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最期の奇術師  作者: 山本正純
後編
25/27

25

 縦林千春は横溝香澄の頭に銃口を向けながら淡々と供述を続ける。

「私は瀬川左雪殺人未遂事件の真相が知りたくて、刑務所で暮らす霜中凛と手紙のやり取りをやりました。もちろん私と霜中凛との間に生まれた娘についても知ってほしくて。でも彼は真実について語らなかった。最期の奇術師。それが真実。これが彼からのメッセージでした。そこで最期の奇術師を読み返したら事件に隠された真実に気が付いたんです」

「冤罪か」

「違います。彼が瀬川左雪のストーカーになった理由です。あの物語は完璧なマジックを披露したい主人公が怪物に変貌して周囲にいる人々を殺害していくという話。彼は法務省が隠している使途不明金問題を暴くために、彼女の調査をしていたそうです。一人前になりたくて。しかし彼は歯止めが利かなくなり瀬川左雪のストーカーという怪物に変貌してしまった。私は怪物に変貌した彼のことも愛していました」


「なぜ霜中凛を殺害した」

 合田が聞くと縦林千春は開き直ったように答える。

「なぜ私が霜中凛を殺害したと言えるのでしょう。共犯者の横溝香澄が殺したかもしれませんよね」

「霜中凛の爪から皮膚片が検出された。DNA鑑定をすればはっきりするだろう」

「物的証拠があるのなら認めます。私が霜中凛を殺しました」

 縦林千春の態度に合田が激怒する。

「愛し合っていたのではないのか」

「最期の奇術師。あの小説を勝手に絶版にしたから。一緒に書いてきた作品を勝手に絶版にした彼が許せなかった。それだけではない。彼が殺人未遂事件を起こさなければ、千夏は死ななかった。父親として同居していれば、五年前の悲劇は起こらなかった。そのことを出所した霜中凛に話したら、快く協力してくれました」


 縦林千春の態度に激怒する合田に代わり、月影が縦林千春に聞く。

「残りの四人を事件に巻き込んだ動機を教えてください」

「五年前大分県で発生した宝石店強盗事件。私は縦林千冬伯母さんから、あの事件の容疑者としてあの三人が容疑者として浮上していたことを知った。そして私は誓った。あの三人に復讐すると。青空運行会社が運営する夜行バスでバスジャック事件を起こしたのは、容疑者の一人桂右伺郎が就職したと知ったから。おまけに桂右伺郎は最期の奇術師の絶版を快く受け入れた。朝風前進。十一年前法務省が隠す使途不明金問題の張本人である疑惑を霜中凛から聞いていた。朝風前進が使途不明金問題を隠さなければ、霜中凛は逮捕されなかった。喜田参事官は霜中凛を逮捕した」

 

 理解しがたい犯行動機を聞き合田は怒鳴り声を出す。

「それは逆恨みだろう」

「それでも構わない。私は人生を狂わせた人々に復讐したかっただけですから。花菱後六。彼は朝風前進と共謀して使途不明金問題を隠した」

「関係ない喜田祐樹と横溝香澄を巻き込んだ復讐ですか」

 月影が冷静に縦林千春に聞くと、彼女は首を縦に振る。

「愛する者を誘拐してあの二人を精神的に追い詰めるつもりでした。喜田祐樹を解放した理由は殺したい人物ではないから」

 

 着々とSATによる狙撃の準備が進められる中で、縦林千春が間違いを訂正する。

「それと刑事さん。一つ間違っていますよ。まさか横溝香澄に銃口を向けているのが、朝風前進が来るまでの時間稼ぎとでも思ったのですか。花菱後六を追い詰めるために漢書を誘拐したと思っているのですか。違います。私は横溝香澄を殺したいんですよ」


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