエ王国の後ろ盾を得て何か企むとか邪推する人もいるでしょうし」
「それが一番問題だ、場合によってはドグレニム領がロータンヌ共和国内で孤立する事になるんだぞ?」
「まあその可能性もありますけど、さっき話していたプレモーネが物流の中心になれば他の領主も自分達の利益の為に、そうは言ってられないでしょ」
「そうならずに孤立したら物流の中心どころでは無くなるぞ」
「そうならないように自分が押し付けたんじゃないですか。大々的に宣伝すればいいんですよ、暴走した日本人が勝手にバイルエ王国との婚姻の話を纏めてしまったって」
「お前、そんなことで他の領主達が納得すると思うか?」
「納得も何も、勝手に道は拡張整備するし、進攻してきたバイルエ王国とは戦争するし、グランバルさんでも御しきれない、でも莫大な利益をもたらす日本人が勝手にやった事ですから。実際道を拡張して整備したら納得せざる得ないでしょ」
「それは俺が無能という事か?」
「いえ、無能じゃないからこれぐらいで済んでいるんでしょ。無能な人だったらもっとやりたい放題してますよ」
そう言うとグランバルさんはまだ何かやらかそうとしてるのか?と言う顔でこちらを見ます。
「じゃあ他の領主たちがマサトをこちらに引き渡せと言って来たらどうするんだ?」
「自分達で勝手に引き抜きでも拉致でもすれば?失敗した時の報復には責任持てないけど。とでも言っておけばよくないですか?」
「お前はそれでいいのか?」
「まあ、拉致だの引き抜きなどされることはありませんし、普段は大人しくて無害で利益をもたらし、知的で美青年だけど、下手に手を出すと火傷する日本人も居るとわかれば他の領主さんも大人しくなるでしょ」
「まあ確かに、1、2回火傷したら大人しくなるだろうな。ただ無害で知的で美青年はないな。普段からやりたい放題だしな」
「いや、かなり慎重にかつやり過ぎないようにしてますよ?」
そう言うとグランバルさんはニヤリと笑いながら話を進めます。
「まあマサトがそう言うなら婚姻が決まった場合は全部マサトのせいにさせてもらおう」
「そうですね、それに婚姻より交易が始まるのが先ですから、交易を止めて日本の品が入らなくなったら自分達が囲っている日本人の不満が急速に高まるでしょうから、一旦交易でプレモーネから日本の品を仕入れたらもう交易は止めたくてもやめられませんよ。それでも文句を言うならこちらから止めてあげれば良いだけですね」
そう言って笑っていますが、恐らく自分は悪い顔してるんでしょう。
グランバルさんも笑いながら悪い顔してます。
うん、グランバルさんも話に乗ってきたって事は意外とワルだね・・・。
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