人材登用
220日目
宝物庫にあった物の分配は終わっていませんが、土田ならネコババしたり約束を反故にしないだろうと信じ、集合が完了したドグレニム領兵とゴブリン軍団、そして身柄を確保したウェース聖教国の宰相と呼ばれていたグレーム卿、そして大聖堂で襲って来た6人組を連れてゲートで最初に攻略した砦に移動します。
初めてゲートを見るグレーム卿をはじめ6人組は恐る恐るゲートをくぐり、そしてゲートを抜けると自分達が砦前に居る事に驚きの声をあげます。
「タケウチ殿、こ、これは…」
「グレームさんは初めてでしたよね。 転移魔法でゲートを作って移動をしたんです。 これがあれば行ったことがある場所なら一瞬で行けます」
そう説明をするとグレームさんは一瞬驚いた顔をし、その後自嘲気味に笑います。
「ハハハ。 これは勝てない訳だ。 このゲートを使えば一瞬で敵地の要所に兵を送り込める」
「そうですね、敵地の要所や敵軍の後方に兵を送りこむことも出来ます。 でもウェース聖教国が滅んだのはこの力を使ったからではないですよ」
「それはどういう事ですか? この力で一気にキャールに迫ったのでは?」
「いえ、自分達はバイルエ王国の国境から進軍してキャールに行ったんですよ。 敵が進行して来ている情報がキャールにもたらされ無かった原因は領民がウェース聖教国を見捨てていたからだと思いますよ」
「ウェース聖教国を見捨てる? 創造神ネレース様を信仰する総本山である国なのにですか?」
「ええ、確かに領民にもウェース聖教国の国民だという誇りはあったかもしれません。 でも魔物の大発生での被害に加えて食料の徴発などで困窮し、飢えに苦しんでいる状況では誇りより今日の食料をもたらす方を選んだ。 ただそれだけの事ですよ」
「誇りより今日の食料ですか…。 確かに、私もスラムに生まれ飢えは経験しているのに、今の地位に上り詰めた事で、飢えの苦しみを忘れてしまっていたようですね」
「そうですね、グレームさんが領民の窮状を理解し、大聖堂の宝物庫にある金や財宝で他国から食料を仕入れて領民に分け与えでもしたら結果は違っていたでしょうね」
そう、グレームさんと話していると、何故自分達がここに連れて来られ、かつ話に入ってこれず困惑している6人組が騒ぎ出します。
「おい、俺達はどうなるんだよ! 殺すなら殺せばいいだろ!」
そう口を開いたのは、ガタイが良い斧使いの男です。
「死にたいの? 皆さんにはやってもらいたい事があるからわざわざ身柄を引き取ったんですが、嫌ならキャールに送り返して身柄をバイルエ王国に引き渡しますけど?」
そんな言葉を聞いて、警戒気味に魔法使いの男が疑問を口にします。
「私達に何をさせるというのですか? とは言え虜囚の我々にさせる事など、たかが知れていますが、強制労働ですか?」
魔法使いの男は自嘲気味な顔をしながら言葉を紡ぎます。
「まあ強制労働、うん確かに間違ってはいないけど、やってもらう事は簡単な事だよ。 あなた達6人組の実力を見込んで今後ドグレニム領兵の一員として領内の街道警備と魔物討伐をやってもらうから」
「はっ? 私達にドグレニム領兵になれと? それも街道警備と魔物討伐って、監視の目を掻い潜って逃亡するかもしれませんよ?」
「まあ逃亡したら逃亡したでそれまでだし、まあその辺はどうでもいい事だね。 ただドグレニム領兵は街道警備の際倒した魔物の魔石や素材は警備隊の物、その上給金も出るから結構人気あるんだけどね」
「だから俺達が素直に従うと?」
そう呆れた感じで斧使いの男が言葉を発します。
「まあ従う従わないは皆さん次第だし、ただ他国に行っても正規の雇用されるかも分からず、傭兵のように日銭稼ぐよりは安定的な生活が送れるし、働き次第では出世も出来る。 いつまでも根無し草でいるよりは魅力的だと思うんだけどね」
そんな言葉を聞いていた6人組は、今までの不安定な収入や生活と安定した収入と生活を天秤にかけているような感じです。
「まあ今すぐ決めろとは言わないから、よく話し合って考えてみて、根無し草のまま放浪したいなら逃亡すればいいよ」
そう言って6人組を砦の中に連れて行くように兵士に指示をだしてグレームさんとの話を再開します。
「まあ、さっきの6人組もそうですけど、グレームさんにも働いて貰いたいんで身柄を引き取ったんですよ」
「そうですか、それで私に何をしろと? ドグレニム領の領主を一国の王に、いやタケウチ殿を王にしろと?」
「いえ、そんな事はしなくていいです。 やってもらいたいのはこの荒廃した土地の復興と発展です。 そのためにグレームさんには、新たにドグレニム領となった土地の行政などで力を振るってもらいたいんですよ」
「タケウチ殿は面白い事をおっしゃる。 亡国の宰相に占領地の行政をしろと? 領民を煽動して反乱を起こすかもしれませよ?」
「まあその時は叩き潰しますが、反乱は起こさないでしょ? そもそも担ぐ神輿が無いし今更権力に未練もないでしょ? それに反乱を起こす意味も無い」
そんな自分の言葉にグレームさんは不思議そうな顔をして質問をしてきます。
「私が権力に未練が無いとはどういう事ですか?」
「そうですね、1つ前教皇を担いでウェース聖教国の宰相まで上り詰めた事、もう一つは勘ですかね」
「ふっ、ははははは、勘ですか、やはりタケウチ殿は面白い、確かに前教皇を担いで宰相にまでなりましたが、私がそれ以上を望むとは思わないのですか?」
「グレームさんの実力があれば宰相以上を望み上り詰める事も出来たでしょ? でもそれをしなかった。 その時点で権力者になるという目的は達成されている」
「つくづく面白い人だ。 確かに前教皇を担いで宰相と呼ばれるまでになりましたが、つまらない日々でした。 あるのは権力闘争の日々でしたから」
「まあ国の中枢なんてそんなもんじゃないですか? とは言えグレームさんの力を遊ばせておくのはもったいないんで、権力闘争に使っていた力を領民の為に使って見てください。 それこそスラムや飢えなんかが無くなる様に」
「私には拒否権はありません、それは普通なら処刑されるべき人間だからです。 なのに命を救われ力を領民の為に使えと言われたら断る事はできませんな」
そういって笑うグレームさんですが、吹っ切れたのでしょうか、どこか楽し気に笑っています。
「じゃあグレームさんの最初の仕事ですが、砦の守備隊長のラインドさんとその配下の説得ですね」
「説得? どういう事ですか?」
「そのままの意味です。 ドグレニム領の一員となってこの地域を守る為に働くように説得してもらうだけです」
「なんとも、最初の仕事は簡単な仕事ですね。 この砦の守備隊長だったラインドと言えば領民や部下を大切にすると有名な人間です。 私が説得するまでも無くドグレニム領の一員になることを拒みますまい」
そう言って笑いながらグレームさんは兵士に案内されてラインドさん達が隔離されている部屋に向かって行きます。
簡単な仕事か…。
まあグレームさんの言う感じの人物だと思ったからラインドさんを登用したいと思ったんだけど。
グランバルさんには事後報告になるけど今回得た領地はグレームさんに行政を任せて町や村の防衛はラインドさんとあの6人組にさせれば大丈夫だな。
そんな事を思いながら、ゴブリン軍団のうち半数の1000匹とロゼフ、ハンゾウを二ホン砦にゲートを開いて帰還させます。
新たな領地はドグレニム領兵がメインでやらないと完全に併合したことにならないもんね。
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