第142話「おっぱいソムリエ」
いつものように洗い場の端っこを占拠した俺たちは、自分の体と髪を洗った後でエミリアの洗い方を指導していた。もうあまりガミガミ言っても逆効果のような気もするから、今日は褒める方向でやっている。
「それじゃあ背中を洗ってみよう。タオルを背中に回して交互に引くー。はい、いちにー、さんしー……うん、いいよー、その調子だー」
「一人でも背中を洗えるなんて凄いですねー」
「………………」
エミリアは肩をわなわなと震わせながら体を洗っている。そんなに風呂が嫌なのか?
「もう、遺跡の事が気になって仕方がないんです。我慢ができないというかですね……」
これではまるで禁断症状だな。まあここまで研究に没頭出来るから若くして今の地位があるのかもしれんが、とりあえず衛生管理くらいは人並みにして貰いたい。
「毎回思うんだが、股をゴシゴシするのやめろよ。見ているこっちが痛くなる」
「す、すみません。陰毛が凄かったときの癖で……」
俺はエミリアがちゃんと自分で髪まで洗うのを見届けてから湯船に浸かった。
俺とユナとエミリアの三人が向かい合っていると、やはりエミリアの奇乳は際立つ。
初めてエミリアと出会った直後、この奇乳が俺の顔面を受け止めてくれた事件も、今となっては随分昔の出来事だったように感じてしまう。
「ユナ、せっかくだから俺とエミリアのおっぱい揉み比べてくれんか?」
「何時だったかの続きですね?」
「えっ? どういうことですはうぅんっ!」
ユナは両手でエミリアの奇乳を撫で回すように揉んだ。一瞬びくっとしたエミリアだったが、抵抗を試みる暇もなくユナの軍門に下ってしまう。
「相変わらずエミリアは変な声出すよな。そんなに気持ちがいいのか?」
「そんなあふんっ、は、はあ……はあっ……!!」
なんでこの女は毎回一人で盛り上がれるんだろう? しかも無駄に声がいやらしいのでこっちまで変な気分になってしまいそうだ。
いつの間にか増えている客も何事かと思ったのかエミリアに視線が集中している。当のエミリアは後ろ向きなので気付いていないようだが……。
エミリアの奇乳を揉み終わったユナは、今度は俺のおっぱいに手を伸ばした。
「……んあんっ!」
「あ、ごめんなさい。痛かったですか?」
「いや、なんか……うん、大丈夫」
俺がユナの方に向き直るタイミングが合わなかったせいで、ユナの指が俺の乳首に擦れてしまったのだが、痛痒いような不思議な感触のせいで思わず可愛い声が出てしまった。
かなり恥ずかしい。こんな声が出せるのかと、俺自身がびっくりした。
「………………」
前にも感じたが、やはりユナはおっぱいを揉むのが上手い。この絶妙な力加減、俺では一生真似できないだろう。
俺のおっぱいを揉み終わったユナは、うーんと悩んだ後、感想を言った。
「やっぱり全然感触が違いますね。ミナトさんのおっぱいはモチモチしてますけど、エミリアさんのおっぱいは幼稚園の時に遊んだ油粘土みたいです」
「なるほど……流石に油粘土には悪意を感じるので俺も試してみよう」
「え? ミナトさんもひゃうんっ!」
俺はユナとエミリアのおっぱいを同時に揉んだ。
「うーん……サイズからして比べようがないんだけど、ここまで感触が違うとはな」
「異質というか、凄いですよね?」
「ユナのおっぱいはハリがあってプルプルしてるけど、エミリアのおっぱいは小学校の遠足で遊んだ陶芸教室の粘土みたいだ……なんで粘土なのかな?」
「やっぱり重すぎるんじゃないですか? 固くはないですよ。でも、どうしてもこの重量感が粘土を連想してしまうんだと思います」
マラデクの町の宿で、ティナがエミリアのおっぱいを興味深そうに持ち上げていたことがあったけど、ティナは両手を使って持ち上げていたな。
つまりティナの腕力では、エミリアのおっぱいを片手で持ち上げられないということだ。
ここまでくると完全に「牛」だな。肩こりは大丈夫なのかと心配になってくる。しかもこのサイズのブラジャーが普通に買えるのだから凄い話だ。
「さて、そろそろ上がるか?」
「そうですね」
「あの、私は参加しなくてもいいんですか?」
エミリアも参加したいのか、遠慮がちに両手を持ち上げた。
「ガッとしないなら触ってもいいが……」
「じ、じゃあミナトさんから……こんな事初めてなので何だか緊張しますね……触られるよりもドキドキします……」
エミリアは俺のおっぱいを触っていたが、だんだん慣れて来たのか大胆に揉み始めた。
「いや……ちょっと、もうやめ、終わり! なんかエミリアの揉み方は親父臭くて耐えられん」
「ええっ? どういうことですか!?」
「せっかくだからユナのおっぱいも触って、感触の違いを教えてくれ」
「わ、分かりました……」
俺はエミリアがユナのおっぱいを揉んでいるところを眺めていたが、どうにも手付きがいやらしい。ユナも同じように感じたらしく、途中で終了宣言を出した。
「……で、俺とユナのおっぱい揉んでみてどんな感じだった?」
俺がエミリアに聞くと、エミリアは両手でエアおっぱいを揉む仕草をしながら、俺とユナのおっぱいを触り比べた感想を述べた。
「ミナトさんのおっぱいは、触った瞬間からムッチリと手に絡んで来ますね。何処までも指を押し込めていけるくらいの柔らかさと同時に、しっとりと押し戻してくる感触は上質な羽毛のようです」
随分と高評価だな。自分のおっぱいを褒めて貰ったのは初めてなので素直に嬉しい。
「ユナさんのおっぱいは、まるで果実のような瑞々しさがあります。肌のハリと相まって、指に抵抗する弾力はミナトさんよりも強いと感じるのですが、次第に熟れて行く過程を見守りたいと思う気持ちにさせますね……」
「エミリアさん変態っぽいです」
『……………………』
「よし、もう上がろう。上がるよ? 明日は朝から出発する予定だからな!」
俺は微妙な空気に耐え切れず、ユナとエミリアを急かすようにして風呂場から出た。
涼みついでに荷馬車まで移動した俺たち三人は、ドライヤーで髪を乾かしてから宿の部屋に戻った。
「私は研究の続きがあるので学院に戻りますね」
「明日の夜はキャンプ場で一泊する予定だが、どうするんだ?」
「あそこはいまいち記憶に無いので、明後日の夜に家まで伺います」
エミリアはタオルと汚れた下着をほっぽり投げたまま、テレポートで学院に帰った。せめてパンツくらいは丸めておいて欲しいのだが、脱ぎ捨てて裏返った状態のまま投げているので目も当てられない。
俺はエミリアの汚れた下着が誰かの目に留まるよりも早く、洗濯物用の麻袋に突っ込んだ。いくらエミリアでもこれ以上恥をかかせるのは忍びない。
「長風呂してたら遅くなってしまったな。歯磨きしてからさっさと寝よう」
「そうですね」
俺たちは四人揃って歯を磨いたあと、今日は俺とサキさん、ティナとユナの二チームに別れて寝た。
翌朝、朝の支度を済ませてから部屋で軽い朝食を済ませた俺たちは、ティナを荷馬車に待機させたまま、残りの三人で宿を引き払った。
カウンターで部屋の鍵を返すついでにクリーニングの終わった服を受け取った俺は、宿の玄関口まで移動している荷馬車に乗り込む。
白髪天狗にはサキさん、ハヤウマテイオウにはユナ、俺とティナは二頭引きの荷馬車という構成だ。御者席には俺が座って、ティナは荷台の中で浮遊の魔法を使っている。
「ティナは具合が悪くなったらいつでも言ってくれよ」
「ありがとうミナト。魔法で浮いてるから、頭やお腹に響くことはないと思うわ」
「それなら安心だな……ユナ、サキさん、出発しよう」
「うむ!」
「わかりました」
俺たちは王都オルステインへ続く街道を走り出した。街道の遥か前方には乗合馬車の一行がチラチラと見えるが、あの一行に追い付くことはないだろう。
のんびりと街道を進んでいる俺たちだが、今回の移動では荷馬車とすれ違うことが多い。
「やっぱり収穫の時期になると慌ただしいな」
「だのう」
カナン行きの乗合馬車がすれ違うのは毎度の事だが、今回の帰り道では冒険帰りと思われるパーテイーの一行がカナンの町へ歩いて行く姿もちらほら見える。
「害獣駆除でもやった帰りかな?」
「かもしれませんね……」
「たまにはゴブリンの群れに突っ込んで大暴れしたいわい」
「相変わらずだな。クマやイノシシかもしれんのに」
俺たちがキャンプ場に着く頃には、先行していた乗合馬車の一行はすっかりキャンプの支度を終えていた。
「ちょっと思ったが、俺たちはキャンプ場を利用せずに行ける所まで行ってみんか?」
「ん? 良かろう」
「どこまで進むんですか?」
「特に決めてないけど、俺たちなら設備がなくても自前で何とかなるし、少しでも進んでおけば明日の午前中には家に帰れるかもしれん」
「私もその方がいいわ。早く帰れたら布団と洗濯物が干せるかもしれないし……」
む、それはでかい。冒険の疲れを取りたい翌日の朝に、洗濯物がドカンと鎮座している光景を想像したら気が滅入ってくる。
かくして俺たち一行は、中間地点のキャンプ場から数時間進んだ辺りで馬を止めた。辺りはすっかり暗くなっているが、魔法の明かりがあるので特に不便は感じない。
ただちょっと、森の窪みのような場所で無理やりキャンプをすることになったので、不気味な夜の森から何かが飛び出して来ないかだけが心配だ。
まあ、クマが出てきてもサキさんが何とかするだろうから大丈夫だと思うが……。




