表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最期の奇術師  作者: 山本正純
中編
18/27

18

 北条は鑑識課の部屋でメモを取る。合田からの伝言を聞き終わった北条は合田に報告を始める。

「このタイミングですみませんが、新たな事実が判明しましたよ。解剖の結果、霜中凛の遺体から睡眠薬の成分が検出されました。おそらく犯人は睡眠薬で霜中を眠らせた後絞殺したものと思われます。それと霜中の遺体が乗せられた自動車からは霜中の指紋しか検出されませんでした。霜中凛の爪から犯人の物と思われる皮膚片が微かに検出されました』


 北条が電話を切る。すると北条のいる部屋に月影が入ってきた。

「司法解剖の結果が出たと聞きましたが」

 月影が北条の顔を見る。北条は椅子から立ち上がり、報告書を月影に手渡す。

 月影が報告書を読んでいる横で北条が話しかける。

「身元不明の人質の身元が判明したのですが」

「その報告は受けていません」

「先ほど合田警部から聞いたんですよ。遺留品の写真に映っている小学生の名前は縦林千夏。人質になっているのは千夏の母親縦林千春のようです。まだ映像との照合が済んでいないので、確証はありませんが。縦林千春の自宅住所も入手しました」

 北条は住所が書かれたメモを月影に渡す。

「神奈川県ですか。しかも横浜市」

「神奈川県警に捜査協力を要請しますか」

「その必要はありません。神奈川県横浜市に喜田参事官がいます。彼に捜査をさせれば済むではありませんか」

「神奈川県警の管轄内で警視庁の刑事が捜査するのはマズいのではありませんかね」

「正確には、彼と行動を共にしているという探偵に捜査協力を要請するということです。千間刑事部長の意見は聞きません」

 

 月影は携帯電話を取り出し、喜田参事官に電話する。

「喜田参事官。月影です。三人目の人質の身元が分かりました。名前は縦林千春。五年前大分県で発生した宝石店強盗事件の犯人による自動車事故で娘の縦林千夏が死亡しています」

『報告をありがとうございます。こちらも何かが分かったら電話しますから』

「電話は切らないでください。その縦林千春の自宅マンションが横浜市にあります。あなたには行動を共にする探偵さんと任意の家宅捜索を行ってもらいたい」

『非公式な捜査ですか。分かりました』

「住所ですが……」

 北条は住所を教えると一方的に電話を切る。


 神奈川県横浜市にいる喜田参事官は電話を切り、隣にいる江角千穂の顔を見る。

「確か君の友人に大分県警捜査一課の刑事がいましたね。五年前の宝石店強盗事件について聞いてください」

「ただの探偵が大分県警捜査一課から情報を聞き出すのは難しいと思います。彼女は必ず規律を守りますから」

「警察組織上層部の私が電話に出て交渉した方が、説得力があるということですか」

「それも厄介です。なぜ警察組織上層部の人間と私が一緒にいるのかを彼女に説明するのも一苦労です。彼女は大分県警上層部からの正式な依頼がない限り動きません。ということで簡単な方に連絡します。大分県で発生した事件なら彼女の方が詳しいでしょう。彼女は学生時代地元で発生した事件を野次馬として追い続けていました。学校ではマスコミ向けに発表した情報を元にプロファイリングを披露したこともあります」

「彼女というのは」

「推理オタクの人気脚本家。テレサ・テリー」

 江角千穂はウインクをしてからテレサ・テリーに電話する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ