表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/572

第84話「それでも家に帰る」

 朽ち果てた納屋は壁に天井を被せただけで、地面は剥き出しの掘っ立て小屋のような感じだ。屋根や壁の板は所々剥がれ落ちていて、あまり長居はしたくないと思った。


「敵は居ないようだな。村から盗んだ家畜や農作物はここに保管していたのか……」

「木箱や麻袋がいくつかありますね」

「村の所有物じゃないのは貰えるみたいだから、一応外に持ち出して調べてみよう」


 俺たちが木箱と麻袋二つを持ち出していると、丘を登ってきた村長と村の男衆がこちらに歩いて来る。最後尾にはシオンとハルの姿もあった。

 俺たちの姿を確認したシオンは、手を振りながらこちらに駆け寄ってくる。



「ハルから聞いたよ。凄かったみたいだな。僕も一緒に戦えば良かった」

「シオンが村に残ってくれたから思い切った作戦が取れたんだ。一緒に来ていたらまた状況は違っただろう」

「そうかな……しかし凄い状態だ。ハルのやつ、今晩は興奮して眠れないだろうな」


 シオンは興奮して眠れないハルに付き合わされるのは嫌だと言って、今晩は別の部屋を用意して貰おうと笑っている。


 ゴブリンの死骸は、凍ったのとかも含めて全て朽ち果てた納屋に押し込めて、後日一気に焼いてしまうらしい。

 俺は絶対に焼き切れないだろうと思ったが、それが村長の判断なので任せることにした。






 平和が戻ったリトナ村では、避難していた村人たちもそれぞれの家に戻り、夕食を作るための窯の煙突から煙が上がり始めた。


「ゴブリンの集落から見つけた木箱と麻袋を調べて分配しよう。シオンとハルも来いよ」


 俺たち六人は、誰も居なくなった村の広場で木箱と麻袋二つの中身を広げた。

 木箱の中には金貨14枚と銀貨112枚が入っている。麻袋の一つには汚いダガーやショートソードといったゴブリンの装備品がいくつか入っていた。

 もう一方の麻袋には毛皮が詰まっていたが、サキさんが広げると酷い悪臭が辺りに立ち込めたので麻袋に戻した。


「まあ、いつも良い物が出るとは限らんわなあ……」



 ティナが魔法で水を出しながらサキさんに石鹸で手を洗わせている横で、金貨7枚と銀貨56枚をシオンの手に渡す。


「いいのかい?」

「二人が居なかったらもっと荒れてたと思うからな。報酬も半々でいい」

「ここにおられましたか……」


 俺たちの所へ村長が麻袋を持ってやってきた。麻袋をサキさんに手渡した村長は深々と頭を下げてお礼を言っている。

 今回は俺がちゃんと名乗らなかったので、サキさんがパーティーのリーダーだと思っているようだ。まあ普通はそう思うよな。



「家畜や農作物まで荒らされてこれだけの報酬を用意してると思うと、何だか受け取りにくいな……」

「いえいえ、この規模の討伐依頼になると領主様が全額負担してくださいますじゃ。遠慮なさらず受け取ってくだされ」


 村長の説明では、依頼書と証拠のゴブリンを確認してもらうと領主が掛かった費用を補填してくれるらしい。それを聞いて安心したので、俺は遠慮なく報酬をもらった。

 そういえば、コイス村ではカルカスのおっさんも自腹で報酬を払ってたよな。


 俺は貰った報酬から半額の金貨48枚をシオンたちに渡した。遠慮するシオンを押しのけて、ハルは遠慮なんかせずに俺から金貨を受け取る。どこまでも正反対の二人だ。

 ハルは何だかんだで五体も倒しているから、受け取る資格はあると思う。



「それじゃあ家に帰るか……」

「今すぐ出れば暗くなる頃には帰れそうね」

「もう帰ってしまうのかい?」

「緊急事態だったんで装備品以外、全部家に置いてきたんだよな」

「そうだったのか……確かにすぐ来て貰わないと、二人では村を守り切れなかったと思う。改めて礼を言うよ」

「まー助かったぜ。魔法の矢も撃たせてもらったしな!」


 シオンは念のためもう一泊してから王都に戻ると言うので、俺たちは来た時と同じようにして馬に乗ると、村の男たちに見送られながらリトナ村を出発した。

 時間はまだ夕方前なので、山道でも安全に走れるのは助かった。

 街道に出ても暫く明るかったのだが、帰りはそれほど急がずに走らせたので、結局王都に着いた頃にはすっかり日も暮れていた。






 俺たちは家の前の森を魔法の光で照らしながら、家の馬小屋まで戻ってきた。


「みんな今日はありがとう。考え込んでいたら間に合わなかったかも知れん」

「気にせんで良い。わしは装備を置いて銭湯に行ってくるわい」


 サキさんは急いで家の中に入っていった。


「さて、着替えてから急いで晩ご飯作らないといけないわね」

「そうですね。ところでこの弓はどうしましょうか?」

「予備の弓としてクロスボウの横に飾っておこう」


 俺たちが家の中に入ると、大慌てのサキさんが階段を駆け下りて、そのまま走って銭湯に行ってしまった。今日は散々馬を走らせたので、白髪天狗を使わないようだ。

 俺たちは部屋で着替えを済ませてから、ティナとユナは調理場に、俺は風呂の準備と馬の世話と、予備の弓を広間に飾ってようやく一段落着いた。



 俺が調理場で吸い物をかき回していると、随分早くにサキさんが家に帰ってきた。


「どうした?」

「臨時休業で銭湯が閉まっとった……」

「もう少しで飯が出来るから、今日は家の風呂で我慢しろよ」

「そうする」


 サキさんは湯沸かし中の風呂にそのまま入っていった。


「銭湯にも休みがあるんだな。掃除とか点検とかあるのかな?」

「そうかもしれないわね」


 夕食が完成して三人で皿に盛り付けていると、相変わらず素っ裸のまま肩にタオルをかけて出てきたサキさんが悠々と広間の方へ歩いて行き、エミリアの悲鳴が聞こえた。


 ……なんで嗅ぎ付けて来れたんだ?






 今、我が家の食卓は非常に気まずい空気が流れている。全てサキさんとエミリアのせいだ。素っ裸のサキさんも悪いが、いつの間にか我が家に忍び寄るエミリアも悪い。


「まあ見られたサキさんは何も減らんし、見たエミリアも何も増えんし、いいじゃないか」

「ええ、まあ、それはそうなんですけど……」

「イチモツを見たくらいで生娘のような悲鳴を上げるでない」

「………………」


 エミリアは全く耐性が無いようだった。サキさんの方をチラ見しては顔を伏せるを繰り返している。俺は暫くその様子を観察していたが、やがて飽きて飯を食うことにした。


 今日の夕食は竜田風の唐揚げだ。何とか工夫してそれっぽい風味に仕上げている。

 野菜の千切りにはいつもの胡麻だれをかけて、俺は頬張った米を吸い物で流し込んだ。

 リトナ村の料理も気にはなったが、やっぱり無理して帰ってきて良かったなあ……。



 やっと飯を食い始めたエミリアに、俺は今日の出来事を報告した。


「いくら何でも駆け出し冒険者の依頼にあんな事実が潜んでいたら堪らんな」

「本来の依頼は達成しているので報酬を貰って帰ってきても良いのですが、何処となくミナトさんに似ていますね。しかしミナトさんたちが即断しなかったら、今頃村は大変なことになっていたでしょう」

「俺らのときもそうだったが、村人の目撃情報は当てにならんな。しっかり調査してない依頼は何かあると思って行動しないと怖いな」



 夕食を食い終わった俺とユナは、ティナが風呂に入っている間に洗い物を済ませた。


「リヤカーでも腰に響くのに、ティナには無理をさせてしまったなあ……」

「そうですね。私の方は遺跡探索の間ずっとでしたけど……」

「あー……様子が変だから荷馬車に乗っててもらったけど、そうだったのかあ」

「それよりも雨の方が最悪でしたね」

「だよな。俺なんかパンツまでびしょ濡れでずっと股に張り付いてた」


 俺とユナはテレポートしてから遺跡に着くまでの道中を思い出してゲンナリした。






 ティナが風呂から上がったので、俺とユナは洗濯物をまとめてから風呂に入った。

 今日はおっぱいの揉み合いっこなどせず、大人しく風呂に入って冒険の疲れを癒している。強行軍ではあったが、村で一泊して帰ってきたかのような疲れ方だ。


 風呂から上がった俺とユナは、バスタオルだけを巻いて部屋に戻った。

 広間ではサキさんがミシンを掛けているのでユナは速足で階段を上ったが、俺は特に気にせずのんびりと部屋に戻った。サキさんも全く無関心だ。


「サキさんほんとに興味なさそうだよな」


 俺はおっぱい丸出しで髪を乾かしながら、鏡に映る自分の姿を見て言った。


「そうなんですけど、こっちはやっぱり抵抗がありますよ」


 ユナもおっぱい丸出しで髪を乾かしながら言う。ユナはしょうがないか……。



 服を着た俺とユナは、ティナとサキさんを誘って歯磨きをしたあと、ティナには先に休んで貰ってから、三人で洗濯物をして外に干した。


「今日はかなり遅くなったな。明日はみんなで寝坊するか」

「そうだの。流石に尻も痛いわい」


 サキさんとは二階の廊下で別れて、俺たちは眠りに就いた。






 翌朝、すっかり寝坊した俺とユナは、セルフ放置プレイを楽しんでいるエミリアの前を行ったり来たりしながら朝の支度を済ませて、朝食の準備を手伝った。

 サキさんも豪快に寝坊して、朝食のギリギリになって起きてきた。


 今日はティナも寝坊したので、朝食は簡単なフレンチトーストにベーコンと野菜のサラダを付けて済ませている。

 俺はユナが淹れてくれたハーブティーを飲みながら、今日の予定を告げた。


「前から思ってたんだが、パジャマが一枚しかないのは問題だよな」

「今の生活だと夜に洗濯するから、一枚なのは問題ね」

「じゃあ今日は三人で買いに行くんですね」


「わしは農家のマウロ殿に昨日の礼でも持って行くかの。結局任せっきりにして出て行ってしもうたからの。それが済んだら家でミシンをやるわい」

「そうだな。ちゃんと礼を言っておいてくれ。ちなみに俺は昼からは暇だな」


「私はパジャマを買って帰ったら、今日は家の掃除をするわね」

「じゃあ私も手伝います」

「じゃあ俺も」


 今日の予定が決まったので、俺とユナで調理場を片付けてから、早速四人で街へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ