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午後五時十分。刑事たちは四つ星ホテルフラワーゴートに集結する。廃墟と化したホテルの玄関の前にはSATが突入の準備が進められる。
ホテルの内部にいる縦林千春は外が騒がしくなったことから察する。
「警察が助けにきたようです。今が脱出のチャンスでしょう」
縦林千春の提案を聞き横溝香澄が首を横に振る。
「ダメ。犯人がどこに隠れているのかも分からないし、もしかしたら爆弾が仕掛けられているかもしれない」
縦林千春は頬を緩ませてから呟く。
「犯人なら殺しましたよ。あなたたちが眠っている間に」
横溝香澄と喜田祐樹は縦林千春が言っていることを理解できない。
「理解できないのなら教えてあげます。私が集団誘拐事件の真犯人だと」
縦林千春は拳銃を取り出し銃口を二人に見せる。
「外に行きましょうか。警察が集結している頃です。警察の目の前で集団誘拐事件を終わらせます」
二人は縦林千春に脅されホテルの玄関まで歩かされる。
五分後縦林千春は四つ星ホテルフラワーゴートの前に現れる。縦林の手には拳銃が握られている。
SATは異変を感じ拳銃の銃口を縦林千春に向ける。
「あの暗号が解読できたからここに来たのでしょう。まだですか。朝風前進は。ここに朝風前進を連れてくるのが要求ですよ」
この場にいる警察官たちは人質だった縦林千春の変貌に驚く。その内交渉役の警察官が縦林千春との交渉を進める。
「朝風前進はこちらに向かっている。馬鹿なことを止めて人質を解放しなさい」
「小学生なら解放してもいいですよ」
縦林千春は喜田祐樹の肩を叩く。
「さあ。ここは危険だから逃げなさい」
喜田祐樹は縦林千春の元から逃げていく。警察官が喜田祐樹を保護するのを見届けた縦林千春は銃口を横溝香澄の頭に近づける。
その時合田警部と月影管理官が四つ星ホテルフラワーゴートに駆け付ける。
月影は集まった刑事たちに事情を説明し、合田警部が縦林千春を囲んでいるSATたちの中心に歩み寄る。
「そこまでだ。そんなことをしても縦林千夏は喜ばない。縦林千春。お前の目的は分かっている」
「面白い。ここにいる警察官の殆どが犯人の正体に気が付いていないようだけどね。暗号は偶然解読できた。そんな馬鹿な警察に私の目的が分かるはずがないでしょう」
「あなたは集団誘拐事件の人質のふりをして霜中を殺害した。それだけではない。集団誘拐事件を計画したあなたは、一連の事件の謎を警察に調べさせようとした。それこそがこの事件の隠された目的。喜田参事官の孫の存在をどうやって知ったのかは分からないが、警察組織上層部の孫を誘拐して劇場型犯罪を装った。マスコミ向けに映像を送ったのもマスコミへのアピール。全ては一連の事件の真相を明らかにするため。そうだろう。縦林千春。この集団誘拐事件は縦林千春による自作自演だった。これが真実だな」
合田が縦林千春に問うと彼女は首を縦に振る。
その反応を確認した後で合田が縦林千春に問う。
「縦林千春。話してくれないか。何があったのか。なぜあなたは集団誘拐事件を実行しなくてはならなかったのか」
合田が縦林千春に聞くと彼女は頬を緩ませる。
「分かっているでしょう。悲劇の物語」




