第514話「レレの盾①」
レレから聞いたエミリアの話は本当だったのか、夕食時になってもエミリアは現れなかった。
まあ、魔術界のトラブルメーカーは今に始まった事ではないが……。
「エミリアさんは飛び級で魔術学院に入れたわけじゃなくて、魔法で問題ばかり起こすから保護観察の意味で学院に預けられたみたいですよ」
「そんな裏話が……。それでもあの年で大魔導だから凄いよな」
これで常識が備わっていれば完璧だったのに。
なかなか上手くはいかんものだ。
少し遅めの夕食を並べていると、サキさんが帰って来た。
「ボウズ! 丸坊主だわい!!」
「釣れなかったか?」
「うむ。竿も針も仕掛けも全部持ってかれたわい。ナカミチも悔しがっておった」
大物狙いか?
こっちの世界じゃカーボン製の竿はないし、強靭な釣り糸もないだろうからな。
「竿の方は魔法で強化すれば折れないと思うけど、釣り糸は難しいわね」
「課題が増えたな。まあとりあえず食おう」
サキさんのことだからヤバい魚を釣ってくると思っていたが、ちょっと残念だ。
「ああそうだ。サキさん、そろそろレレに盾を返しに行った方がいいぞ」
「うむ……」
サキさんは生返事をして、黙々と夕飯を食べている。
「聞いてるのか?」
「うむ……」
「サキさん、その気が無いなら断ってもいいんだから、早めにはっきりさせといた方が良いわよ」
「そうなんであるが、困ったの」
いつになく歯切れの悪いサキさんは、絵に描いたような甲斐性なしになった。
「私的にはいいと思うんですけど。特に嫌いじゃなければ。レレさんはモルバッハ家の現当主ですから、活躍次第では歴史に名を残せますよ」
「ぐぬぬっ……!!」
流石はユナ、サキさんの弱い部分を的確に突いてくる。
それに対して、嫌いではないが、嫌いではないんだが──と、サキさんはブツブツ独り言を繰り返すばかり。
一体何が気に入らないのか。
「おお、神よ……! このわしに教えてくれい!! お、男同士でも妊娠は出来まするかっ!?」
(出来るわけなかろうがたわけっ! 神をバカにしておるのか!?)
テオ=キラが渾身のツッコミを入れるのと同時に、サキさんを除く全員が椅子から転げ落ちた。
「ちょっとサキさん、いい加減、現実を見ろ! 多分これよりいい話はもう来ないぞ?」
「お主にだけは言われとう無い! が、わかったわい。明日、行ってくるわい」
こうしてサキさんは、明日の朝一番にレレの家まで向かうことになった。




