依頼
官房長官さんは天井を仰ぎ見てため息をついていますが、とりあえず自分としては更に頭を抱える事案を伝えます。
「因みに反乱の件も問題ですが、マスコミと接触している日本人の存在も忘れないでくださいね」
そんな自分の指摘に対策室の面々の顔が歪みます。
ですよね、厄介な問題がもう一個あるんですもん。
「それで武内君と言ったか、そのマスコミと接触している日本人は見つけられないのか?」
「現在調査中ですけど多分難しいでしょうね、実際その人が名乗り出るか仲間が話を漏らさない限り調べよう無いですし、仮に判明したとして辞めさせる事も難しいでしょう。 下手したら日本政府の依頼で口止めをされたなんてマスコミに流される可能性もありますよ」
自分の回答は予測出来ていたのでしょうか、深いため息が帰って来ます。
「では、マスコミと接触している日本人が反乱の情報を得てマスコミに情報を流す可能性はどうだ?」
「まあ確実にあり得る事ですね、実際オダ帝国は国土は狭いですが豊かですから間者も隣国に相当数放っているでしょうし、むしろ自分より詳細情報を持っている可能性はありますね」
「そうか、という事はこの件も公表せずに隠しているとマスコミが先に報道して更に面倒になるな…」
「でしょうね、私見ですけど、マスコミに接触している日本人の接触方法次第ですけど、最悪自分のようにゲートを開けるなら政府の公表内容を精査して意図的に矛盾や隠してることをリークする事も出来るので公表するならいっその事隠さずある情報を全部出して、それ以上の情報は現時点では無いと言い切るしかないかと思いますが…」
「確かにその通りなんだが、政治というのはそう簡単には行かんのだよ…。 国内だけならともかく外国の事も考えないといけないからな」
そう言って官房長官さんは再度深いため息をついて天井を見上げ、自分からの報告が終了と判断したのか軽く挨拶をして席を立ち対策室を後にしました。
「武内さん、先程の話ですけど、えらく他人事じゃないですか?」
官房長官さんが帰った後、鈴木さんはそう言って声をかけてきます。
「いや他人事じゃないかって、他人事ですもん、ていうかそれこそ政治家の仕事でしょ?」
「それはそうですけど…」
そう鈴木さんは口ごもってしまいます。
うん、なんか微妙に気まずい雰囲気だな…。
そんな事を思いながらも話題を考えていると、さっきポーションを飲んだ際にえらく興味を持っていたことを思い出します。
「そう言えば鈴木さん、さっきポーションに興味持ってませんでした?」
「ポーション? それはさっき武内さんが飲んでた物ですか?」
「そうですけど、サンプル要ります?」
「はい、それは是非に頂きたいですけど、それはどの様な効果があるのですか?」
「そうですね、さっきも言いましたけど、怪我用、病気用、解毒用、魔力回復用ですね、ただ効能は一律ではなく品質の良い物は高価で取引されてますけど、効果は聞くより使って見るのが良いでしょうね」
「使って見るって…。 そんな事勝手に出来ないですから!」
そんな事を言う鈴木さんに4種類のポーションを5個ずつ渡します。
「武内さん、確かにポーションを受領致しました、こちは分析と効果の実験をさせて頂きますが、何かこちらから用意して欲しいものなどありますか?」
「用意して欲しい物? 欲しい物は以前言った自衛隊装備が欲しいんですけど…」
「それは無理です! もっと平和的な物、食べ物とか日用品とか無いんですか? なんで自衛隊装備なんですか!」
「いやだって日用品には困ってないし、魔物が大量発生した際に火力支援車両的なのがあると助かるんですけど…」
そう言うと鈴木さんは呆れたようにため息をついてハッキリと無理だと言います。
うん、前回オフロードバイクを貰ったし、火力支援車両が貰えないんだったら特に欲しい物は無いよな…。
「それよりも、急ぎで作って貰いたい物があるんだけど」
「なんですか? 先ほども言いましたが可能な物ならご用意いたしますが」
「うん、可能な物…。 社会主義国家の成り立ちとその後の独裁、粛清、そして崩壊を簡単にまとめて貰える? 出来れば絵なんかが付いて社会主義は聞こえはいいけど実際はろくな結末しか向かえないって内容の物。 それも小学生でも理解できるぐらい簡単な内容で本にしたら大体20~30ページぐらいになる程度で」
「そ、それは可能ですが、絵も必要ですか? それに日本語で書いても異世界に人は読めないんじゃないですか?」
「その辺は大丈夫、貰ったものをこっちで翻訳して再度渡すんで、それを本にして貰うから、ただ読む人間があまり文章慣れしてないから簡単な内容と絵で分かりやすくするのは必須だね」
「それは分かりましたが、なにに使うんですか?」
「それは決まってるじゃん、パルン王国とその周辺国にばら撒くんですよ、少しは反乱が下火になるかもしれないでしょ? そのために小学生でもわかるようなぐらい簡単で出来るだけ読んだ人間が社会主義なんてろくでも無いと理解できるようなものが必要なんですよ。 それに反乱が下火になったり終息したら政府としても都合がいいでしょ?」
「確かにそうですね…。 わかりました、早急に作成に入ります」
「じゃあ明後日の昼ぐらいに受け取りに来るんでお願いします。 あと絵の吹き出し部分は日本語が入っているものと空白の物2部用意してくださいね。 それと翻訳が終わったら速やかに製本、それも結構しっかりとした作りのカラーでお願いします。」
そう言うとなんとなく理解をしてくれたのか鈴木さんは頷き、作業指示を出し始めます。
依頼も終えたので、明後日の昼に再度接触する旨を伝えゲートを閉じます。
やれやれ、疲れた。
それにしても官房長官さんまで出て来るとは相当首謀者が日本人だっていう反乱の話は相当頭の痛い問題だったみたいだな。
さてさて、政府はどうするのやら…。
まさに公表しても地獄、隠しても地獄、やっぱりマスコミに接触している日本人の存在が政府としては邪魔なんだろうな。
235日目
微妙にタイミングが悪いのか、バイルエ王国のロ二ストさんから通信魔道具でセロスがやってきたと連絡が来ました。
うん、昨日、日本政府に報告をしちゃった後でオダ帝国の追加情報って…。
間が悪いのか何なのか。
そんな事を思いながら転移魔法でバイルエ王国の王城へ移動しロ二ストさんの執務室に向かいます。
装飾品が適度に並べられバランスの取れた雰囲気の執務室に入るとソファーにセロスが腰掛けお茶を飲んでいます。
「ロ二ストさん、今回はお手数をおかけしスイマセン」
そう声をかけると書類に目を通していたロ二ストさんは笑顔で挨拶を返し、セロスと対面するソファーを勧めてきます。
「それでオダ帝国、ていうかアズチの町に居る日本人の情報は得られた?」
「ええ、多少ですが仕入れられました、ていうかタケウチさん、いえタケウチ様と言えばいいんですかね…。 俺なんかがこんな場所に入るって、あなた何者なんですか?」
「まあ異世界人だけど、ちょっとバイルエ王国の人と仲が良いだけだよ。 とは言えバイルエ王国に属しては居ないけどね。 まあ普通に呼んでくれていいよ」
「そうですか、では仕入れて来た情報ですが、俺の調べた情報によるとアズチには300以上の日本人が居ます。 そのうち何かをしているのは大体100人居るか居ないか、後はただ与えられた環境で生活をしているだけですね」
「何かをしているのが100人か…。 その中で戦闘職っぽいのは何人ぐらい?」
「戦闘職ですか? 正確には分かりませんが大体6~70人ぐらいです。 後の人間は色々と物を作ったりしてるみたいです。 その中でも火薬って言う物には相当熱を入れてるようですね、あとは蒸気何とかっていう物だったり、生活用品なんかの便利な道具ですかね、髭剃りなんかはアズチの町で大人気ですよ」
「そうか、蒸気何とかって恐らく蒸気機関とかだろうね、産業革命でも起こす気かね、それに火薬か…。 火薬の大量生産は要注意だな」
「タケウチさんが言っている事はさっぱり分かりませんが、そんなに面倒な物なんですかい?」
「いや、火薬以外は面倒な物じゃないね、ただし火薬だけは使い方によっては人も殺せるし、応用した武器が数種類は作れるからね。 恐らく意図して火薬を作ってるって事はそれなりの活用方法も理解した上だろうし」
「そうですか、それで日本人のリーダー格みたいなのが居るらしいんですが、名前までは分かりませんでした。 というより日本人の名前が調べても全く出てこないんですよ」
「日本人の名前が出てこない? どういう事?」
「俺の見立てでは町に出るときは異世界人と分からないように偽名を使っているみたいです。 なので行きつけの店なんかも探したんですがどうも調べきれなくて」
そう言ってセロスはバツの悪そうな顔をしています。
う~ん、なんでそこまで情報統制をするのか?
オダ帝国にはそこまでして日本人の存在を隠蔽しないといけない事情でもあるのかな…。
恐らく眉間に皺を寄せて考え込んでいる姿を見て、何か言われると思ったのでしょう。
セロスが恐る恐る口を開きます。
「それでオダ帝国の情報収集ですが、今後も継続するって事でいいですか?」
若干ビクビクしているセロスですが、自分としては恐らくこれ以上調査をしても出て来る情報はなさそうです。
「セロス、オダ帝国の調査はいったん中断して別の所の調査をして貰えるかな? 報酬は今回の分金貨20枚、20万レン、次の調査も金貨20枚20万レンでどう?」
そう自分が先に報酬を提示するとセロスは驚いた顔をし、すぐに次の仕事について尋ねてきます。
流石自分から情報収集の腕を売り込んだだけあって切り替え早いな。
まあその方が話が早くて助かるんだけど。
そんな事を思いながらもセロスに次の調査対象を伝えます。
ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえて来そうな程緊張したセロスが席を立ちロ二ストさんの執務室を後にしました。
流石に今回は危険があるって理解したのかな。
まあセロスなら意外と期待以上の成果を上げてきそうな気がするけど…。
どなたかレビューを書いてくださる猛者は居ませんでしょうか?
と思う今日この頃…。 自分でもこの物語のレビューをうまく書ける自信がありません。
そんな中でも読んで頂き、ブックマーク・評価、また、感想を頂き誠にありがとうござます。
拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
あと、図々しいお願いではございますが、評価頂ければなお幸いでございます。
また、誤字、気になる点のご指摘等誠にありがとうございます。




