第551話「斜塔~内部」
斜塔の頂上に至るまでの間、俺たちは斜塔の周囲をぐるぐると回りながら観察した。
「窓は一つもなしか」
「何の継ぎ目もないわね」
「先日のコンテナと似た質感だの」
「言われてみればそうか……」
サキさんが言うように、斜塔の質感は例のコンテナと同じような感じだ。
ただこちらの素材は、表面を高熱で炙ったようなザラツキがある。
「窓もない、継ぎ目もない、文字らしきペイントもない」
本当に何もないな。
まあ何かあったら、とうの昔に学院の誰かが調べている事だろう。
レレも特に興味無さそうにしていたので、本当に何もないのかもしれない。
「そろそろ着くわよ」
斜塔の頂上から内部を見下ろすと、本当に中は空洞だった。
所々、フロアがあったのではないかと思わせるような足場が点在するも、巨大な煙突のように筒抜けになっている様はまさに空洞と言える。
「流石に暗いか」
「明かりを灯すわ」
ティナが灯した魔法の明かりを頼りに、俺も補助光としてウィル・オー・ウィスプを出した。
「光の精霊を先行させよう。何かあればぶつけて時間を稼ぐから、その隙に逃げればいい」
ウィル・オー・ウィスプには申し訳ないが、球体が壊れたさいに放出される電撃がわりと強烈なこともあって毎回こんな役回りになっている。
ちなみにウィル・オー・ウィスプが壊れても光の精霊が死滅する訳では無いので安心だ。
「何もないの」
「本当に塔の底まで何もないんだろうか?」
精霊感知を使ってみるが、特に何かが潜んでいる感じもない。
「一番底に着くけど浮いたままにしておくわ」
「そうしてくれ」
遂に斜塔の底まで降りてきてしまったが、その地面はこの島の岩床とは少し違っていた。
細かなガレキと砂状の地面が混ざり、なおかつ水が溜まっている。
「ウンディーネも感じるし、汚染された水ではなさそうだ」
「足元を調べたら階段でも出てこんかの?」
「無理じゃない? もし出てきても水の底になるわよ」
ガレキの質感を見る限り、元は斜塔の床や天井だったのかもしれない。
手に取った質感は壁と同じだから間違いない。
サンプルとして一つ貰っておこう。
これが先日のコンテナと同じ素材なら、それはそれで興味深いからな。
「鉄筋が入ってないから、綺麗に底が抜けた感じね」
言われてみればそうだな。
むしろこれだけの建造物を、鉄筋もなしに作っている技術が凄い。
「しかし何もなさそうだの」
水の中に入ってガレキを掘り起こしていたサキさんだったが、掘れども掘れども新しいガレキの層が出てくるため、流石に根負けした様子だ。
「まあ、観光スポットを見学したと思って今日の所は帰ろう。何でもかんでも都合よく冒険になるなんて話はないからな」
そんな感じで俺たちは家に帰った。




