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第559話「冒険支度」

 一階の大広間にエミリアを残して、俺とティナ、そしてサキさんの三人はそれぞれの自室で冒険の準備を急いでいる。

 俺はヨシアキから貰ったきわどいデザインの魔法の鎧と、レレから貰ったミスリル銀の大剣、あると便利なハンドアックスを装備してから、防寒用の外套を被った。

 魔法の鎧には暑さや寒さから身を守る機能も備わっているが、見た目が不自然すぎると怪しまれるからな。フェイク的な装備も必要だ。

 ティナの方は一番最初に買ったエプロンドレスに、以前まで俺が使っていたハードレザーの鎧を組み合わせながら、それっぽく仕上げている様子。

 俺の体に合わせて作ったハードレザーの胸当てを装備すると、ティナの胸が成長したみたいに見える。

 これはこれでいい。


「今回はミナトのサーベルを借りるわ」

「うん」


 そういえば、ティナのレイピアは折れて壊れたまま、結局弓と魔法がメインになったから新調もしていなかった。


「弓はどうしよう……俺のカスタムロングボウは壊れたままだったか。まあいいか、邪魔になるし」


 正直なところ、魔法の矢が使えないのなら、もうそこまで弓に拘る気分にはなれない。

 が、ティナは一応弓も持って行くようだ。


「人の目が多い時は、魔法で弓を強化して使うわ」


 なるほど。魔法で強化できるなら持って行く価値はありそうだな。





 一階に降りると、すでに準備を済ませているレレとサキさんがいた。

 サキさんは普段と同じプレートアーマーの下に防寒具を仕込み、ロングソードの魔剣と普通のロングソードを一本ずつ、大型のダガーとハンドアックスをサブウェポンとして装備している。

 よく見るとアストラル光ブレードもぶら下げていた。

 いまいち使い方がはっきりとしない光の剣だが、浄化聖祭じょうかせいさいで活躍して以来、サキさんの標準装備の一つになっている。


「弓と槍はなしか?」

「村の外で暴れるなら邪魔なんでの」


 街道沿いや村周辺の森林地帯は、大型のモンスターが動きにくい状況を作るためにわざと間伐かんばつをしていないらしい。

 なので長物の槍は振り回せない可能性があるようだ。


「どうだい? 結構似合うものだろう?」


 レレは結構まともに冒険者然とした服装をして、ミスリル銀のレイピアを手にしている。

 俺の大剣とは違って、ちゃんと魔法の効果が込められたガチの魔剣らしい。


「空振りしてもね、この刃で生まれた風には殺傷能力があるんだ」


 いわゆる「かまいたち」のような現象が起こるそうだ。

 風の刃はカミソリ程度の威力だが、物凄い速さで切り傷が増えていけば相手を怯ませるには十分な効果と言える。


「嘘でも背負い袋にキャンプ用品くらいは入れて行きたいわね」


 それもそうだな。

 四人パーティーで護衛対象が三人、計七人で移動しているわけだから、それなりの荷物を持っていないと怪しい。


「最悪現地で野宿になる事も想定しておこう。追加の防寒具と適当な食料も欲しいな」


 こんな感じで準備を済ませた俺たちは、テレポーターを使いながら現地まで移動した。





 深い森林に挟まれるようにして存在する一本の街道。

 その街道の脇にある、小さな空地で俺たちは合流した。

 この場にいるのは全部で七人。

 冒険者役は俺とティナとレレとサキさんの四人。

 商人役がユナとエミリアとマリオン・ジャックの三人だ。

 ジャックは久しぶりだな。ユナとはたまに会って話をしているようだが、俺たちとは古代遺跡の探索以来になる。


「やあやあ、久しぶりじゃないかね」

「ああ、どうも……」


 個人的にはこのジャックと言う三十路みそじのおっさん、少々苦手ではある。

 普段は闘牛士のようなド派手な衣装とシルクハットを被り、魔法のステッキを振り回しているちょっとアレなセンスの男だが、今はエミリアと同様、商人風の変装をしていた。


「では、今の状況と作戦を説明しますね」


 全員が揃ったところでユナが小さく咳ばらいをする。

 これはユナの冒険なので、今回はユナが自ら作戦を立てるようだ。


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