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最期の奇術師  作者: 山本正純
後編
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 平成二十五年四月五日午後八時。喜田参事官はイタリアンレストランディーノに行き、食事する。現在店内には江角千穂がいる。

 江角千穂は喜田に聞く。

「その後はどうなりましたか」

「その後というのは」

「五年前の宝石店強盗事件。法務省の使途不明金問題。集団誘拐事件の背景にある事件のことですよ」

「何も変わっていません。今回の集団誘拐事件を受けてあの三人が事件に関与しているという証拠が見つかったわけではありません。法務省の使途不明金問題は法務省と朝風前進が共謀して隠蔽しました」

「果たして縦林千春を何のために集団誘拐事件を実行したのでしょう。彼女が事件を起こしたとしても何も変わりませんでした」

「何も変わらなかったけれど、小さな変化はあったようですよ」

 

 喜田は新聞の記事を江角千穂に見せる。

「この事件を受けて横溝香澄が加害者遺族を救済するNPO法人を立ち上げたそうです。小さな変化かもしれませんが、これで多くの加害者遺族が救われるはずです」

「もう一つだけ気になっていることがあります。花菱後六のプロファイリングの矛盾ですよ。霜中凛は取材をアシスタントに任せるくらい自己顕示欲が弱かった。つまり花菱さんのプロファイリングは間違っていたということですよね」

「もう忘れたのですか。プロファイリングの前提は単独犯。犯人が二人以上いれば成立しないんですよ。アシスタントの自己顕示欲が高かったということです。犯罪計画に沿って犯行を実行すれば良かった。だから自己顕示欲が弱い霜中凛でもできた。それだけの話です」

「縦林千春は秩序型の犯人かもしれませんね。無秩序型は行き当たりばったりな犯行をするのなら」

「混合型ですね。もし縦林千春が秩序型の犯人ならあの三人を確実に追い詰めていたと思いますよ。関与を疑わせる証拠も揃え、いざ自分が逮捕されたら、あの三人を道連れにする。そこまでやってもおかしくありません」


 喜田が事件を振り返ると、イタリアンレストランディーノのドアが開き、五人の男女が入店する。

 ポニーテールの女の名前は宮本栞。テロ組織『退屈な天使たち』のメンバーでコードネームはウリエル。その傍らにいるのは黒いスーツにサングラスをかけた四人の男たち。彼らはウリエルの護衛を主な仕事とする親衛隊『鴉』のメンバーである。

 五人の男女の江角千穂が机の回りに集まる。

 喜田はメンバーが揃ったことを確認すると早速話題を切り出す。

「ウリエルとハニエル。そして鴉。君たちをここに呼び出したのは他でもない。仕事の依頼です」

 喜田参事官ことアズラエルは六人に一枚の紙を見せる。そこに書かれていたのは久しぶりな依頼。

 ウリエルとハニエル。鴉。この六人を巻き込んだ新たなる犯罪計画は水面下で進行する。


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