第49話「川遊びと魔道具の店」
「結構冷たいわね」
俺たち三人は、足をゆっくりと水に浸して様子を見ながら川に入った。
もう夏は終わりである。まだまだ暑さが残るとはいえ、焼け付くような日差しはもうない。当然、川の水も冷たい。サキさんと同じような真似はできないな。
「浅い所はまだ良いが、あまり深い所でジャブジャブしない方が良さそうだな」
「そうですね」
俺とティナとユナは、膝上くらいのところで水を掛け合って遊ぶことにした。
「きゃあ!」
「つ、冷たいです! このー!」
「二人掛かりとは汚い!!」
俺はティナとユナの濡れた水着が見たくて二人の体に水をかけまくっていたが、今度は二人から逆襲されていた。
休みなく暴れていると水の冷たさにも慣れてきた。俺は両手で水をすくい上げて二人の胸や背中に水を浴びせている。
「あーあ、水着がずぶ濡れよ。今日のミナトは容赦がないわね」
お腹の辺りを押さえて張り付いた水着をさするティナを見たが、紺色の水着は水に濡れることでより濃さを増し、肌が透けるどころか逆に見えづらくなった。
しかし銀髪と白い肌のコントラストがより鮮明に浮かび上がって、いつも見ている裸の状態よりも艶やかなエロさを増している。
水着の紺色と切り替わる真っ白な脇や太ももの境目はいつまでも見ていたいものだ。
「ティナさんばかりに見惚れてないで、こっちにもいますよ!」
「おうふ!」
横から不意打ちをしたユナの水が完全に油断していた俺の横っ面にヒットして、堪らずバランスを崩した俺は川の中にひっくり返ってしまった。
「ちょっとミナト大丈夫!?」
「ごめんなさいやりすぎてしまいました……」
思いっきり川に突っ伏した俺はティナに抱き起こされて、隣のユナにも支えられて体を起こす。
「ちょっと耳に水が入ったけど大丈夫だ。びっくりした」
俺は抱き起された状態でティナの背中に手を回した。なるべく自然を装いながらティナのお腹に顔を密着させて強く抱き付いている。
ティナの背中の肌と水着の感触が半分ずつ俺の掌に伝わって来たので、俺は大きく開いた背中の方に手を這わせながら、わざとゆっくり起き上がった。
いかんな。色々と意識してしまう。これではただのスケベ親父だ。夏の水着で開放的になっているせいだろうか?
「はあ。木陰で休憩にしようか……」
「そうですね。耳大丈夫ですか?」
「大丈夫。もう抜けたと思う」
結局俺たち三人はずぶ濡れになり、河原の木陰で休憩することにした。
「見てくれよこれ。水着が吸ってた水が股の真ん中から流れておしっこ……」
「やめてください!」
水に濡れた水着は、乾いていたときとは比べ物にならない強さで肌に張り付く感覚がある。ティナもユナも平然としているが、俺と全く同じ感覚でいるんだよな。
なんだかワンピースの水着はエロいなあ……。
俺たち三人が木陰にいると、奥の方で泳いでいたサキさんが白髪天狗に乗せてあるグレアフォルツを取り出し、川に戻って行こうとしていた。
「何かヤバいモンスターでもいるのか?」
「いんや。魚がおるから仕留めてやろうと思うての。ミナトも来い」
「しょうがないな。そんなんで獲れるのか?」
俺はサキさんと一緒に川の奥まで泳いだ。
「あの辺りにおるわい」
「いるもんだな」
サキさんが狙いを定めて一突きすると、狙った魚は水中をただ流れ始めた。
魔槍グレアフォルツには特別な攻撃力がない代わりに、獲物から槍を引き抜くさいの力を必要としない特殊な効果がある。
水中で何の抵抗もなく魚から槍が抜けてしまうので、仕留めた魚はそのまま水中を漂ってしまうのだった。
「なるほど、そういうことか。仕留めた魚を俺に回収させたいのだな」
「うむ」
良く仕留められるものだと感心しながら、俺は水中を漂ってくる魚を回収した。
「サキさんもういい。不味かったら捨てなきゃいかんから、今日は仕舞いだ」
「心得た」
結局、魚は全部で三匹仕留めた。槍の一突きで頭が潰れてしまっているが、20センチ以上あるそこそこ大きな魚だ。
「これ、食べても大丈夫なの?」
サキさんが仕留めた魚を囲んで、俺たちは考え込んでいた。王都オルステインでは魚を食う習慣がないというし、異世界の魚だし、もしかしたら毒があるかも知れない。
「泥臭くもないし問題なかろう?」
「冷気で保存しておいて、今晩エミリアに見せるのがいいだろう。異世界の生き物だし慎重になって損することはないはずだ」
俺たちは食い気の方が優先して、ほんの二時間ほどで川遊びを切り上げた。
家に帰った俺たちは、木箱に魚と解放の駒を入れて冷気で保存したあと、水着を洗って干している。結局すぐに帰ってきたのでまだ午前中だと思う。
「まだ時間はあるが、今日は家でごろ寝かなあ」
「じゃあ街に行きませんか? 魔道具を売っている穴場のお店があるんですよ」
水着を干しながら、ユナが見つけてきたと言う魔道具屋の話を聞いた。
ユナは本当に色々と散策している。今日は俺たちを色々と連れ回してくれるみたいだ。
「ワイバーン戦で思い知ったが、あのレベルを超えると人間の力だけで太刀打ちするのは難しいと思った。もし戦力強化の可能性があるなら色んな魔道具を知っておいて損はないだろう」
「では行ってみるかの」
俺たちはもう一度白髪天狗とハヤウマテイオウに乗り、ユナの案内で魔道具の店へ向かうことになった。今回は街中なので小さなリヤカーも付けている。
魔道具の店は、王都の外周二区北西の裏路地にあった。俺たちの活動拠点からは反対方向になるので結構な距離だ。こういう時に馬があるのは有り難い。
古くなってすでに文字も読めないくらい黒ずんだ看板の掛かった扉を開けると、表の雰囲気とは裏腹に、店の中は明るく照らされていた。
カウンターの奥には浮浪者のような見てくれの男が座っているようだが、彼が店員なのか主人なのかは良くわからない感じだ。
ユナが言っていた通り、この店は穴場的な空気がある。
「独特の雰囲気がある店だな。みんな自由に見ても良いが、何の道具かわからない物は下手に触らず店の人に聞くようにしてくれ」
「呪いのアイテムとかもありそうですもんね……」
「欲しい品があれば買って良いのか?」
「値段次第だが、有益な物ならケチらずに買うべきだろう」
俺たちは思い思いに店内を見て回った。俺が使っている偽りの指輪では魔力を感知できないので、魔道具に吊るされている効果や値段の書かれた紙だけが頼りだ。
「この腕輪は良さそうだな。筋力が上がるらしい」
身体能力を引き上げる魔道具もあるようだ。これを使えばティナでも俺たちと同じ弓が使えるのではないか? 値段は銀貨3万6000枚みたいだが。
「ちょっと使いたくないわ」
「弓が引けるようになるし、重たい鍋でも持ち上がるようになると思うぞ」
「使い続けて男みたいな腕になったら泣くわよ」
店の人に聞いてみたが、長期間使い続けた人間がいないから知らんと言われた。本人も嫌がっているし買わないでおくか……。
代わりにティナは魔法の櫛を持ってきた。どんなに絡まった髪でも寝癖でも一発で梳かせる優れものらしい。銀貨1万3000枚。
個人的には何でも買ってあげたいが、サキさんやユナの手前もあるし、どうしようか?
「私も使いたいです。ミナトさんの寝癖も直せますよ」
じゃあ買う。ティナもユナも髪を梳かすのに毎日時間を掛けているし、俺はいつも寝癖で苦労しているので、髪の手入れに時間を割かれなくなるのは有益だろう。
「ミナトさん、これって解放の駒じゃないですか?」
ユナが埃を被った解放の駒を一つ持ってきた。うちで使っている物と全く同じだから間違えようがない。
エミリアが微妙グッズだと言っていた通り、棚の隅に追いやられるようにして無造作に並べられた解放の駒は一つ銀貨500枚だった。良く見つけたな。
「何個ある? 全部買い占めてしまえ。今日から魔法化住宅の始まりだ」
「解放の小が十個、解放の大が六個です。奥の方に専用の箱が二つ見えますね。二セット分なんでしょうね」
専用の箱には何も入っていなかった。駒だけ出して並べていたんだろうな。俺は魔法の櫛と解放の駒を二セット、カウンターへ持って行った。
「解放の駒は全部買い取るが、専用の箱は貰っていいのか?」
「構わんよ。セットで売れないから、バラ売りにしていたのさ。あれ? 水晶玉が入ってないね。どこに消えたものやら……」
この店の人はどうもいい加減だな。みんなそれぞれ魔道具を物色しているので、俺はコッソリと店の男に質問した。
「この店にはおっぱいを大きくする魔道具は無いのか?」
「ないな」
「じゃあ、チンチンを生やす魔道具を知らんか?」
「知らんな。変態用の魔道具はうちには置いてないよ」
そういうのは無いのか。しかし変態用の魔道具って言い方も凄いな。




